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職能給導入の真の狙いは賃下げだ!

2016年03月12日 00時20分00秒 | 職場人権レポートVol.3


 先日、私の職場でもバイトの契約更改面談がありました。その報告を若干の反省を込めて行っておきます。
 今年の契約更改面談は、今までとは少し趣が違っていました。タイムカードの所に個人別の面談日程が貼り出され、その場で契約書にサインしてもらう為に、面談の場に印鑑を持参するように指示されました。例年なら、ただ雇用契約書を配布し、翌日に署名の上、印鑑を押印して提出するだけだったので、「これは絶対に裏に何かある」と警戒していました。
 そして、先日の3月10日に、私にも面談の順番が回ってきました。当日は定期健診も午後から受けなければならなかったので、予定開始時刻の午後2時よりも約20分遅れで、私の面談が始まりました。面談は裏の配送事務所内の、パーテーションで区切られた応接コーナーで、所長・副所長と私の三名で行われました。面談では雇用契約の締結だけでなく、バイトからも業務に関して要望が出せるので、私も先に業務に関して下記の要望を出しました。以下、別紙の形で提出した手書きの「改善要望事項」より(次回記事に詳細掲載)。

(1)特売商品「旬のイカナゴ」の荷受け・出荷の段取りがバイトにきちんと伝わっていなかった。
(2)作業日報記入に関する社員の指示がまるでデタラメ。最初は「正確に書け」と言いながら、後になって社員の都合で「適当で良い」と変更。
(3)「商品の積み方が雑だ」と指摘するばかりで、「どうすれば荷崩れしないようにキレイに積めるか」という具体的指導が一切ない。
(4)商品のバーコードを読み取る携帯端末ハンディのエラー・トラブルが多発している。
(5)ラベル補充などの雑用を一部のバイトにばかり押し付け誰も公平に分担しようとしない。看板(ラベル収納用の板)もボロボロなのに誰も補修しようとせず、社員も見て見ぬふり。
(6)構内の床のレイアウト表示が見えなくなっていて分かりずらい。実態とかけ離れたレイアウトになっている箇所もある。
(7)交通費の実費支給を。現状では月20日以上出勤しなければ交通費も出ない。これでは暗に「有休取るな」と言っているようなものだ。また、31日まである月と、2月のように28(29)日までしかない月も、一律20日で足切りでは、かえって不公平じゃないか。

 上記の件について面談で話し合い、いずれの項目についても、所長や副所長から「検討してみる」との返事をもらう事ができました。
 その点については、今回の面談については一定の成果はあったと思います。しかし、その事にばかり目を奪われる余り、これから述べる一番肝心な点に対して、十分関心を払う事が出来ませんでした。その一番肝心な点こそが、「これは絶対に何か裏がある」と警戒していた事だったのです。

 実は、職能給の導入を会社が検討していたのです。現在の私の会社のバイト時給は一律900円(60歳を過ぎると一律880円?になる)ですが、それを一律880円程度に抑え、残りをたとえばフォークリフト運転手当、リーダー職手当などの形で、手当支給に変えようとしているのです。
 今後は、その手当の有無や違いによって、同じバイトでも時給に差が付きます。それに合わせて、バイトの賃金体系も、サブリーダー1~3級、リーダー1~3級などの形に、ランク分けしようとしているのです。
 そんな話が所長からありました。今はまだ検討段階で、具体的なランク分けの中身や手当の額も決まっていません。時給や契約時間も、今回の面談では従来通りのままです。今は所長が異動になったばかりで、今の新任の所長では、バイトの名前もまだ覚えきれていないのに、評価なんて出来る訳がありませんから。
 でも、職能給(成果主義賃金体系)の導入を検討している事だけは確かなようです。面談の際にも、会社が作成した資料で、賃金体系モデルや等級モデルに関する説明がありましたから。

「職能給」とか「成果主義」と聞くと、いかにもバイト個人の働きぶりが評価されるみたいですが、そんな言葉に騙されてはいけません。

(1) いくら手当がついても肝心の基本給部分が切り下げられたのでは、それは賃下げと同じです。
 手当なんて一部の人間にしか付かないし、手当の内容や支給基準もはっきりしないのですから。ごく一握りのバイトが給与が少し上がるだけで、後は全員、横ばいか給与が下がる人ばかりになります。それを誤魔化す為に、「能率」だとか「成果」という言葉で言いくるめているのに過ぎないのです。

(2) 最低賃金や生活保護受給額も、現実には基本給を目安に決められます。
 手当や賞与は、会社や人によってバラバラで、目安としては使えないので除外されます。だからこそ、あくまでも基本給が肝心なのです。

(3) 普通の会社でも、他人を公正に評価するのは難しいのに、うちのブラック企業の無能社員に、他人を評価する能力なんてあるわけがないでしょう!

(4) バイト同士の足の引っ張り合いで仕事が回らなくなります。
 給与が上がった人は給与が下がった人を露骨に見下すようになるし、給与が下がった人はバカらしくて他人(特に昇給した人)の応援なんてしなくなります。しかし、個人の手柄のように思える成果も、その他の人の協力があってこそ初めて達成できた物です。そうであるにも関わらず、ことさら競争と差別ばかりあおって一体どうするのか。実際に、成果主義賃金制度を導入した企業は、どこも社内がギスギスして、最後には仕事も回らなくなり、制度の撤回や見直しに追い込まれています。

(5) 今やどこの先進国でも最低賃金が時給千円以上の時代に、時給800円や900円とか言われて腹が立ちませんか?
 現行の時給900円や社内で検討中と言われる時給880円も、人間がまともに暮らしていくのに必要な生活費や他の先進国の基準に比べ、異様に低すぎるのです。その今でも低すぎる賃金をそのままにして、バイトの働き方にケチをつける資格が今の会社に果たしてあるのか?

地域別最低賃金の全国一覧(2015年、厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
 昨年2015年度の時給換算で高い方から順に東京907円、神奈川905円、大阪858円、埼玉・愛知820円、千葉817円、京都802円。全国平均で798円。最低ランクは鳥取・高知・宮崎・沖縄の693円。仮に最高ランクの東京の時給907円で毎日8時間、月22日フルタイムで働いたとしても、月収は16万円に届かない。そこから税金や社会保険料を引かれると、月の手取りは13万円ぐらいにしかならない。


 主要先進国では時給1200円以上が最低賃金の相場。最新のデータでは1500円に迫る。今や、日本と並ぶ超・格差社会の米国ですら、「最低賃金を時給1500円相当に上げろ」という主張を掲げた左派のサンダース候補が大統領選挙の有力株に浮上してきている。ところが、日本では極右トンデモ系のトランプ候補の動きしか注目されず、国民の多くもいまだに「時給1000円なんて夢物語だ」なんて言っていて、世界に無知をさらけ出している。
 
 これから面談を受ける人は、今言ったことにも十分注意して、職場の今の細かな矛盾だけに目を奪われるのでなく、会社が導入しようとしている賃金体系の見直しについてもよく観察し、自分なりに客観的に分析するようにして下さい。
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