新城市教委 「中立性の防波堤」教育憲章の素案(15.1.30 毎日新聞)
新城市教育委員会は、来年度から制度改正で教育行政に対する首長権限が強化されることから、教育の中立性保持を盛り込んだ「教育憲章」の素案をまとめ29日、発表した。来月27日から市民の意見を募り、6月の市議会提案に向け、成案を仕上げていく。
市の定例記者会見で発表した。今年4月から、首長が教育長の任免が出来、新設する「総合教育会議」を招集できるようになる。市教委は、首長によって教育方針が左右されることを危惧。憲章で、目指す教育の理念を明示し、「教育の中立性を守る防波堤にしたい」と、昨年3月から策定に取り組んだ。
素案は前文で、新城の自然・人・歴史文化を誇りに「共育」を推進し、自他の幸福を構築できる人間育成を目指すとした。そのうえで、教育の中立性・継続性・安定性を堅持することをうたった。条文は、人間尊重や徳と教養の向上など6条を挙げた。
和田守功教育長は「戦後70年を迎え、原点に立ち返り、憲法や教育基本法前文の意図を十分踏まえて教育を進めていかねばならない」と話す。
素案は市ホームページなどで公表し、来月27日~3月27日に意見を募る。5月には成案を作り上げ、市議会6月定例会に提案する方針だ。市議会への提案者となる穂積亮次市長は「今の仕組みでは、憲章は報告案件になる。広く市民の理解を得るため、議決案件にできるようにしたい」と話した。
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教育委員会は戦前の中央集権的、国家主義的教育に対する反省から、教育の地方分権と民意が反映されるように改められ、教育委員の公選制がとられました。しかし1956年に地方自治体首長が議会の同意の上で任命する制度に改められました。当時日本の政治が全体として戦後の民主的システムを変える動きがあり、教育委員会制度改正も逆コースと言われました。
安倍首相はかねてから教育改革を唱えており、第一次内閣では愛国心教育を推進し、第二次内閣でも道徳の教科化を推進しています。昨年教育委員会制度を改め、首長による委員任命と首長と教育委員会とで総合教育会議を設け、教育行政の指針となる大綱を作るなどとする地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正(教育委員会法の改正)を国会に提出しました。これに対しては、国や地方自治体の教育に対する介入が強まると反対の声があがりましたが、6月に成立させ、今年6月から施行することにしました。
新城市教育委員会の「憲章」策定の方針は、その地方の実情にあった教育、民意の反映を目指すという教育委員会制度を設けたときの理念に立ち返って、政権が代わる毎に、あるいは地方自治体の首長が代わる毎に、教育行政が変わることを防ぎ、教育の中立性を確保する防波堤にしようというもので、他の自治体にもこの運動が広がることを期待したいと思います。
大西 五郎