一般に、勉強が苦手というか、むしろこれから逃げている生徒というのは、ある段階からはもう何もかもが分からないという非常に危険な水準に陥るのは当然としても、まだそこまで行かなくても確実にそれに向かって進んでいるケースというものがあって、そういう生徒を計るモノサシの一つに「何が分からないかを言わせる」という方法があります。
試してみればすぐに「なるほど、こういうことか」と分かりますが、そういう生徒はそう問われてもすぐにポイントを絞った回答をすることすらできません。
何が分からないかをいえない、もっと言えば、なにが分からないかが分からない、そういうことなのだろうと思います。
ですから、私たちはそういう生徒と向き合うに際しては、少なくとも途中の経過点として、まずはこれが言えるようになることを目指して勉強を進めて行くということがあります。
今、冬期講習を毎日熱心に受けているある男子生徒、彼がまさにそういうタイプであって、かつての彼は「どうせ勉強嫌いだし」という姿勢を前面に出していて、当然のように点数を成績も良くなかったのですが、彼のご両親や学校の先生、塾の講師たちのあの手この手の後押しや激励によって、ここにきて目覚しい変化を遂げつつあります。
そして、今日の講習時間の中で、講師が一通り解説をした後で、質問を受け付けた際、彼はこういったのです。
「先生、今の解説の中のことではなくて、もっと前、別のところのこれこれがどうもよく分かりにくいんです。そこのところをもう一度解説してくれますか?」