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橋下の大阪市乗っ取りを許すな! 

2015年05月15日 22時49分52秒 | 都構想・IRカジノ反対!


 住民投票のビラに言及するのもこれが最後です。最後は賛成派のビラで締めようと思います。
 都構想推進の維新のビラも住民投票運動最終盤の5月13日に入手しました。特大サイズで8ページ建ての、上質紙にきらびやかなカラーで印刷されたビラです。表紙には「大阪都構想まるわかりブック(保存版)」とあり、「チェンジ・大阪」「住民投票で賛成を」と呼びかけています。今まで見た反対派のビラとは段違いに見栄えは良いです。しかし、その中身たるや、まるでお粗末な代物です。これでは、もはや詐欺だと言われても仕方ないでしょう。そこまでメチャクチャな内容なのです。

 まず、最初の出だしからしてメチャクチャです。表紙をめくった2ページ目の最初に、「大阪都構想のはじまり」として、次のようにあります。
 
 ―昭和18年 東京 東京府と東京市が都区制度に移行し東京都が誕生。成長戦略を一本化し、都市機能を充実。
 ―昭和28年 大阪 大阪でも二重行政を解消し成長戦略の一本化を進めることが大阪府議会で確認されました。



 昭和28年当時のいきさつなんて今まで全然聞いた事がなかったし、わざわざ調べる気にもなりませんでした。だって、戦時中の昭和18年(1943年)に、国民を戦争に総動員する為に、それまであった東京市を廃止して、強引に現在の東京都に一本化した、いわば「戦争の負の遺産」を、よりによって「成長戦略を一本化し、都市機能を充実」と、まるで逆さに描いているのですから。そうして、かろうじて残っていた地方自治の仕組みを更に弱め、戦争反対の声を抑えつけた結果、どうなったか。その後の昭和20年の東京大空襲で、何十万もの人間が、一夜にして焼き殺されたのでしょうが!
 こんな事は、別に歴史に詳しくなくても、少し考えればすぐ分かる事です。それを大の政治家が、まるで戦争犠牲者を冒涜(ぼうとく)するような事を、最初から平然と書いているのです。これは、もはや単なる無知では済まされない、政治家の資質にも関わる大問題ではないでしょうか。
 こんなビラ、わざわざ読んでブログで議論するだけの価値があるとは到底思えません。それでも、こんなビラにすら騙される人が今も後を絶たないから、わざわざ、ここでこうして取り上げなければならないのです。

 そして、「ところが…同じ自民党内部でも賛成派と反対派に分かれるなど、意見はまとまらず。」として、次の「大阪の現状」として、ビラには次のように書かれています。

 ―いろんなものが二重に開発されムダになってきた大阪のまち
 ―府と市で一本化されるべき広域インフラは未整備のまま



 ところが実際は、前段の「二重行政のムダ」については、これまで何度も書いてきたように、バブル景気の時に、府も市も国の口車の乗せられて、「りんくうタウン」や「WTC」などの箱物に税金をつぎ込んでしまったのが、過剰投資の原因です。もちろん、その失政の責任は追求されなければなりません。しかし、追求されるべきは当時の誤った政策を推進した政治家であって、二重行政と言う制度のせいでそうなった訳ではありません。仮に二重行政でなかったとしても、政治家が政策を誤ればまた同じ失敗を繰り返します。ただ、それだけの事です。
 ましてや、図書館や病院なんて、二つあっても三つあっても構わないではないですか。いずれも、文化の発展や住民の命と暮らしを守る為には不可欠な施設なのですから。それでなくても、救急患者のたらい回しが今、あちこちで問題になっているのに。

 後段の「広域インフラの未整備」についても、これもとんでもないデマです。(注:インフラ=道路とか鉄道の類)
 ここで維新のビラは、「大阪では地下鉄と私鉄の相互乗り入れがほとんどない」「高速道路もどれ一つとして環状につながっていない」として、「二重行政のせいで東京に遅れを取った」という意味の事を書いています。

 しかし、実際は、大阪は東京とは違い、昔から「私鉄王国」と呼ばれるほど、私鉄や民間会社の方が官僚の力よりも強かったのです。それが証拠に、東京の私鉄ターミナルはいずれも山手線の線上か外側にしかないのに比べ(品川・渋谷・新宿・池袋・浅草)、大阪の場合は全て環状線の線上ないしは内側にあるでしょう(梅田・天満橋・上六・阿倍野・難波)。大阪の私鉄は、その民間の力を背景に、沿線の住宅開発を推し進め、利用客をターミナルの百貨店や繁華街に呼び寄せて来たのです。その中で、わざわざ、民間同士で連携して国に対抗したり、相互乗り入れなどでお役所の力を借りる必要なぞありませんでした。だから、東京では既に大正時代に山手線が全線開通していたのに対し、大阪では今のJR環状線ですら、戦後の昭和30年代にならなければ全線開通しなかったのです。
 よく、維新寄りの学者などが、「”市営モンロー主義”と呼ばれる市営交通の縄張り意識が私鉄の発展を阻害した」というような事を口にしますが、この「市営モンロー主義」も、「強大な官僚が民間を抑えつけた」というよりも、むしろ「強大な民間に対抗する為に官僚が自衛策に転じた」側面が強いのです。

 高速道路の未整備についても、「大阪の高速道路のここが繋がっていない」と維新が盛んに書き立てていますが、そのビラに載っている東京と大阪の比較地図をよく見比べて下さい。大阪の地図が大阪市とその周辺だけに限った物であるのに対し、東京の地図は千葉・茨城・埼玉・神奈川まで含む広大なものである事がお分かりいただけるでしょう。大阪市(人口約270万)と東京都(区部だけでも人口約840万)、大阪平野と関東平野。そもそも規模が全然違う二つの地域を、あたかも同じ大きさであるかのように表示して、「東京には環状高速道路が3本も計画されているのに、大阪には1本しかないのはなぜか?」なんて書かれても、「規模が違うから」としか言えないではないですか。
 しかも、未整備区間は大阪だけでなく東京にもあり、その原因は、高尾山の乱開発など自然破壊への懸念であり、それを背景に広がる建設反対の住民運動である事も、維新のビラには全く書かれていません。これを「誇大広告」「詐欺」と言わずして一体何と言うのでしょうか。

 その挙句に、

 ―府と市がバラバラの方針をとることで、大阪全体の成長戦略を一本化できず…
 ―企業が逃げていく大阪



 として、あれこれの指標を挙げています。ここでは、もう面倒なので、その指標について一々論証したりはしません。もっと本質的な事を指摘しておきます。
 それは、「そもそも、大阪の不景気は、二重行政のせいなのか?」という事です。もっと言えば、「大阪市長や大阪府知事が、日銀の公定歩合を決めたり消費税を上げたりしているのか?」という事です。違うでしょう。日銀の公定歩合を決めたり消費税率を決めたりしているのは国でしょう。その為に、しょせんは株価操作などのバブル演出劇でしかないアベノミクスのせいで、庶民は不景気と物価高のバブルパンチを食らっているのでしょうが。一部の富裕層だけがますます肥え太り、残りの99%の庶民はますます貧困に追いやられているのでしょうが。
 その中で、大阪市や大阪府の企業売上高や事業所数が全国平均以上に減少しているのも、中小企業や繊維(泉州)・鉄鋼(堺泉北コンビナート)・家電(パナソニックやシャープ)などの構造不況業種が、大阪に特に集中しているからでしょう。
 それを、何の論証もせずに、自分にとって都合の良いデータだけをつまみ出してきて、あたかもそれが全て二重行政のせいであるかのように言うのは、もはやデマ以外の何物でもないです。
 ただ、制度をいじくるだけで景気が良くなるのなら、とうの昔に日本は不景気から抜け出せているはずです。橋下・維新の言っている事は、いわば「議院内閣制だから不景気になるのだ、大統領制にすれば不景気なんて、たちどころに解決する」と言っているのと、同じなのですから。

 維新のビラと言うのは、一事が万事この調子です。それは、次の「都構想で新しくなった未来の大阪」(下記写真参照:まるで子供だましみたいなテーマパークの図です!)や、その次の「大阪都構想の制度解説」のページで、より一層明らかとなります。



 ―1つの市役所・1人の市長から、5つの特別区・5人の区長となり、住民サービスが向上します!
 ―二重行政のムダの解消で生まれるお金は4000億以上!
 ―選挙で選ばれた区長により もっと身近な行政を実現!
 ―役所が増えてもっと身近に!
 ―今までの区役所は全て残り、これまで通りご利用いただけます。
 ―今の地名も大切に生かされます!
 ―新しい住所は、町名の前に現在の区名が入る形になります。
 ―にぎわいをつくる都市整備 うめきた2期開発、御堂筋シャンゼリゼ計画など
 ―交通インフラの整備 リニアの大阪~名古屋同時開通、地下鉄の大阪市域外への延伸、阪神高速道路のミッシングリング(寸断)解消
 ―観光誘致戦略 IR(統合型リゾート開発)、光のルネサンスなど

 このビラの内容に対して、都構想(大阪市の廃止・分割)に反対する人たちは、

●わざわざ5つの特別区に分割する事で、新しい庁舎や教育委員会・区議会なども作らなければならなくなる。
●いくら区長を選挙で選べるようになっても、権限も財源もない区長に一体何ができるのか。
●4000億の金が浮くと言っていたのに、実際に調べたら1億円程度しかなかったではないか。
●今までの区役所は残ってもせいぜい出張所となり、受けられるサービスも住民票や印鑑証明の交付ぐらいしかなくなる。それも、財源が無い下では、ほとぼりが冷めたら、どんどん統廃合されていく。
●それまで大阪市がやっていた水道や国保は、特別区だけではまかなえないから、新たに200もの一部事務組合(「プチ市役所」)を作らなければならなくなる。その「プチ市役所」には議会のチェックも及ばなくなる。
●なぜ、新しい町名にわざわざ現在の区名を入れなければならないのか。それは、取りも直さず、新しい区名(北区・中央区・東区・南区・湾岸区)が、それまでの地域のつながりや歴史も全く無視した、単なる「数合わせ」の産物でしかない為に、住所としてすら使えない代物だからではないか。
●「交通インフラの整備」と言うが、地下鉄・私鉄の相互乗り入れ一つとっても、大阪と東京とでは、それまでの発展のいきさつも違うのに、なぜ無理やり東京のサルマネをしなければならないのか。例えば、地下鉄は一部を除き第三軌条(ニュートラムのような集電方式で、電車にはパンタグラフが無い)で、線路の幅も、地下鉄や阪急・近鉄は標準軌なのに南海・京阪は狭軌と、それぞれ異なる。それを今から相互乗り入れするとなると、線路やトンネルの幅も集電方式も全て一から変えなければならなくなる。そのコストは一体誰が負担するのか。
●「二重行政のムダ」とか何とか言って、本当は、大阪市の金を全部取り上げて、その金を「うめきた2期開発」や「リニア」「カジノ」などの箱物行政につぎ込みたいだけではないか。それこそ、過去の「りんくうタウン」「WTC」と同じ失敗を繰り返す事になるのではないか。
●それを誤魔化す為に、「カジノ」とはっきり言わずに、「IR(統合型リゾート開発)」という曖昧(あいまい)な表現でお茶を濁したり、「御堂筋シャンゼリゼ計画」や失敗に終わった「道頓堀プール計画」で、矛先をそらそうとしているのではないか。
●本当は、「高齢者医療・福祉の充実」や「子育て・教育環境の充実」などに取り組む気なぞサラサラなくて、ただ「カジノ」や「リニア」にお金をつぎ込み、関西財界と利益を山分けしたいだけだろう。

…と、単なる「反対の為の反対」ではなく、具体的に事実を上げて、「住民サービス向上」や「ムダ解消」の根拠を問い質してきたのです。

 ところが、このビラは、その根拠に一切答える事無く、反対の人たちを一方的に「デマ」呼ばわりするばかりで、5月初めにまいたビラと全く同じ物を、投票数日前の終盤戦になっても全然その内容を更新せずに、物量作戦に物を言わせて、市内全域にばらまいているのです。そして、まるでパチンコメーカー・マルハンの宣伝カーみたいな住民投票の広報車を、市内全域に走らせているのです。一部の印刷業者に何百万部ものビラの発注を丸投げし、都構想解説のパンフレットまで作り、橋下の思い付きで始めた「住民投票」と言う「自分の個人的道楽」に、市民の税金をつぎ込んでいるのです。その一部の印刷業者とは、落札を巡って談合のうわさすら出ています。
 橋下市長は、都構想に反対する人たちを、二言目には「抵抗勢力」「既得権益にしがみつく人たち」と攻撃します。しかし、維新の元代表(事実上の黒幕)や大阪の現職市長などの地位を利用して、国からの政党助成金や、財界からの政治献金、市民の税金を私物化し、豊富な資金源を背景に、権力と金に物を言わせて物量作戦を展開し、「反対派をメディアに出すな!」とテレビ局に圧力をかけている橋下市長こそが、正に「既得権益にしがみつく」その人ではないでしょうか。
 こんな「オレオレ詐欺」みたいなビラに騙されてたまるか!市民の暮らしを橋下の食い物にされたくない人は、一人残らず住民投票で「大阪市の廃止・分割にNO!」の投票をお願いします。
 
コメント (2)
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