新しい制服のクリーニング代まで給与天引きにしようとする私の会社が、今度は個人日報の記入を求めてきました。出勤から退勤までの間に、「いつ、どこで、どんな作業を、どれだけの時間でしたか」を、毎日日報に書いて会社に提出しなければならなくなりました。
しかし、単に仕分けの効率を知りたいだけなら、DASの個人別データを見れば分かります。「一体何が目的でこんな物を書かせるのか?」、責任者の方に尋ねたら、何でも「適正工数」を割り出すのに必要なのだとか。
「工数」と言うのは、「どれだけの人数で、どれだけの作業量を、何時間で終えたか」を数値化したもので、「一人当たりの作業量×作業時間×のべ作業人数」で計算されます。作業ごとの適正工数が決まれば、適正な作業時間や作業定数(必要人数)も自ずと決まるという訳です。
なるほど、DASの個人別データだけでは「一人当たりの仕分け量×仕分け作業時間」しか分かりません。「のべ作業人数」や、仕分け作業以外の搬送作業(商品やカゴ車の移動)や清掃も含めた「適正工数」を割り出すには、こんな日報が必要だと言う事なのでしょう。
しかし、それはあくまで建前であって、実際はどれだけ最低限の人数で、ギリギリまで酷使できるか知りたいというのが本音でしょう。
この手の個人日報は今までも何度か書かされた事がありますが、手間隙かかる割には効果が今一つなので、長続きした試しがありませんでした。それをまたぞろ性懲りもなく繰り返そうとしているのです。つくづく書かす事の好きな会社だと思います。でも、今回も早晩失敗に終わるでしょう。
理由その1。作業効率が悪いのは、労働者の能力が低いからではなく、社員の段取りの悪さと会社の事なかれ主義に原因があるから。
今までも散々書きましたが、商品仕分け場所の近くで納品も収納も一緒くたに行い、ただでさえ身動きが取れなくなっている所に、他の場所で仕分けしていた商品を次々に放り込まれたら、仕分けどころではなくなるのは当然でしょう。身動きが取れなくなって、怪我の危険さえ出ているのに、そんな所で幾らDASの作業効率ばかり追求して、一体何の意味があるのでしょうか。誤配防止やロス削減にDASも必要だとは思いますが、肝心の一番作業上のネックになっている原因をそのままにして、仕分けの効率化もクソもないでしょう。
理由その2。「いつ、どこで、どんな作業を、どれだけの時間でしたか」なんて一々覚えてられない。
だから、別の現場で初めて書かされた時も、最初は皆「朝礼→午前作業→休憩→午後作業→退勤(終礼)」だけしか書けませんでした。しかし、それだけでは何の役にも立ちませんから、やがて、こと細かに作業項目を書き出して、その作業コードも書かなければならなくなったのでしょう。「コード○○、作業名○○、時間○時から○時まで」という具合に。
でも、そんな何項目もの作業について、「何時何分から何時何分までかかったか」なんて、いちいち覚えていられないので、作業する度にどこかに控えて、休憩時間に清書しなければならなくなりました。それが嫌なら、作業の合間に暇を見つけて書くしかありません。しかし、これでは肝心の作業よりも日報記入に気が取られ、かえって効率が落ちてしまいます。効率低下だけで済めば良いですが、日報記入に気が取られてリフトが近づいているのにも気付かず、リフトやカゴ車に当てられたら誰が責任を取るのですか。
それが嫌ならもう後は休憩時間に書くしかありませんが、その分の休憩は後で誰が保障してくれるのですか。唯でさえ少ない休憩時間なのに。少なくとも私は、サービス残業で日報記入なんて絶対に嫌ですね。
理由その3。正直者がバカを見る結果にしか終わらない。
少し考えてみたら分かりますが、同じ「○時から○時まで○○の作業を○名で行った」としても、実際には、その合間に日報記入を済ませた人も、最後から最後までびっしり作業にかかり詰めだった人も、合間にゴミを拾うなどして積極的に環境美化に協力した人も、さぼって雑談や休憩していた人も、このやり方ではみんな同じ評価にしかなりません。かと言って、作業の合間に何をやっていたかまで、こと細かに書いていられないし、覚えてもいられない。まさか、拾ったゴミの個数まで書けと言うのか(笑)。でも、省略して書いたら正直者がバカを見る結果にしかならない。もうバカらしくてやってられないので、そのうちに皆サボりだします。
今の段取りの悪さや作業のやり難さ、作業場の危険を取り除いた上で、工数調査でも何でもするのなら、別に文句はありません。しかし、作業に支障をきたしている根本原因を除去せずに、徒に個々の作業効率を追求しても、「木を見て森を見ず」の結果に終わるだけでしょう。それだけで終わるならまだ良い。その為に誰かが怪我をさせられたら、会社はちゃんと責任取ってくれるのですか。私とMとの労災嫌がらせ事件の経過を見ても、会社が責任逃れに終始するのは明らかじゃないですか。
しかし、この個人別作業日報の記入も「バカと鋏は使いよう」で、使い方次第ではブラック企業に対抗する上で有力な武器になります。会社に提出する表向きの日報とは別に、自分だけの日報を作って、「いつ、どこで、どれだけサービス残業させられたか」を克明に記録すれば良いのです。それが若しもの時に裁判の証拠になるやも知れません。転んでも只では起きず。下の池井戸潤の小説のように「クソ上司め、覚えてろ!」「倍返しだ!」の心意気で。そうでも考えなければ、もうやってられませんて。
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