11月21日(木)は全国各地で秘密保護法反対の様々な取り組みが行われました。東京の日比谷野外音楽堂では、平日の夜であるにも関わらず1万人以上もの人が集まり、会場に入りきれなかった人が路上にあふれ出るまでになりました。
この大阪でも、弁護士会主催の反対集会が西天満の弁護士会館で行われ、400名以上の参加で大盛況のうちに終わりました。こちらも会場に入りきれない人が続出し、急遽、別会場をしつらえてメーン会場からアストロビジョンで実況中継しなければならない程でした。
上記写真は会場配布レジュメ・チラシの一部と開会挨拶(あいさつ)の場面です。景気付けの為でしょうか、登壇者は全員このような黄色のハッピを着ていました。会場ではこの他にも資料を一杯もらいましたが、メーンのレジュメの内容はレベルが高すぎて私には余り馴染めませんでした。実際、集会でもレジュメは余り使われませんでした。
開会挨拶の後、国会情勢などが報告されました。それによると、今後ますます米国と一体となって世界のどこでも戦争が出来る国にしようと、自民党政府がNSC(国家安全保障会議)設置法案とセットでこの言論弾圧(特定秘密保護)法案を出してきたのに対し、当初は「連立政権内で自民党の軍拡路線に抵抗する」と息巻いていた公明党は、形だけの「報道の自由や基本的人権にも配慮」規定に早々と満足して自民党の軍門に下り、「みんなの党」も、ここは元々野党とは名ばかりの自民党補完勢力なのでこれも賛成に回ってしまいました。
それに対し、憲法改正問題でも自民党にすっかりお株を奪われ、下手すれば「みんなの党」より先に消滅しかねない「維新の会」が、ここでは「意外な程」抵抗を見せたものの、所詮はここもやはり自民党の補完勢力。結局は修正協議に応じてしまいました。早晩、民主党も同じ方向をたどる事でしょう。
特に「維新の会」は、「第三者機関を設置して内閣の暴走をチェックする」との「修正協議」の名目欲しさだけで抵抗している点を、すっかり自民党に見透かされてしまい、「第三者機関」設置は法案の「付則=付け足し」扱いでお茶を濁された上に、政府案では「30年経過後には秘密指定解除して原則公開にする」予定だったのを、逆に「60年経過後に公開」と先延ばしされた上に、「公開前に首相が秘密文書を廃棄する事も可能」と、一緒になってより悪い内容に変えてしまう始末です。いくら公開後に当事者にとって不利な情報が出てきた所で、60年も経てば当事者もすっかり耄碌(もうろく)して責任追及から逃れられる、「あの世」に逃げ込む事も充分可能と踏んだのか。
これでは戦時中の大政翼賛会や今の一党独裁の社会主義国と全然変わらないじゃないか。こんな野党なら在っても無くても同じです。寧ろ政府の「民主主義」宣伝に利用されるだけ有害です。
その後は法案解説です。解説者が壇上に立ち、写真のパワーポイントを使って(パソコンの画面がそのままスクリーンに映し出される)、クイズ形式でみんなに質問した後、回答を画面に映し出すやり方で進めていきました。こちらは配布資料のレジュメとは違い、なかなか分かりやすくて面白かったです。
回答は全て写真に収めましたが、質問の内容はメモも取り損ねたのでうろ覚えで書いていきます。間違っていたらご指摘下さい。
第一問は確か「秘密の範囲は外交・防衛などに限られるか?」というものだったと思います。それに対する答えは「何が秘密か分からない」。「定義も、秘密指定の範囲も曖昧(あいまい)で、適用基準も不明瞭、市民には何が秘密なのかも一切分からない」。だから秘密保全法違反で逮捕されても、自分が一体何の具体的容疑で逮捕されたのかが一切分からない。逮捕されない為には、何も言わず何もせず、ひたすら政府の言いなりになるしかない。
第二問は「そもそもこんな法律は必要か?」。答えは「必要がない」。「北アフリカのアルジェリアで、油田開発に携わっていた日本企業の施設がイスラム教徒のテロリストに占拠された時も、日本には秘密保護法がないから外国から重要な情報が寄せられなかった、だから秘密保護法が必要なのだ」というのが賛成派の言い分ですが、果たしてそうか。
実際には、保全法のない日本だけでなく、保全法のあるその他の諸国に対しても、重要情報は全然伝えられませんでした。アルジェリア政府は別に保全法の有無で諸外国への対応を変えた訳ではありませんでした。ただ「余裕を持って対応する事が出来なかっただけ」です。
「海上保安庁職員によって尖閣のビデオが外部に漏らされた、それを防ぐ為にも保全法は必要なのだ」とする言い分も全く的外れ。そもそも、あのビデオは職員研修用に作られたもので、機密でも何でもなかった。それを、バイトが業務用冷蔵庫に入って悪ふざけで盗撮するのと同じノリで、同庁職員が遊び半分にネットに流出してしまった。「憂国の情に駆られてやむを得ず」なんて大ウソ。本当にそうならネットなんかではなく新聞社に直接リークしています。そんな役人に好き勝手にさせるような法律を作って、後で市民が責任追及も出来ない様にしてしまう方がよっぽど恐ろしいです。
実際に、公務員による情報漏えい事件は、2000年以降に限っても僅か8件しか発生していません。それらは全て今の法律で対処できました。「スパイ防止の為に必要だ」との言い分も全く的外れ。政府自身が、今でも公安警察や自衛隊を使って労働組合や市民団体の合法的な集会やデモまで片っ端から盗撮しているくせに、「お為ごかし」な事を言って誤魔化すのもいい加減にしろ。
ここから後は○×形式の質問が続きます。第三問は「違法な秘密指定は第三者機関によってチェックされるから大丈夫、これは○か×か?」というものだったと思います。答えは「×」。「第三者機関」と言えばいかにも公平・中立な感じがしますが、この人選はあくまで内閣が行います。ましてや「維新の会」のように「首相が大臣をチェックするから大丈夫」と言うに至っては、もはや呆れる他ありません。泥棒に警官をさせるようなもの、東電に原発の安全審査をさせるようなものです。
第四問も「国会のチェックが入るから大丈夫、これは○か×か?」だったかな。これも「×」。国会に報告されない例外も多くあります。今後はもっと増やされる事でしょう。今でも重要な情報は国会なぞ素通りして都道府県警などに直接行き、後で国会議員が情報公開請求をしても殆ど黒塗りの資料しか提示されないのに。それでも抵抗したら、次は国会議員自身も秘密保全法違反で逮捕されかねない。そこまでしてまで、自民党や「維新の会」の議員が国民の為に動いてくれるとは到底思えません。
自民党の石破幹事長が「国が存亡の危機にある時に、知る権利がどうのこうの言ってられるか」と暴言を吐いたそうですが寧ろ逆だ。福島原発から流れ出た放射能の情報を国民には知らせず米軍にだけ知らせたのは、一体どこの国の政府だっけ。今でも国が一番信用できないから、国がいくら揉み消そうとしても、これだけ反対の声が出るのだろうが。
第五問「この法律で国民のプライバシーは守られる、これは○か×か?」。答えは「×」。国の悪事は徹底的に隠蔽され、国民のプライバシーだけが侵されます。明治維新の昔から現代に至るまで、その例は枚挙に暇(いとま)がありません。戦前は軍部が自分で鉄道線路を爆破しておきながら、その罪を中国に擦り付けて満州事変を起こしました。つい最近も、薬害エイズや何やらで、それまで無いとシラを切っていた資料が「ある日突然見つかった」事が何度もありました。冤罪(えんざい)事件で死刑にされかかったり、実際に死刑にされてしまった人も大勢います。
つい最近も、自衛隊が内部で隊員に家族や親戚の支持政党やら犯罪歴を、対象者には秘密でストーカーまがいの調査を行っていた事が「赤旗」にすっぱ抜かれたばかりです。調査に当っては一応隊員の「同意」を取ったそうですが、この就職難のご時世に、それでなくても国のやる事は絶対に正しいと教え込まれている隊員に、上司から命令されて「これは個人の思想・信条の自由を侵害する憲法違反の行為だから嫌です」と言える隊員が、一体どれだけいるか。
第六問は「逮捕されても裁判で白黒つければ良い、これは○か×か?」だったと思いますが、これも「×」。裁判も秘密保護法の統制下に置かれます。日本は「法治国家」ですから。その秘密保護法は「何が秘密か、それも秘密」にされる悪法です。容疑者や被告人は、自分が一体どんな罪状で逮捕されたかも明らかにされないまま、裁判に臨まなければなりません。裁判官や検察官もそれを教えてはくれはせん。下手にバラしたら今度は自分が逮捕されかねませんから。こんな裁判で、一体どんな弁護が出来ますか。
実際に、弁護士さんたちが過去の学習会で、秘密保全法下の模擬裁判を寸劇でやった事がありました。左上がその時の写真ですが、判決文の朗読も殆どピーッと言う警告音にかき消されて聞こえず(秘密に触れないようにする為にw)、何が何だか全然訳が分からないうちに裁判が終了してしまいました。
第七問が最後の質問で、「こんな法律はもはや修正なぞではなく廃案にするしかない!これは○か×か?」。ここで初めて「○」となります。当然ですわね。
言っときますが、これは決して公務員だけに限った問題でもなければ、労働組合や市民団体だけの問題ではありません。国はわざわざ「特定秘密法保護法案」と「特定」の言葉まで前につけて、いかにもこの法案が「外交・防衛」や「スパイ・テロ防止」に限ったものであるかのように装っていますが、誰がその範囲を決めるのですか。国でしょうが。それも法律にはワザと書かずに後で付則や政令で幾らでも拡大できるようにして。
そもそも外交や防衛と言っても、その範囲は曖昧(あいまい)なものです。原発事故の情報も防衛やテロ防止の名目で隠蔽される恐れが大です。それどころか、小さい町工場で作っているネジ一本のサイズすら、それが武器の部品として使われたら「防衛秘密」になるのです。
私が以前にやったような、危険なドーリー詰め替え作業を証拠に撮って労働組合の団交で追求した行為も、そのドーリーに積んだ漬物やら豆腐やらが自衛隊員の食糧になるなら、もう立派な「防衛秘密」にされてしまいます。
この私が言っている事は、決してハッタリでも何でもありません。現に戦時中も、軍機保護法という法律のせいで、天気予報も放送中止になり、多くの人が空襲や原爆だけでなく台風や津波で無駄に殺されました。つい最近も、登山者がよく使う縮尺2万5千分の一の地形図から、高圧送電線や発電所の記号が突然消されました。テロを警戒しての措置だそうですが、そんなものを抹消されたら、山の中には他に目標となる人工建造物なんて殆どないのに、これでは登山者に遭難しろと言っているようなものじゃないですか。さすがに登山者団体の猛反対によって表示が復活したそうですが。戦時中はこんな事、日常茶飯事でした。地図も軍事基地の部分は完全な空白で、列車がその近くを通る際は乗客が窓のブラインドを下ろさなければなりませんでした。そうしないと憲兵に捕まってしまいますから。(下記地図から福島第一原発の表示も消され事故が完全に闇に葬られる日も近い)
こんな法律が成立したら一体どうなるか。今の米国を見れば分かります。9.11テロを機に「愛国者法」という今の秘密保護法案と似たような法律が作られた後、多くのブログが閉鎖に追い込まれました。ネット規制は何も中国だけの専売特許ではないのです。私がこの法案を「ブログ弾圧法案」だと言っているのも、決してオーバーな話ではないのです。
それは軍事オタクの法案賛成派議員自身が一番よく知っています。市民団体が反対要請に国会議員事務所を回った時も、自民党防衛族の右翼議員の中でこの法案に恐怖を抱いていた人がいたそうです。その人から「この法案のバックには警察がついている、こんなもの通ったら俺もいつ何時逮捕されるかも知れない、あなた方も充分気を付けた方が良い」と言われたので、「だったら尚更反対して下さいよ」と言い返したら「俺も立場があるので」ゴニョゴニョとお茶を濁されたそうです。
国会の議席数だけで見たら賛成派が圧倒的に有利ですが、実態はかくの如しです。議員も自分の手を自分で縛るような法案には本当は反対したいのです。でも今までの「しがらみ」や「我が身かわいさ」から、平気で国民の自由を日米の「死の商人」に売りとばそうとしているのです。そんなやつらの犠牲にされて堪るか。寧ろ「やつら」の為にも、こんな悪法は廃案にすべきです。
しかも今や世論の7割以上がこの悪法の廃案や継続審議を望んでいるのです。平日夜の緊急な提起にも関わらず、この決起集会に大勢の人が詰めかけ、急遽、弁護士会館の別の場所も会場に充てなければならなくなったのが、その何よりの証拠です。こんな悪法は絶対に通してはなりません。帰り道に浮かび上がった中之島図書館のライトアップされた姿がとてもきれいでした。(了)