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山河荒れて国滅ぶ

2023年02月01日 10時34分00秒 | 身辺雑記・ちょいまじ鉄ネタ
 
先週末(1月28~29日)に徳島県南部を走る阿佐海岸鉄道のDMVに乗りに行って来ました。その報告記事をようやくブログに載せる事が出来ました。本当はもっと早くに載せるつもりだったのですが、動画編集に手こずり今になってしまいました。申し訳ありません。
 
DMVはDual Mode Vehicle(デュアル・モード・ビークル)の略で、線路と道路の両方を走行出来るようにした車両の事です。見た目はボンネット型のマイクロバスで、道路を走る時はタイヤで走行します。線路を走る時は、タイヤの代わりに鉄の車輪が飛び出て、レールバスとして走ります。
 
今まで車でしか行けなかった場所にも駅から乗換なしで行けるようにする事で、利便性の向上を図り、赤字ローカル線再生の切り札として、世界で初めて実用化されました。但し、バス並みの輸送力しかない上、バスに列車の機能を無理に継ぎ足したからか、その日は車両故障で運転休止が相次ぎ、最終便でようやく乗る事が出来ました。最終便で宿の最寄り駅に着いた時はもう夜で、駅周辺も真っ暗闇でした。DMVは翌日も乗ったので、ブログには翌日に撮影した写真を載せます。
 
 
初日の夜は宍喰駅近くの民宿に泊まりました。古民家をリノベーションした民宿です。古き良き日本のたたずまいで、しかも清潔。夕食は和食のコース料理、朝食も地元の食材を使った新鮮な魚や野菜が出ました。お風呂も小さな家族風呂でしたが、セパレートの清潔なお風呂で、久しぶりに浴槽の中で足を延ばす事が出来ました。お布団もふかふかで大満足。これで料金割引やクーポンも付いて1泊7300円と、手頃な価格で心づくしのサービスを味わう事が出来ました。
 
 
翌日の朝もDMVに乗りました。宍喰駅から上り方面終点の「阿波海南文化村」停留所まで乗った後(上記写真の上2枚が宍喰駅、下2枚が阿波海南文化村)、折り返しの便で、大阪行き高速バス乗り場のある下り方面終点の「道の駅宍喰温泉」停留所まで乗りました。そして、9時過ぎの便で高速バスに乗り、15時頃に大阪に帰って来ました。
 
本当はもっと長時間滞在したかったのですが、9時過ぎの便を逃すと、次は12時まで便がありません。それでは大阪着は夜9時過ぎになってしまいます。仕事柄、翌朝も早朝4時過ぎには起きなければなりませんので、余り長くは滞在出来ないのです。そういう訳で、今回の旅は、DMVに乗りに行っただけで終わってしまいましたが、それでも初めて乗るDMVで色んな事が体験出来て良かったです。
 
DMVがバスモードから鉄道モードに切り替わる瞬間も動画撮影する事が出来ました。既にLINE読者の方には動画に編集して流しています。しかし、なぜかYouTubeに動画をアップ出来なくなっており、このブログにも容量オーバーで載せる事が出来ません。代わりに以下の動画リンク・写真・メモを載せておきますので、それでご了承下さい。
 
 
 
メモ:阿波海南駅でDMVがバスモードから鉄道モードに切り替わるまでの様子
 
 
①阿波海南駅の乗り場ではまだバスモードです。この駅はJR牟岐(むぎ)線との乗換駅で、DMV導入前は線路もJRと繋がっていました。今は線路も切断され、DMVが直接乗り入れるようになっています。
 
②乗り場を発車したら直ぐにインターチェンジに進入します。ここでバスモードから鉄道モードに切り替わります。
 
③阿波踊りのお囃子(はやし)が流れたらモードチェンジが始まります。
 
 
④やがてお囃子が終わり、「フィニッシュ」と音声が流れたらチェンジ終了。その間わずか15秒。
 
モードチェンジで前輪のタイヤが引っ込み、代わりに鉄の車輪が浮き上がります。車体が浮いて前の方が高くなります(少し分かりにくいですが、1枚目よりも2枚目の写真の方が、前方のボンネットやミラーの位置が高くなっています)。
 
⑤モードチェンジが終わってもDMVは直ぐには発車しません。運転手が安全確認の為にDMVの周囲を一巡します。
 
⑥運転手の安全確認が終わり、「チン」とベルが鳴ったら発車します。
 
※ちなみに、上記の説明で使った紙の模型は、列車運休のお詫びに当該鉄道会社の社員からタダでいただいたペーパークラフトですw。
 
 
DMVの駅と車内の写真も載せておきます。
 
DMVは列車というよりもむしろバスに近いです。車体にはナンバープレート、社内には運賃箱や整理券発券機、座席にはシートベルトが取り付けられています。鉄道駅のホームも、旧ホームは昔走っていた列車の高さに合わせていますが、現在のホームはDMVの高さに合わせて、路面電車のホームみたいな低床式になっています。
 
鉄道駅の両端から先は完全にバスに変わり、道の駅のバス停まで運行しています。ほとんどは徳島県海陽町と隣の高知県東洋町の道の駅までしか行きませんが、土日の1便だけは、室戸岬の少し先まで走っています。(冒頭の路線図参照)
 
道の駅ではDMV関連グッズが一杯並べられています。Tシャツやポーチ、お菓子、クッションなど。「道の駅宍喰温泉」ではDMVのジオラマ(鉄道模型)を堪能する事が出来ます。
 
 
しかし、その涙ぐましい努力にもかかわらず、阿佐海岸鉄道の経営収支は、地方ローカル線の中でも超最悪です。輸送密度(1日1キロ当たりの乗客数)で示すとわずか135人しかいません(下図参照、出典元:全国ローカル私鉄「輸送密度ワーストランキング」。2000未満の路線全リスト | タビリス (tabiris.com))。旧国鉄の赤字ローカル線の基準が4千人以下、「2千人を切ると補助金なしには従業員の人件費もまかなえなくなる」と言われる中で、この数字は地方私鉄の中でも最悪の部類に属します。
 
 
昨日泊まった民宿の女将に聞いても、「もはや通学の高校生も乗らなくなっている」のだそうです。そりゅあそうでしょう。全区間乗っても約10キロしかないのに(鉄道4駅、バス停3駅)、片道運賃は800円もします。その上、わざわざネットで予約して乗らなければなりません。毎日通学するのに、いちいちネットで予約なんかしていられません。(実際は数席の予備席が確保されているので、地元の方が急用で乗らなければならなくなった時は、予約なしでも乗れるそうです)
 
しかも、基本の造りはバスなので、タイヤで道路上を走行する分には何の問題もありませんが、鉄の車輪で線路上を走行する間は振動がまともに車体に伝わり、乗り心地が余り良くありません。
 
阿佐海岸鉄道は、もともと工事中の国鉄新線(阿佐線)の一部でした。徳島市から室戸岬を経由して高知市まで鉄道で結ぶ予定で、新線を建設中でした。しかし、その後、自動車の普及で鉄道の需要は減少。国鉄自身も赤字解消、経営再建を名目に分割民営化され、今のJR四国に。その中で、新線建設計画も立ち消えとなります。但し、徳島県の牟岐から高知県の甲浦(かんのうら)までと、高知県の後免(ごめん)から奈半利(なはり)までは、工事がほとんど完成していたので、前者は土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線、後者は阿佐海岸鉄道阿佐東線という名称で、それぞれ第三セクターの鉄道会社として開業しました。
 
ところが、今や高速バスに乗って大阪に出た方が、早く着くし料金も鉄道の半額で済むのですから、鉄道がすたれるのは当然の成り行きです。
 
所要時間・料金比較 
徳島バス 9:30南海なんば高速ターミナル~(直通)~14:48宍喰(阿佐海岸鉄道・道の駅宍喰温泉と共有のバス停) 5千円
地下鉄・JR 9:32なんば~(新大阪・岡山・徳島・阿波海南で乗換)~15:58阿佐海岸鉄道・宍喰駅 12330円 
 
だから阿佐海岸鉄道でも集客に躍起となっているのです。今、同鉄道が最も力を入れているのが「四国みぎした55(ゴーゴー)フリーきっぷ」の宣伝です。高知県側も巻き込んで、鉄道やバスの乗客を、1人でも多く「道の駅」などの観光施設に誘い込んで、1円でも多く金を落としてもらおうと躍起になっています。DMVの導入も、もはや地元利用者の利便性向上なぞ二の次で、観光客集めのアトラクションが目的になってしまっています。
 
 
「こんな金儲けの事しか考えていない赤字ローカル線なぞ、さっさと廃止してしまえ!」と、多くの人は思うでしょう。実際、鉄道ファンの私ですら、DMVに乗りに来るまでは、そういう気持ちに傾いていました。
 
でも、実際はそんな単純な問題ではなかったのです。何故なら、赤字なのは鉄道だけでなく、路線バスや高速バスも同じだからです。実際に私が乗った大阪・徳島間の高速バスも、乗客数だけで言えば、阿佐海岸鉄道と似たり寄ったりでした。
 
それでもまだ、高知県側は土佐くろしお鉄道が高知駅まで乗り入れているので、ある程度の鉄道需要はあります。それに引き換え、徳島県側は徳島駅への乗り入れもないので、県南部はもはや「陸の孤島」と化してしまっているのです。大阪から徳島市までなら高速バスで約3時間で着きます。しかし、そこから先の県南部に向かうには、さらに3時間近くかかります。
 
JR牟岐線も、徳島から阿南までは30分間隔のダイヤで運行されています。しかし、そこから先は2時間に1本のダイヤとなります。そのJR牟岐線の更にその先にあるのが阿佐海岸鉄道です。
 
実際、高速バスの車窓から眺めても、徳島から阿南までは大都市近郊の街並みです。しかし、阿南より南に下ると、山がまじかに迫り、住宅は数えるほどになります。トンネルを抜けると海沿いの道となり、漁師町が点在するようになります。私が泊まった宿のある海陽町の宍喰も、漁師町で朝が早いからか、夕方6時を過ぎると、街灯と所々灯る家の灯り以外は、街全体が漆黒の闇に包まれてしまいます。
 
この寂れようは一体何なのか?宿に置いてあった徳島新聞の今朝のトップニュースは何か?特殊詐欺の事件でも、自民党の不祥事でも、防衛増税でも、コロナ5類引き下げでもありません。地方議会の定数割れです。
 
 
地方では、過疎化や高齢化の影響で、地方議員の成り手もいなくなってしまっているのです。前日に泊まった民宿のある町の目抜き通りも、翌朝は誰一人歩いていませんでした。ところが国は、農産物の輸入自由化で国内農業を壊滅に追いやり、若者や主婦を低賃金の非正規雇用に塩漬けにしたまま、「結婚しない若者が悪い、子どもを産まない女性が悪い」となじるばかり。
 
挙げ句の果てに、肝心の自国民を見捨てて、外国からカジノや観光客を呼び込んだり、外国人を使い捨ての労働力として呼び込む事にばかり躍起になっている。これでは、国は国民を見捨てたも同然ではありませんか。
 
こんな状態で地方が栄える訳ないでしょう。「国破れて山河あり」ならまだ良い。現状は「山河荒れて国滅ぶ」です。地方ローカル線の赤字も、根本的には地方そのものの衰退が原因です。ただ単に赤字の鉄道をバスに置き換えただけで、解決する問題ではありません。
 
宍喰の目抜き通りもDMVの車内もガラガラ。
 
その地方の惨状を放置して、幾ら防衛費だけ増やしても、肝心の国民が飢えて死ねば何もならないのに。「国あっての国民」ではありません。「国民あっての国」です。国民を見捨てておきながら、防衛費増だけ押し付けるのは、余りにも虫が良すぎます。「何が国防か笑わせるな」と言いたいです。
 
それでも、国があくまで一般庶民を見捨て、都会に住む一握りの金持ちや、外国人観光客、外国人労働者だけを当てにする政策を続けるなら、阿佐海岸鉄道も一層の事、外国人観光客からバカ高い運賃をむしり取って、その金で地元の客は予約なしにDMVにタダで乗せるようにしたらどうでしょうか。そうすれば、地元の高校生も鉄道で通学するようになるのではないでしょうか。

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