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共産党は本気で新自由主義を打ち破る気があるのか?

2010年07月19日 01時15分17秒 | 二大政党制よりも多党制
 今回は、遅くなりましたが、参院選の結果について思う所を書きます。
 消費税増税を唱えた与党民主党が後退したものの、批判票が反消費税の共産・社民両党にではなく、元々消費税容認派だったにも関わらず今回「他にやる事があるだろう」と唱えた「みんなの党」に流れてしまいました。そして、議席の過半数を占める地方の一人区では、自民党が民主党の敵失によって復調を遂げる事になってしまいました。その結果、本来「大衆増税反対」だった投票行動が、逆に「大衆増税・金持ち減税」派の自民党や「みんなの党」の復調・躍進をもたらすという、「ねじれ」が生じてしまいました。

 選挙期間中、非党員ながらボランティアとして共産党の法定ビラをまいていた私も、選挙終盤戦になってようやく、「このビラの内容では、ひょっとしたら負けるかも知れないなあ」と思い始めていたのですが、気付いた時には既に遅しで、やはり危惧した結果になってしまいました。
 この選挙結果を受けて、既に何人かのリアル知人とも意見交換をしたのですが、無党派の方も含め、「みんなの党」が新自由主義(弱肉強食資本主義)の党だと知っている方の多くは、やはり「選挙民は道を誤った」「自分で自分の首を絞める事になってしまった」という意見が大勢でした。

 しかし、今の日本で、こんな争点で選挙をやったら、こんな結果にしかならないであろう事は、今までの例からも充分推測出来たと思います。7月15日付記事でも書いたように、自己責任に絡み取られて「過労死に抗議するよりも自殺する方を選ぶ」奴隷根性のこの国では、「搾取に怒る」よりも「まだ搾取されてない人を妬む」人の方が多い訳ですから、大企業減税や米軍への思いやり予算には何も言わずに公務員叩きにだけ精を出す「みんなの党」が躍進するのは、ある意味、必然だったとも言えるのではないでしょうか。

 実際、今の自分の職場の状況に置き換えれば、今回現れた投票行動の「ねじれ」も、あながち不可思議な現象ではありません。私の職場では、スーパーの物流業務を孫請けの会社が請負っている訳ですが、元請や一次下請による単価の買い叩きや賃金ピンハネを、孫請けの労働者自身も分かっていながら、職場の不満が直接上に行く事は殆ど無く、大抵は同じ孫請けの同僚間の対立にすりかえられてしまうでしょう。

 これを今の政党配置に置き換えるとよく分かります。元請などの搾取やピンハネを批判する「共産・社民」よりも、「バイトの誰それや社員は俺よりも楽しやがって」と批判する「みんなの党」の方が、孫請けの労働者にとってはある意味自然なのです。たとえ頭の中では、根本的には「ピンハネをなくすしかない」と分かっていても、それは困難だし下手すれば「お飯の食い上げ」にもなりかねない、それよりも「目先の敵」を叩く方が、遥かに手っ取り早いですから。

 それに対して共産・社民両党は、正論での批判のみに力を入れてきたのです。確かに、「ピンハネ搾取こそが諸悪の元凶だ」というのは「正論」ですが、それを幾ら言った所で、「お飯の食い上げ」にしかならないのでは、誰もついて来ません。ここで本来、共産・社民がすべきなのは、「正論」宣伝に力を入れると同時に、「お飯の確保」にも充分関心を払う事なのです。そうしてこそ初めて、「正論」が説得力を持つのです。

 また、私が7月9日付記事でも書いたように、日本人は「新自由主義を無自覚に受け入れてしまっている所がある」。つまり、人権の歴史がまだまだ浅く、市民革命の経験の無い日本では、国民は搾取や悪政に抵抗するよりも、「妬み差別」に走ったり、「偉い人のお慈悲」にすがろうとする傾向があります。自らがストやデモに立ち上がるよりも、ひたすら「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」「坂本龍馬」の出現を待ち焦がれる。
 だから、石原慎太郎や橋下徹みたいな輩が、のさばり返るのです。そして、総選挙直前までズブズブの自民党幹部で、自身も世襲議員でしかなく、官僚天下りを規制せず合法化(人材バンク設置)した渡辺喜美(みんなの党・党首)も、一夜にして「アンチ自民・アンチ民主」の「第三極」に豹変する事が出来るのです。

 そこを共産党は甘く見過ぎたのではないか。今回の参院選での法定ビラや街頭演説の内容を見ても、それが如実に現れているのではないでしょうか。言っている事は正しいが、それはあくまで正論でしか無かった。言っている事は決して間違いではない。だから一定の支持層は獲得できる。しかし説得力が伴わないので決して支持が広がらない。次第に一進一退の繰り返しとなる。
 実はこの一進一退の時期が非常に重要なのです。企業の業績でもそうでしょう。創業後ある程度の所まではシェアは伸びるが、一定の所で足踏み状態となる。そこで体質転換できればまた伸びていくが、転換出来なければ衰退していく。共産党は、今正にその「剣が峰」に差し掛かっているのではないか。

 確かに、今までは「確かな野党」の独自路線でやって来れました。しかし、今後も「我が道を行く」だけでは、今の大政党有利の小選挙区制の下では、泡沫政党として衰退・消滅するしかないでしょう。勢いのある「勝ち馬=みんなの党」にすがる方が、遥かに楽なのだから。しかし、果たしてそれで良いのでしょうか。「妬み差別」で劣情を煽るだけの、こんな大衆迎合の新自由主義の党に、ひれ伏すしかないのでしょうか。
 そうではないでしょう。説得力さえ得られれば、言っている事はしごく正論なのですから、必ず支持を得られる筈です。民営化・自由化・規制緩和による「小さな政府」を主張する「みんなの党」が、結局は福祉削減・弱者切捨て・「搾取の自由」擁護の「弱肉強食」党でしかなく、その矛盾を一番弱い「下請け・労働者」や「貧しい開発途上国・第三世界の人々」に押し付け、自分たちは見て見ぬ振りしながら「貧しいのはお前らが悪い」と嘯くデマゴギーでしかない事は、既に見てきました。

 ここで一つの事例を挙げます。新自由主義が世界で猛威を振るっている中で、それに抗い逆に攻勢に打って出ているのが、主にフランス・ドイツやギリシャ、中南米などの国々の人々です。これらの国々は、確かに日本とは政情が大きく異なります。なるほど、日本には、フランス革命や軍事独裁を倒したギリシャのような歴史はありません。また、長年に渡るアメリカ帝国主義や封建地主・財閥・軍部による独裁政治の下で、新自由主義が弱肉強食でしかない事を、民衆が理屈ではなく身を以って理解している中南米とも異なります。しかし、その違いを踏まえても、それら諸国における闘い方から学ぶべき点も、多々あるのではないでしょうか。

 それは「数は力」という事です。これらの国々では、左翼諸党がともに小異を捨てて大同団結する事で、小選挙区制の下でも過半数の支持獲得に成功してきました。それがフランス人民戦線の伝統や、ドイツや中南米における左派合同の教訓です。日本では、米軍基地の重圧に苦しめられている今の沖縄が、差し詰め中南米に相当します。
 現に沖縄県では、選挙区こそ自民党の当選を許したものの、比例区では普天間問題で連立離脱した社民党が、12万余票を獲得して(得票率22.7%)、比例第一党に躍進しました(時事通信記事参照)。「みんなの党」なんてハナからお呼びではないのです。そして、民主党はおろか自民・公明ですらも、県連レベルでは基地の「県内たらい回し」(普天間基地の辺野古移設)に反対しているのです。そう言わなければ選挙で勝てないから。

 以上は一つの事例ですが、如何に強大な敵であろうとも、決して打ち破れない事はないのです。本当に打ち破る気さえあれば。それを、今までの狭い経験に囚われて、今までの同じ様な発想や闘い方に終始しているから、打ち破れないだけなのです。小康に甘んじる事しか考えていないから、今までの発想から抜け出せず、新自由主義や「みんなの党」に対しても、こんな甘い見方しか出来なかったのではないでしょうか。

(参考資料) 第22回参院選党派別当選者数(注:公示前勢力は欠員1)
党派名 当選者 選挙区 比例区 改選数 非改選 新勢力 公示前  増減
民主党  44   28   16    54   62   106  116 -10
自民党  51   39   12    38   33    84   71 +13
公明党   9    3    6    11   10    19   21 - 2
共産党   3    0    3     4    3     6    7 - 1
国民新   0    0    0     3    3     3    6 - 3
新改革   1    0    1     5    1     2    6 - 4
社民党   2    0    2     3    2     4    5 - 1
たち日    1    0    1     1    2     3    3 ± 0
みんな   10    3    7     0    1    11    1 +10
諸 派    0    0    0     0    1     1    1 ± 0
無所属   0    0    0     1    3     3    4 - 1
合 計  121   73   48   120  121   242  241 + 1
略称名:国民新=国民新党、新改革=新党改革、たち日=たちあがれ日本、みんな=みんなの党
コメント (13)
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