
育鵬社教科書を採択の東大阪市教委 「独立性」取り戻す
来春から中学校で使われる歴史や公民教科書で、「日本教育再生機構」のメンバーらが執筆した育(いく)鵬(ほう)社の教科書を採択する動きが広がるなか、大阪府東大阪市教委が公民で育鵬社の教科書を採択した。同市教委の教科書採択では学校現場の意向を事実上追認する不適切な方法が続いていたが、今回は教育委員が独立性を取り戻し、教科書を公平に比較、「国家観が最もしっかりしている」と判断した。識者は「本来のあるべき採択の姿に立ち戻った」と評価している。(産経新聞、以下略)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110824/edc11082421150009-n1.htm
それで、下図がその実際の採択状況です。この図は地元・産経大阪版の当該記事に載っていたもので、ネットの記事では省略されています。(あからさまに載せると都合が悪いからか?)
この図では、まず学校の現場教師の意見として、1校に付き3社まで推薦図書(教科書)を募り、それを26校から集めた事になっています。その集約結果が、「日本文教出版21校、東京書籍19校、教育出版13校、帝国書院13校、清水書院5校、育鵬社2校、自由社2校」という事で、保守系の「つくる会」(新しい歴史教科書をつくる会)=「日本教育再生機構」メンバー執筆の教科書(育鵬・自由の2社)は概して低評価でした。

なら、そんな現場にとって使いにくい不人気な教科書なぞ使わずに、素直に現場の意見に従えば良いのに、「現場の意見なぞ、偏向教師による人気投票にしか過ぎない」と一方的に決め付けて、「国家観」がどうたらこうたらとかいう、それこそ自分たちだけにしか通用しない、独り善がりの偏向した理屈を押し付ける形で、殆ど誰も推薦しなかった教科書をごり押しする。これって、誰が見ても教育委員会による「独裁」じゃないですか。
この記事では、教師の意見を一方的に「人気投票」と貶めていますが、そもそも子どもと一番向き合っているのは誰ですか。子どもの実情を最も良く知っているのは誰ですか。教育委員ではなく現場の教師でしょうが。その第一線のプロの意見を、まるで「AKB総選挙」みたいなものと同列に看做して「人気投票」と貶め、必ずしも現場の事を良く知らない人たちの意見をそれにとって代える。そんなに教育委員って偉いのか。
そもそも、「つくる会」系の教科書が現場で不人気なのは、それなりに理由があるのです。領土問題や拉致問題には触れても米軍基地問題には殆ど触れないといった右翼偏向以外にも、他社教科書の盗用だとか、「1952年に豊臣秀吉の朝鮮出兵」などの明らかな史実の間違いが多いのが、不人気の理由です。
だったら、それらの教科書を採択してもらいたいと思うなら、教科書会社に「もっと推薦してもらえるように努力せよ」と指導するのが筋でしょう。それをせずして、21票(校)や13票(校)も得票した候補者(教科書)を無視して、2票(校)しか得票できなかった候補者に下駄を履かせて当選させる。これを「八百長」と呼ばずして何と呼ぶ。
そういうと産経は、「最終的に教科書採択権があるのは教育委員会だ」「決めるべき所で決めてもらう、それでこそ民主的手続きだ」「それを外野が勝手に口出しするな」と言うのでしょうが、この理屈もおかしい。
そもそも、現場の意見が素直に反映していたら、外野が口出しする事もありません。教育委員会の専横で、現場とは乖離した教科書採択が行われているから、外野が口出しせざるを得ないんじゃないですか。
それに、幾ら「採択権がある」といっても、だから「何でも勝手に出来る」という話にはならない。その教育委員会の教科書採択権も、主権者たる教師・子ども・保護者・市民・国民から、あくまでも付託されているものにしか過ぎない。主権者はあくまでも国民です。その主権者の意向を無視して、21票の候補ではなく2票の候補を当選させるような八百長選挙を行う「権限」なぞ教育委員会にはない。
独裁・専制は何も戦前日本や今の中国・北朝鮮・ミャンマー・リビア辺りだけの話ではない。この教育委員会の行いも立派な「独裁」じゃないですか。
吉野作造などの民本主義者が「権力者と言えども民衆の意向を無視して勝手な事は出来ない」と言ったのは大正時代。今から遥か90年も前の話です。その自覚すらなく、「当局者・権力者のやる事に口出しするな」と言わんばかりの記事を書くファシスト産経に、民主主義や人権を語る資格はない。安倍内閣の教育再生会議メンバーに引き立てられた事で欲に目がくらみ、それまでの主張を百八十度転換した義家弘介みたいな変節漢がのさばる「教育再生機構」に、道徳や教育を語る資格はない。
(関連記事)
・大本営発表は何も戦前だけに限った話ではない
http://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/0e1013593c182355a24d15f2871bb04d
・大本営発表は何も戦前だけに限った話ではない2
http://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/59c9a20348cd92fadd02b30bbadb2236
・大本営発表は何も戦前だけに限った話ではない3
http://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/bffb3148ab8c5828d450c29f2a436ef8
【八重山】現場教員らの調査員が推薦していない育鵬社版の公民教科書「新しいみんなの公民」を選んだ八重山採択地区協議会の選定が教育現場に動揺を広げるのは必至だ。識者は「手続き自体が不当だ」と問題を指摘している。
玉津博克協議会長(石垣市教育長)は今回、協議会委員から学校現場の経験がある教育委員会の専門職員を外し、必ずしも教育経験者ではない教育委員と学識者を加えた。専門性の高い調査員による推薦教科書の「順位付け」も廃止。調査員の推薦の有無にかかわらず、教科書は協議会の責任と権限で選ぶとしていた。
調査員は約1カ月かけて教科書を比較研究し、今月1日、協議会へ報告書を提出。委員8人に配られた報告書の推薦教科書の項目には「新しい歴史をつくる会」系の自由社、育鵬社の各社会科教科書は入っていなかった。
報告書の調査研究資料では、育鵬社版公民教科書の問題点として「沖縄の米軍基地に関する記述がまったくない。小さな写真のみ」など14意見が並んだ。
しかし、協議会では無記名投票で5票を獲得した同社教科書を選定。歴史教科書についても、選定された帝国書院4票に対し、育鵬社は3票を集めていた。
玉津会長は教員らの専門性の反映については「複数推薦制度で吸い上げる」としていたが、選定後の会見では「自分たちが責任を持って選んだ。推薦に縛られない本来の形になった」と述べた。
識者らは、八重山地区の一連の手続きが、教育現場の意見が反映されない仕組みに変容したとして「不当」と批判。説明責任を厳しく問う必要性も指摘する。
100人、教委前で抗議
【八重山】歴史をゆがめるな―。八重山地域でどの教科書が使われるかを左右する選定協議会が開かれた石垣市教育委員会前には、教育関係者ら約100人が集まり、「つくる会」系を選ばないよう訴えた。
元小学校教員の桃原当三さん(82)=石垣市=は、「あざむかないでウチナーの心を」と書かれたプラカードを持って集会に駆け付けた。沖縄戦時は、鉄血勤皇隊の学徒兵。地雷を抱えて敵陣に突っ込む訓練を繰り返した。「自分が現役時代ならこんな教科書が選ばれることは想像もできなかった。子どもたちの将来のためにこの流れを必ず止めたい」と、照り付ける日差しの中で汗をぬぐった。
石垣島出身の宮城恵子さん(64)=南城市=はこの日の朝、八重山在住の教職員関係者と電話しているうちにいてもたってもいられなくなり、石垣行きの飛行機に飛び乗った。中学校の元社会科教師の宮城さんは「ここは譲ったら沖縄の教育は崩れる。歴史とは過去を教えるだけでなく、自分たちの未来を考えることです」と決意を述べた。
協議会は非公開で行われ、2階の会合場所に通じる外階段には市職員が警戒に立つなどものものしい雰囲気。会合に先立ち、「子どもと教科書を考える八重山地区住民の会」の代表らが「住民の代表として来ています。中に入れてください」と公開を求めて市職員に詰め寄る場面もあった。
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-08-24_22506/
沖縄の方も酷いね。しかも、やり口が東大阪とそっくり。
・現場教員らの調査員が推薦していない育鵬社版の公民教科書「新しいみんなの公民」を選んだ
・玉津博克協議会長(石垣市教育長)は今回、協議会委員から学校現場の経験がある教育委員会の専門職員を外し、必ずしも教育経験者ではない教育委員と学識者を加えた。
・専門性の高い調査員による推薦教科書の「順位付け」も廃止。調査員の推薦の有無にかかわらず、教科書は協議会の責任と権限で選ぶとしていた。
誰も推薦してなかった問題大有りの教科書を、選考機関の人選まで差し替え、密室審議で陰に隠れてコソコソと。それがばれたら「外野が口出しするな」ですか。万一そんな事を言われたら、「口出しされるようなデタラメをするな!」と言い換えて遣れば良い。
ドラマや音楽番組の制作などで顕著ですが、極端な営利主義=コスト削減方針(番組制作費がアメリカの1/7ほどまでもカットされ劣悪条件での下請け委託が常態化しているようなコストカット経営など)が、一方で安い韓国製コンテンツを洪水のように輸入し「良識派」さえも反発させるような状況をつくり出しているんです。
日本のメディアも社会も重症です。
何故なら、ここでの記事の主題は、あくまでも靖国教科書派の手口のアンフェア、汚さを糾弾する事にある。それまで誰からの推薦もなかった教科書を、自分たちの息のかかった首長や教育委員を使って、恰も民意に支持されたかのように装う狡猾さについて批判している。
その他の靖国史観の是非や、ましてや中国・韓国世論の反応については、何も言及していない。本文以外のコメント(沖縄タイムスの記事紹介)では、沖縄戦体験者の声も取り上げているが、それについても、あくまでも当事者の生の声を取り上げているのであって、中国・韓国云々については何ら言及していない。
靖国教科書問題について、日本側だけでなく中国・韓国側にも問題があるのは事実だが、その事で以って、靖国派の主張や手口のデタラメさを免罪は出来ない。その事はバッジさんもよく分かっていると思う。
バッジさんの標記コメントは、出来ればフジテレビ抗議デモの記事の方に投稿して欲しかったです。もう既に同種の投稿がされ議論にもなったので、今さらコメント移動はしませんが。