アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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カジノ問題と新自由主義

2013年06月11日 20時45分40秒 | 都構想・IRカジノ反対!
  

 以前の記事で紹介したカジノ問題のシンポジウムに6月9日行ってきました。シンポを主催したのは「カジノ問題を考える大阪ネットワーク」という団体で、依存症問題対策全国会議の弁護士・精神科医や、多重債務問題に取り組む市民団体「大阪いちょうの会」の家族・活動家の方から、多くの示唆に富む発言がありました。そして、会場となった大阪・森ノ宮のアネックス・パル法円坂のホールには約130名の聴衆が詰めかけ、シンポは盛況のうちに終わりました。以下、その様子をかいつまんで報告します。

 シンポは13時半から、開会挨拶の後、滝口直子・大谷大学教授の基調講演で始まりました。講演の内容は、カジノ誘致を巡る動きや外国のカジノ視察報告が中心で、パワーポイントの資料で丁寧に説明もしてくれたのですが、どの資料も文字がぎっしりで余白が殆どなく、メモをどこに取ろうか考えあぐねているうちに、時間だけが経ってしまいました。おまけに、話が多岐に渡り、私はそれに付いていくのが精一杯で、途中で睡魔に襲われウトウトとしてしまう時もあり、余り話の内容を理解できたとは言えませんでした。しかし、それは会場販売で購入した書籍やDVDからの知識で、後で充分補う事が出来ました。
 その後、シンポジウムはギャンブル依存症だった方やその家族の体験談、「ギャンブル・オンブズマン」という団体の事務局をやっておられる井上善雄弁護士からの情勢報告、藤井望夢さんという精神科医の方からの体験談、休憩を挟んで会場からの質疑応答という流れで、16時半に終わりました。

 その中で最も印象に残っているのは、ギャンブル依存症だった方からの「依存症は回復するが完治はしない」という訴えでした。これはどういう事かと言うと、「一旦依存症に罹ってしまうと、それ無しにはおれない身体になってしまう」、つまり禁断症状に苦しむようになってしまうという事です。最も分かりやすいのがアルコールや薬物などの物質依存の場合で、禁断症状の苦しみから逃れる為にまた手を出してしまう。どうにか克服して禁断症状を抑える事に成功しても、また何かのきっかけで再発してしまう。
 これはギャンブル依存症などの行為依存の場合も同じで、ギャンブルをする事で脳から刺激物質のドーパミンが異常に代謝されるようになり、それ無しにはおれない身体になってしまうのです。どうにか克服して異常代謝を抑える事が出来ても、一旦そういう刺激の伝達回路が脳内に形成されてしまうと、またいつ何かのきっかけで再発しないとも限らないのです。これは病気なので、本人の意志でどうにか出来るものではありません。寧ろ、薬物中毒のように身体がボロボロにならず、歯止めが効かない分だけ、余計に性質が悪いとも言えます。

 「私らは身体の中に爆弾抱えながら地雷原の中を歩かされている」「いつまた異常代謝の爆弾のスイッチが入るか分からない中を、自助グループの仲間と励まし合いながら、地雷原から脱出しようと必死にもがいているのに、カジノ特区か何か知らんが、再び地雷原に誘い込むような真似なぞしないでくれ!」―これが、ギャンブル依存症だった方からの心の叫びです。

 後は会場で購入した書籍・DVDから得た知識も交えてまとめます。書籍は岩波ブックレットの「ギャンブル大国ニッポン」、DVDはジャーナリストの若宮健さんによる韓国・マカオのカジノ視察報告。いずれも安価で手軽に読める、非常に分かりやすい資料です。それによると、日本には確かにカジノはありません。賭博も違法とされています。しかし、その代わりにパチンコ産業が、毎年20兆円近い売上を記録し、1万軒以上もの店舗が国内にひしめき、世界のゲームマシンの6割以上を抱えるまでになっています。その他にも、公営ギャンブルも6種類を数える中で(競馬・競輪・競艇・オートレース・スポーツ振興くじ・宝くじ)、2010年の厚労省の調査では、成人男性の9.4%、女性の1.6%に病的ギャンブラーの疑いがあるという、「ギャンブル大国」の実態が明らかになりました。ギャンブル依存症による自殺・殺傷事件や借金苦が今も後を絶たないのに、警察は「パチンコは一時的娯楽を楽しむ遊技施設で、景品交換を介しているから賭博ではない」と事実上パチンコを容認し、マスコミもCM広告欲しさに追及は及び腰です。今でも充分「ギャンブル大国」なのに、この上まだカジノを誘致する必要がどこにあるのでしょうか。実際は違法なのに形だけ合法を装うのも、橋下慰安婦発言の構図と全く同じ。

 カジノ推進派は貧困ビジネスのイメージ払拭の為に、盛んに「カジノ=大人の社交場」と宣伝しています。確かに、元々カジノとはイタリア語で「小さな別荘」を意味する様に、昔は貴族の遊びでした。しかし、大衆化した今のギャンブルでは、食い物にされるのは貴族(大金持ち)よりも多くの庶民です。例えば、韓国に17ヶ所あるカジノの内で、唯一韓国人も利用できる江原道のカジノは、炭鉱閉山後の代替産業として鳴物入りで誘致されたものの、今や乗ってきた車も質草に取られる賭博中毒者の吹き溜まりと化しつつあります。このカジノには、毎月15日以上も通い続けるとギャンブル中毒と見做され紹介される併設の矯正施設がありますが、毎日30人近くもそこにお世話になっているのです。地域には3千人近い浮浪者があふれ、毎年5~10名もの自殺者が出るとの事。この荒廃ぶりは、主に中国本土や外国人観光客相手のマカオのカジノも同じで、香港からマカオへ渡るフェリー発着所は、今や売春婦の吹き溜まりと化しつつあります。

 シンポジウムでは、電車の車体にパチンコチェーンの広告がデカデカと描かれた、大阪のラッピング車両の話も出ました。前述の岩波ブックレットにも載っています。それによると、大阪市営地下鉄御堂筋線や泉北高速鉄道、南海バスの車体に、延田グループやアローなどの大手パチンコチェーンの広告が描かれているとの事。私もそれらの路線はよく利用するので、その広告は何度も見ます。南海電鉄の系列に多いのは、橋下がカジノを舞洲に誘致し、関空とリニアで直結する構想を抱いているので、恐らくそのお零れにあやかろうとしているのでしょう。儲かるのはゼネコンのみ。
 韓国カジノ視察のDVDにも、「カジノが出来て、ソウルと高速道路で結ばれ便利になった」と土建業者が発言するシーンがあります。儲かればそれで良い。後は野となれ山となれ。

 目先の欲に目が眩んで誘致したものの、建設業の一部が少しお零れにあやかれるだけで、思ったほどの雇用効果もなく、却って地域は廃れ治安も悪化。まるで日本の原発銀座を彷彿とさせる話です。とにかく自分さえ儲かれば良い。それで人がどれだけ不幸になろうが知ったこっちゃない。カジノは、正に新自由主義の象徴、貧困ビジネスの最たるものです。
 カジノにご執心なのは別に橋下や石原だけではありません。安倍や麻生や竹中も、IR(カジノ)議連の一員として、カジノを成長戦略の要と位置付けています。そして、木曽祟などの御用学者を動員し、「リスクも上手く使いこなせ」「国民を勝負師にしろ」と発破をかけます。胴元だけが儲かり後は全員損する仕組みに最初からなっているのに、何が「上手く使いこなせ」「国民を勝負師に」か。こんな「自分さえ儲かれば良い、それで人がどれだけ不幸になろうが知ったこっちゃない」というようなビジネスモデルの中では、ごく少数の詐欺師だけが生き残り、大多数の人間は詐欺師のカモにされるだけです。

 日本人や韓国人は、西欧人よりもギャンブル依存症になる人の比率が高いそうです。西欧人が2~3%に対し、日本人や韓国人は8~9%。前述の厚労省の調査結果とも符合するデータです。その理由は未だ分かりませんが、近代以降の消費者教育の未発達によるものではないかという気がします。
 それが証拠に、日本では今でも、余り金の話をすると「はしたない、嫌らしい」と言われるでしょう。就職の際の面接でも「余り賃金や待遇の事をしつこく聞くな」と。それを「武士は食わねど高楊枝」みたいな精神論とセットで言われたりする。そのくせ、橋下みたいな輩から「勝負から逃げるのか」と言われると、もう何も言い返せなくなるような所もある。
 これ、どちらもおかしいと思います。賃金や労働条件について問い質すのは当然の権利です。また、幾ら「勝負から逃げるのか」と言われても、不公正取引は断固拒否すべきです。本当の消費者教育とは、金の話を遠ざけたり、逆に依存症や金の亡者になる事ではなく、金(資本主義)の仕組みを裏も含めて正しく知り、搾取や不公正を是正する力を身につける事です。そういう教育が徹底して行われるようになれば、ギャンブル依存症に陥る人も、今よりもっと減るのではないでしょうか。

ギャンブル大国ニッポン (岩波ブックレット)
クリエーター情報なし
岩波書店
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