脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

認知症治療薬のメモ

2024年10月28日 | エイジングライフ研究所から
このブログでは、認知症治療薬に対しては懐疑的というよりも否定的な投稿を続けてきました。
対象はエーザイがアリセプトの特許切れの後に発表したアデュカムマブや最近のレカネマブでした。
ヤマボウシ

ところが10月25日のニュースで「英医薬品・医療製品(MHRA)は、23日米イーライリリー社の早期アルツハイマー病治療薬ドナネマブを承認した」と知りました。「ブルータスお前もか!」と思いながら続けて読むと「英国の国立医療技術評価機構(NICE)は、患者の利益が比較的小さく費用に見合わないとして、公的医療制度での使用に否定的な勧告案を示した」
「おやま。またまたブルータスお前もか!」副作用だけでなく、効果そのものも疑問視されていることと、あまりにも高価という点は、いち早く認可したアメリカでも指摘されています。
レカネマブとドナネマブの違いについては国立長寿医療研究センターの記事に詳しい解説があります。
アルツハイマー病の新しい治療薬(中編)ドナベマム

~マブという舌を噛みそうな薬名についてもちょっと解説しておきます。
アミロイドβのような特定のたんぱく質に対する抗体を作って、そのたんぱく質を排除する薬を抗体医薬といいますが、その薬の末尾は~mab(マブ)という表現をされます。すべてこの種の薬は高価なのです。


1999年に初めてこの種の薬がアミロイドβ排除に有用だとわかり、一斉に研究が進みましたが、残念なことに髄膜炎という重篤な副作用が見つかりあえなく中止。
さらに大手製薬会社で新薬の研究にしのぎが削られたのですが、次に出てきた結論は「アミロイドβを排出させることはできるが、認知機能は改善しない」。
ファイザー社はバピネウズマブ、イーライリリー社はソラネズマブ、ロシュ社はガンテネレマブ。(~マブのオンパレードでしょ?)全部が撤退…
フジバカマが咲きましたがアサギマダラは来ません。

皆さんは記憶にありますか?
今はエーザイのレカネマブが脚光を浴びていますが、ちょっと前は同じエーザイのアデュカヌマブがさっそうと登場したのです。
「今までのアリセプトはいわば対症療法だったが、アプローチが根本的に違う画期的な認知症にさせない薬(ではなく遅らせるですが)」という触れ込みだったはず。
このアデュカムマブは、米食品医薬品局(FDA)に2020年7月申請。2021年6月に条件付き承認されました。ところがFDAの下部組織の末梢・中枢神経系薬物諮問委員会がほとんど全否定、反対の委員が職を辞すというドラマチックな展開になりました。

日本では2020年12月厚労省に申請。2021年12月に継続審議。承認見送りという経過になっています。
この顚末に対する株価の変動を見てください。株価は正直です。
シロバナフジバカマ

アデュカヌマブはひっそりと表舞台から消えさって、次なる役者はレカネマブ。
アデュカヌマブはアミロイドβがある程度固まったものに対して抗体が働きかけて、固まりを排出する仕組みです。
それに対してレカネマブは、アミロイドβが固まる前に排出させることができるのが最も違う点です。だからより早期が対象。アミロイドβが溜まっていないことをアミロイドPETか脳脊髄液検査で確認する必要があるのです。
どうもレカネマブの方が有効っぽい印象が強いでしょう?
ちなみに、アデュカヌマブもレカネマブもエーザイとバイオジェン社の共同開発です。
ハイビスカスローゼル(ハイビスカス茶)

何度もこのブログで言っているように、認知症発症の原因がアミロイドβならば、創薬開発も意味があると思いますが、エイジングライフ研究所の主張は全く違います。
脳には正常な老化がある、それを器質的に見れば、アミロイドβによる老人斑もできるでしょうし(加齢とともに顔にもシミができます)アミロイドβに疑問を持つ人たちは神経原線維変化が犯人ではないかというのですが、神経原線維変化も増えてくるでしょう。
そういう加齢とともに目で見える形で起きてくる変化ではなく(従来は死後剖検。最近ではアミロイドの量は血液で測定できるようになってきています)、機能的に見直してみると、正常老化の道筋をたどっている人たちの脳の働きと認知症になっていく人たちの脳の働きはできなくなる機能に差があります。

繰り返しますが、それは器質とは無関係です。
老人班があっても、萎縮があっても脳の機能が万全な人がいます。
きれいな脳をしていても働きが悪い人もいます。
その差を生むのは、脳の使い方です。イキイキとその人らしく生きているかどうか、楽しい変化のある暮らしぶりをしているかどうかが認知症になるかならないかのカギだと私たちは思っています。
2021年6月に書いた記事をコピーしておきます。
「ナンスタディ」という有名な 研究があります。これは1986年に始まったノートルダム教育女子修道会 の75歳以上のシスター(678名)の追跡調査で す。現在も継続中。
<1>修道院に保管されている修道女の個人記録や利用記録を提供すること
<2>年1回、身体能力と精神能力の詳しい検査を受けること
<3>死後、脳を取り出して解剖すること
ここからいくつもの仰天させられる情報が飛び出してきました。
解剖結果からアルツハイマー変化と表現される、老人斑、神経原繊維変化、萎縮。それに脳の重さが記録されました。本にまとめられた時点で300例を超えていたそうです。
「100歳の美しい脳」デヴィット・スノウドン著

*アルツハイマー変化は脳重量・萎縮の状態・アミロイドβ沈着状態からみます。
*ステージというのがアミロイドβが沈着している状態です。0が最小、増えるとともに数値があがっていきます。
*青欄は状態が良好、赤欄は状態がよくないことを表しています。
82歳の例のようにアルツハイマー変化がほとんどなく、絶対ボケてるはずがない脳を持ちつつ、重度の認知症をきたした例。91歳と?歳の例のようにアルツハイマー変化が大きくても、全く認知症がない例。さらに100歳という超高齢でありながらアルツハイマー変化がなく、認知症状も皆無であった例。
これは実証研究ですが、どう考えますか?
脳のアルツハイマー変化と認知症の発症には関係がないということにならないでしょうか?
少なくとも一直線に、アミロイドβが認知症の原因とはいいがたい。

ちなみにもうひとつ。2022年6月に発表されました。「サイエンス」は世界最高峰の科学雑誌です。
「Science」は、2006年に発表され、その後のアルツハイマー病の研究に大きな影響(アミロイドβ原因説。引用論文は2200報!)を与えた論文に、改竄された内容が含まれている可能性があるという調査結果を発表した。
認知症の原因究明からいうと、天地がひっくり返るような発表に思えますが、おおきなニュースになってないのはなぜでしょうか?
どうして専門家たちはいまだにアミロイド説から自由になれないのでしょうか?

by 高槻絹子


参考にしたサイトです。
国立長寿医療研究センターの記事は、専門的すぎますが、知識欲は満たしてくれます。歴史的な経過などはよくわかります。残念ながらアミロイド原因説に乗っかった上での解説です。

人生はワクワク

2024年10月26日 | 私の右脳ライフ
今朝、いつものようにFBをチェックしました。
鈴木義人さんの投稿が目に入りました。
静岡県伊豆市戸倉野343-1でカフェグリーンポケット、別名石窯焙煎コーヒー研究所を楽しみながらやっている友人です。利き珈琲は必須。ランチも極上で、特製オムビーフカレーと自家製燻製プレートで毎回真剣に悩みます。
投稿は、山法師の実が色づいてきたこととそれが南国フルーツのマンゴーのようにおいしいというお知らせでした。
マンゴーのような味というのですから、「どこかで見つけて一ついただいてみようっと」心に決めました。
ところで、夫からランチのお誘いがありました。
最近の私たちのブーム、南伊東の鮨ダイニングかま田でめでたく意見の一致を見ました。

夫はいつもの穴子天丼。私は鮨パフェ。前回訪問時に初めて気づいたメニューです。

このたくさんの食材を見事なテクニックでパフェに仕上げてくれます。

板前さんの美的センスを見てください。

パフェでしょう?

「ごちそうさま」と店の外に出て、目が点!
今朝、心に留めた景色が目の前にありました。

見送ってくださっているスタッフに今朝のFBの記事をお見せして「一ついただいていいですか?」とお願いしました。

帰宅後、味見。
実食!
渋味も苦味もなく、確かにマンゴーのような食味でした。新しい世界が広がりました。
積極的に生活しようとする姿勢は、小さなことの積み重ねで人生をワクワクさせてくれますね。

by  高槻絹子












人生はいろいろ

2024年10月22日 | 私の右脳ライフ
酷暑のせいか、夏の花のはずの月下美人が開花。


10月19日は戸畑高校天籟同窓会関東支部の総会と予定帳に書き入れたのは、去年10月22日総会の日。会場は恒例の銀座マリオットホテルからバトゥール新宿に変更でしたから、Google mapを使って行き方をチェックしていました。
さらりと書きましたが、実はこういうチェックは大好きなんです。
まず会場のホームページに入ってアクセス方法をチェック。地図でどこにあるのか把握して、電車で行く時は最寄駅の確認、知らない駅だと路線図をみて、知ってる駅との関係を調べます。
地方はこれでうまくいくのですが、首都圏は難しい!
最初は新しい地下鉄についていけませんでしたが、そのうち次々に実現していく私鉄の延長や地下鉄の乗り入れが複雑すぎて難しいのです。
それと路線図上では乗り換えになっていても、一駅歩くというようなことや、その逆のホームの向かい合わせで乗り換えできる駅など、細かい情報まで追いつくのは大変です。
今度の会場の最寄駅は東新宿ですが、新宿駅や東大久保駅、西武新宿駅からでも行けそうでした。
Google mapで検索してみた結果です。
上京するときは熱海から新幹線が定番ですが、まあいろいろな行き方を教えてくれています。
一番上を開いてみたら、熱海から東海道線で横浜。そこで東横線に乗り換えたら、なんと乗り換えなしで東新宿直通!渋谷から地下鉄副都心線に乗り入れているのです。副都心線に乗るのは初めてでした。東新宿の後は池袋経由で和光市まで一本!そして池袋からは有楽町線と同一路線とのこと。埼玉県、東京都、神奈川県にまたがる線が一本化したというニュースも承知していましたが、初めて実感しました。
横浜から地下鉄みなとみらい線で元町中華街まで直通していることは何度か乗って理解済み。ただし、横浜は通過した状態で乗っていました。
何十年ぶりかの東横線横浜駅は最近の新しい地下鉄駅に特徴的な地下深い駅に様変わりしていました。横浜駅で乗り込んだ電車は、かつて知ったる東横線車両とは様変わり、モダンな印象でした。今まで紫色の吊り輪や車両ドアが全面ガラスというのはみたことがありません。

スムーズに会場到着。先輩にご挨拶して、同期生と盛り上がり、娘のような後輩とも久しぶりに顔を合わせて元気を確認しました。
毎年、福引大会は結構盛り上がります。私は後輩の井上さんが経営しているグローバルフルーツのオレンジ一箱が当たりました。もともと世界中から旬のフルーツを輸入してホテルやレストランに卸すという会社ですが、最近はそのレベルの高いフルーツを通販で買えるようになりました。だからワクワクです。
同期の幕田魁心さんは高名な書家ですが、毎年色紙を提供してくれます。なんと今年は同期生の吉武さんが引き当てました。うれしい笑顔が並びました。

幕田さんはスピーチも。

毎年胸が熱くなる応援団の演舞。

O崎さん、パソコン担当ともにお疲れさまでした。

これまた恒例の二次会。
会場は同期生、銀座の毛利バーグラン
伝説のバーテンダー毛利さんは同期生です。毛利さんが作るモーリマティーニを求めて世界中からお客さんが来ます。

楽しい時はすぐに過ぎ、私は後輩二人と一緒にホテルで一泊しました。
十分におしゃべりを楽しんで、二日目の目的田中一村展

後輩のお知り合いの方が、奄美大島の田中一村を見出し世に広めた方で、二人で心を込めて作品を追っていきました。時々「この作品好き」「素敵」「素晴らしい」などなど自由に右脳全開した時間でした。
東京都美術館のレストランミューズは上野精養軒直営店ですから美味しく軽食をいただいて、上野駅でお別れ。
後輩の一人は、山手線で新大久保、西武線に乗り換える。もう一人は銀座線上野駅から東陽町。私は東京駅へ行き新幹線。と見事に三者三様。山手線逆方向で帰る後輩が、私の進むべきホームまで送ってくれました。独立独歩の私にはあまりないことでちょっとびっくりしましたが、とっても嬉しかったのですよ。
近所に咲いていたブットレア

ここで報告記終了したかったのですが、追加があります。
新幹線に乗り込んだ時にちょっと膝を捻ったようで、車内に入ろうとしたら「あれっ膝が痛い…」
座席を触りながら自由席まで行き、熱海駅でそろそろ乗り換えて、城ヶ崎海岸に迎えに来てくれた夫の車に乗り込む時には「どういう体勢なら乗れるんだろう」という状態。
日曜日の夕方でした。「骨折はないけど、筋かなあ」と勝手な自己判断して検索したらRICEの処置をすることがわかりました。
  • Rest:安静
  • Ice:冷やす
  • Compression:圧迫
  • Elevation:挙上
とにかく保冷剤で冷やしながらタオルでグルグル巻きにして休みました。
せっかくの楽しく充実した東京旅がとんでもない結末になってしまいました。
月曜日朝一番に整形外科受診。
  • ボックスセージ

診断は「半月板がいたんだのでしょう」そういえばここ1ヶ月くらい左膝が不調だったというと「ダメージがあったので、小さな刺激が大きな負荷になった」安静にして痛み止めと湿布という対応を教えていただきました。それからまる二日。
なんということでしょう!8割方よくなっているという感じなのです。
全く人生はいろいろですね。

by 高槻絹子









レカネマブ 世界では疑問視されています。

2024年10月18日 | エイジングライフ研究所から
けっこう長い間悩みながら、レカネマブ投与が本格化してきたことに対してこのブログで疑問を表しました(10月16日)。そうしたら昨日のネットニュースで以下の記事に遭遇。
[東京 17日 ロイター] - エーザイ(4523.T), opens new tabは17日、米バイオジェン(BIIB.O), opens new tabと開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」について、オーストラリアの医療製品管理局(TGA)が早期アルツハイマー病の治療法として推奨しないとの初期の審査結果を示したと発表した。
ニューヨークランプミュージアムで。2024.9.28

欧州ではレカネマブは否定的だということは、もう少し前からはっきり表明されていました。
[7月26日 ロイター] - 欧州連合(EU)の欧州医薬品庁(EMA)は26日、エーザイ(4523.T), opens new tabと米バイオジェン(BIIB.O), opens new tabが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」について、販売承認しないよう勧告した。認知機能低下を遅らせる効果が、脳腫脹などの重篤な副作用のリスクに見合わないとした。
エーザイとバイオジェンは再審議を求めると表明。ただ、当局にどのような情報を提供するかは明らかにしなかった。
欧州委員会はEMAの見解に沿った決定を下すことが多い。

さらにフランスでは2018年から認知症治療薬は保険適応を外していたことは知ってる方もいるでしょう。
フランスの保健省は6月1日、アルツハイマー型認知症治療薬の保険償還を8月1日から停止すると発表しました。 対象となるのは▽ドネペジル(アリセプト)▽ガランタミン(レミニール)▽リバスチグミン(イクセロン/リバスタッチ)▽メマンチン(メマリー)――の4剤(カッコ内は日本での製品名)。2018/06/07 

そもそもレカネマブを承認している国は、2か月前の情報では世界で8か国だけです。
レカネマブは、英国のほか、米国、日本、中国、韓国、香港、イスラエル、アラブ首長国連邦で承認を取得し、米国、日本、中国で発売されています。2024/08/22

なぜ、日本ではレカネマブが認知症治療薬としてこんなに脚光を浴びるのか、どう考えても理解できません。前記事で書いたように東京都のHPでは特設サイトまで立ちあげている…
上記の記事を読んでみると、脳出血や脳浮腫という副作用の大きさが、認知症発症予防の効果を超えてしまうというのを否定の理由として挙げられています。
レカネマブ推進者としてよくマスコミで解説されている東京大学大学院神経病理学分野教授の岩坪威先生の発言。(m3.com2023年10月10日 要約)以下岩坪先生の発言は青字で表記してあります。
「レカネマブ投与群では、脳の浮腫や滲出液貯留(ARIA-E)が12.6%に、微小出血(ARIA-H)が17.3%に認められました。プラセボ群ではそれぞれ1.7%、9.0% 」
実はアメリカでは2名の死亡例もあるということです。(因果関係は一応否定されています)

ここでもう一度、1.5年の投与で発症予防ができたというエーザイ側の主張をおさらいしておきましょう。
CDR(Clinical Dementia Rating:臨床的認知症尺度)を用いてその効果を評価しています。
CDRは 「認知症の重症度を評価するためのスケールの一つ。このスケールの特徴は、認知機能や生活状況などに関する6つの項目を診察上の所見や家族など周囲の人からの情報に基づいて評価する『観察法』です。それぞれの項目は『健康』な状態から「重度認知症』まで5つの段階に分類されています。評価表に基づいて分類することで認知症の程度だけでなく、特に障害されている機能を把握し、予後の見通しを立てるのに役立ちます 」
6つの項目の詳細は記憶、見当識、判断力・問題解決、社会適応、家庭状況・興味関心、介護状況の6分野です。
これが全体。

レカネマブは疑わしいと軽度が対象。上から記憶、見当識、判断力・問題解決、社会適応、家庭状況・興味関心、介護状況の6分野。

健康(CDR=0)、認知症疑い(CDR=0.5)、軽度認知症(CDR=1)、中等度認知症(CDR=2)、重度認知症(CDR=3)の5段階で評価します。
まったく問題がなければCDRスコア0点。最重度の場合はCDRスコアは3×6=18点になります。
数字で表されるのでとても客観的なようですが、あくまでも観察もしくは家族などからの情報で評価する「観察法」なので、適切な評価かどうかは難しいところがあります。
子細に見てみると症状の分け方そのものにも判断が難しいところがあったります。
健康から認知症疑いへの評価になると、1分野で0.5点CDRスコアが上昇します。6分野全体的に認知症疑いになってしまうとCDRスコアは0.5×6=3点になります
さて、レカネマブを投与したグループとプラセボグループのCDR評価による比較が、有効であるという根拠として提出されています。
岩坪威先生の発言。(m3.com2023年10月10日 要約)
「認知機能低下の抑制効果は、18カ月間で見られた認知機能の悪化量(CDR-SBスコア)は、レカネマブ投与群の1.21に対し、プラセボ群は1.66。つまり、投与群でも認知機能低下の進行は食い止められなかったが、プラセボ群での低下と比べると、悪化量は投与群で27.1%小さいことが示されたことになる。このことから、レカネマブの投与によって、認知機能低下のスピードが3割弱遅くなったと解釈できます 」
レカネマブを投与してもCDR評価は1.21悪化した。
レカネマブを投与しないとCDR評価は1.66悪化した。
つまりレカネマブ投与した効果はCDR評価で言えば1.66-1.21=0.45あったという結論だといっているのですね。
投与しなければ1.66になるところが0.45少なかったから
0.45÷1.66×100≒27.1%
この数字をもとに認知症になるスピードを約3割遅らせることができるとマスコミでは宣伝されています。

この治験は北米、欧州、アジアの235施設で早期アルツハイマー病(正確に言えばアルツハイマー型認知症ですが)当事者1,795人(レカネマブ投与群:898人、プラセボ投与群:897人)でスタートしています。
大規模で、客観的な調査の印象が迫ってきます。投与期間は1年半。3か月ごとの計測で最後は1,471人でした。15%くらいは減るものなんでしょうか?

続けて0.45の差について。
「認知機能の低下が軽い方々(各項目の点数が0.5から1以内)を対象にして、平均で1つの項目にMCIと軽度認知症レベルの違いに相当する差が出た、ということが大きな意味を持つ 」
もちろん有意差検定などは行われていると思いますが、前に掲げたCDRの表を見てください。「0.45というのは6分野のうち1分野だけ見ても段階の評価は変わらなった(どの分野も認知症の疑いから軽度認知症の症状に移行しなかった)」ということです。実際は投与群で1.22、プラセボ群で1.66増加したのですから、言い換えると投与群でも2分野で低下し、プラセボ群では3分野低下していますが。
数字だけが「有効!有効!」と独り歩きしているような気がします。
岩坪先生は「患者やその家族がレカネマブの効果を実感することは難しい。症状の進行スピードが抑えられ、『日常生活の中のいろいろなことについて、より良くできる(ではなく、できていることができ続ける。岩坪先生のお考えだと進行するが前提ですから)時間が増える』ということは、大きな意味を持つ 」といわれています。
私は使ったことはありませんが、臨床の場面ではCDRは2~3の点数評価の変化があるときに、改善や低下と理解します。

さらに続けて「投与期間について」
「レカネマブを投与していても、認知機能はゆっくり低下し、やがて中等症に至る。軽度認知症段階と比べて、残った神経細胞の数が一段と少なくなる中等症レベルまで進むと、レカネマブでAβを除去したとしても有効性が期待できにくくなる。中等症レベルになったところで、投与の見直しや別の治療への切り替えを考えることが必要になる可能性がある」
6分野すべてが、認知症の疑い(CDR=3)から、6分野すべてが中等症になる(CDR=6)という時点まで待つとして、1年半投与してもCDRが1.22進行したのならばCDR=3になるには3.7年かかるということになります。
1分野でも、CDR=0.45の変化が大きな意味を持つという解説を踏まえれば、CDR=3.5になることで方針変更の可能性も考慮すべきということになります。それには0.6年で到達します。つまり投与を始めて1.5+0.6=2.1(年)でレカネマブ投与の意味はなくなる…

私たちの主張している、脳機能からみる脳の生活習慣病としての認知症という発想からは、正常者からの予防活動も指導できるし、MCIよりもクリアに認知症の超早期段階も捕捉できるので、早期発見早期治療につなげることができるのに。と今日もまた切歯扼腕してしまいました。

by 高槻絹子


いよいよレカネマブ投与が始まりました

2024年10月16日 | エイジングライフ研究所から
ブログの更新ができませんでした。遅れるときは遊びすぎてブログが書けないという状況なのですが、今回はちょっと違います。
友人たちが「新しい薬、すごいんでしょ」とか「今度の薬は、働き方が違うので、認知症を治せるんでしょ?」とか言ってくるのです。
サラっとニュースに目を通すとこういう結論になると思います。よく読めば、「認知症が治るのではなく、進行を遅らせることができる」と具体的数字をあげて書いてあります。その数値すら私たちには懐疑的です。懐疑的というか筋が通らないのですよ。
何度も何度も、このブログの中で声をあげてきました。確かに小さな声ではありますが…

世の中の大きな流れとして、認知症は投薬で対応できるという考えが決定的になってきてしまいました。
東京都のHPには認知症抗体医薬「レカネマブ」について正しく知ろう!というサイトが立ち上がっています。関心がある方は目を通してみてください。かなり専門的な説明もありますが、わかりやすく説明しようとなさっていることがうかがえます。でも普通に動画を見てよく理解できる人は少ないのではないかと思いました。
いま東京都で、レカネマブを投薬できる病院は55病院。なおかつ、かかりつけ医の紹介状が必要な場合がほとんど。
事前のチェックでアミロイドPET 検査か腰椎穿刺が必要。CDRかMMSE検査も必須。2週間に一度通院して1時間かかる点滴で投与される。もちろん一番問題にすべき副作用の脳出血や脳浮腫のことにも言及してあって、きちんと説明されています。が、情報量が多すぎて意味を理解するところまで行ける人は少ないかもと思われます。
福祉局高齢者施策推進部在宅支援課が担当ということで、電話をかけて聞いてみました。
質問1.予防のための投薬なので、その期間は?
質問2.費用は保険適応で結局いくらかかるのか?


質問1は「1年半」予防は継続的なものだと思いますが、1年半後は予防は必要ないとでもいうことでしょうか?治験の期間が1年半ですが何か関係があるのでしょうか?本来この質問はエーザイに投げかけるべきものですが。
質問2に関しては「ごめんなさい。病院で聞いてください。事前検査で入院するところもあり、日帰りもあるらしい。そうすると金額は全くわかりません。とにかくまずかかりつけ医に相談してからです」


この費用に関しては、高額医療制度(厚労省のサイト)があるので、薬価が高い高いと喧伝されている割には個人負担は実は多くはないのです。でも問題は国全体としての経費という発想が必要ですよね。
「公的医療保険を使用しても、70歳未満で3割負担の場合は約99,000円の費用となります。 高額療養費制度を利用することにより、自己負担額は57,600円になり、4回目以降は多数回該当の制度により、上限額が44,400円となり更に負担が軽減されます。」これは医療費月額330,000円が基礎の数字です。
(事前検査などは含まれていない)
レカネマブとして検索をかけてみると、ほんとうの問題点以外はいろいろよくわかります。
AIの回答
「認知症治療薬「レカネマブ」の薬価は、1人あたり年間約298万円です。これは、200mg2mL1瓶が4万5777円、500mg5mL1瓶が11万4443円という薬価を基に算出されています。
レカネマブは、アルツハイマー病による軽度認知障害や軽度の認知症の進行を抑制する効果があります。投与には健康保険と高額療養制度が適用されます」
もう少し詳しく見ると
「薬価は200mgが4万5,777円/バイアル、500mgが11万4,443円/バイアル。用法・用量は、10mg/kgを2週間に1回、約1時間かけて点滴静注で、患者が体重50kgの場合、年間約298万円になる。(114,443円×52/2週=2,975,518円)」
体重が75kgだと、約450万円(300万円×75/50㎏)。」

どういうわけか、国の医療費全体という考え方は少なくて、結局自己負担がいくらかだけを解説してあります。もう少し当事者たる高齢者がしっかり考えるところだと、調べれば調べるほど思いました。

もっと問題は、本当にアミロイドベータが認知症の原因かどうかという議論がなされていない点です。私たちは口を酸っぱくして認知症は脳の使い方としての生活習慣病といい続けてきていますし、これからもそこはゆるぎない主張です。
今回ちょっと、アミロイドβ説が破綻しているという立場のサイトを見つけてみました。大学。専門家。臨床医など様々な立場からの発信です。黒字が結論です。

アルツハイマー病の超早期細胞死の解明と新たな治療標的を発見(東京医科歯科大学)

本研究を通じて、細胞外アミロイド凝集を最上流の原因と考えるアミロイド仮説を訂正する必要性が強く示唆されました。
責任著者がアミロイド・タンパク質形成と記憶障害との関連を示した研究論文の図が操作されていたことを認めた。

アミロイド仮説の失敗(可知記念病院、精神科ドクター)
「アルツハイマー病の原因はアミロイドβではない!」と言ってしまって良いのではないか。


声が上がっているのは事実ですが、一般の人たちに声が届いていないのもまた事実。
そんなことを考えていると、あまりにも蟷螂之斧(とうろうのおの。無力という意味です)の気持ちになってしまって、なかなか書けなかったのです。


by 高槻絹子




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夏の思い出②-チームラボプラネッツ

2024年10月05日 | 私の右脳ライフ
韓国からの「娘」一家を、前から体験させたかったチームラボプラネッツへ連れて行きました。
何度か勧めたのですが、その魅力を伝えきれなくて実現してなかったのです。
ホテルが汐留でしたから、ゆりかもめに乗って乗り換えなしで行けるので、今回を逃す手はないなと私が一番盛り上がっていたかもわかりません。
2019年8月30日に一人で行っています。
夏の思い出ーチームラボ プラネッツ - 脳機能からみた認知症

夏の思い出ーチームラボ プラネッツ - 脳機能からみた認知症

上京のついでに、興味があったチームラボプラネッツに行ってきました。ここは…と説明がしにくい…パンフレットから引用します。「BodyImmersive」というコンセプトの超巨大な...

goo blog

 
今回読み直してみたら、初めての時の方が興味津々、記録も取らなくっちゃあと意気込んでいたように思います。
とにかくチームラボは、なかなか説明ができないのです。体験あるのみ!
3人が3人とも「来てよかった。高槻さん(私のことをそう呼びます。娘は当たり前のようにおばあちゃんですが)が行きなさいと言っていた意味がわかった」という感想でした。
写真は前回の方が雰囲気が伝わるような気がしますので、興味がある人は前の記事をご覧ください。
一緒に楽しむ人がいると、写真を撮るよりも楽しい気分で満足するところがあるみたいです。

最近の展覧会のチケットはスマホで買ってQRコードを見せるシステムが多くなりました。
ちゃんと買ったのに見つからなくてドキドキすることがあったのですが、教えてくれました。
スクリーンショットを撮っておくといい!確かに。若い人といると自然に知識が身につきます。

この入場券の背景になっている場面は、前回の時にはなかったプログラムです。2018年7月7日〜2027年末という会期が決められた展覧会ですが、進化し続けているのですね。
若い娘と一緒になって楽しみました。



私は2度目の体験ですが、でも、ちゃんと声が上がりました。



Parkさんは理系の人ですから、小声で解説してくれます。1回目よりは少し成り立ちがわかったようなところもありました」
思ったよりも狭かった。鏡や光を工夫して境界を曖昧にしているのです!
新しい展示は、生きた花に風を当てて無限に動かしています。入場人数を減らして、その自然の中に入り込むのです。身を屈めて潜り込むその方法もなんだかとってもアナログっぽくて、デジタルの行き着いた先にアナログが待っていた!とちょっと感慨深かったですよ。

向こうの世界をこちらから眺めている。
あちらの世界では歩くことも寝そべることも自由です。







目が慣れたら、一つ一つの花が大きく迫ってきました。





もう一つの新しい展示もいわば自然回帰。光と霧で別の世界に誘われる…




お台場にあったもう一つの美術館、チームラボボーダーレスが、麻布台ヒルズに移りましたから本当はそちらに行きたかったのですが、定休日。
チームラボボーダーレスの進化ぶりを確認したくて、今年の初めから狙っているのですが、誰も一緒に行こうとは言ってくれません(笑)
一人で行くのもよし、心許せる友人と行くのもまたよし。
今度はチームラボボーダーレスに行ってきます。

by 高槻絹子








夏の思い出②-チームラボプラネッツ

2024年10月04日 | 私の右脳ライフ
韓国からの「娘」一家を、前から体験させたかったチームラボプラネッツへ連れて行きました。
何度か勧めたのですが、その魅力を伝えきれなくて実現してなかったのです。
ホテルが汐留でしたから、ゆりかもめに乗って乗り換えなしで行けるので、今回を逃す手はないなと私が一番盛り上がっていたかもわかりません。
2019年8月30日に一人で行っています。
夏の思い出ーチームラボ プラネッツ - 脳機能からみた認知症

夏の思い出ーチームラボ プラネッツ - 脳機能からみた認知症

上京のついでに、興味があったチームラボプラネッツに行ってきました。ここは…と説明がしにくい…パンフレットから引用します。「BodyImmersive」というコンセプトの超巨大な...

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今回読み直してみたら、初めての時の方が興味津々、記録も取らなくっちゃあと意気込んでいたように思います。
とにかくチームラボは、なかなか説明ができないのです。体験あるのみ!
3人が3人とも「来てよかった。高槻さん(私のことをそう呼びます。娘は当たり前のようにおばあちゃんですが)が行きなさいと言っていた意味がわかった」という感想でした。
写真は前回の方が雰囲気が伝わるような気がしますので、興味がある人は前の記事をご覧ください。
一緒に楽しむ人がいると、写真を撮るよりも楽しい気分で満足するところがあるみたいです。

最近の展覧会のチケットはスマホで買ってQRコードを見せるシステムが多くなりました。
ちゃんと買ったのに見つからなくてドキドキすることがあったのですが、教えてくれました。
スクリーンショットを撮っておくといい!確かに。若い人といると自然に知識が身につきます。

この入場券の背景になっている場面は、前回の時にはなかったプログラムです。2018年7月7日〜2027年末という会期が決められた展覧会ですが、進化し続けているのですね。
若い娘と一緒になって楽しみました。
私は2度目の体験ですが、でも、ちゃんと声が上がりました。



Parkさんは理系の人ですから、小声で解説してくれます。1回目よりは少し成り立ちがわかったようなところもありました。
思ったよりも狭かった。鏡や光を工夫して境界を曖昧にしているのです!
新しい展示は、生きた花に風を当てて無限に動かしています。入場人数を減らして、その自然の中に入り込むのです。身を屈めて潜り込むその方法もなんだかとってもアナログっぽくて、デジタルの行き着いた先にアナログが待っていた!とちょっと感慨深かったですよ。

向こうの世界をこちらから眺めている。
あちらの世界では歩くことも寝そべることも自由です。







目が慣れたら、一つ一つの花が大きく迫ってきました。





もう一つの新しい展示もいわば自然回帰。光と霧で別の世界に誘われる…




お台場にあったもう一つの美術館、チームラボボーダーレスが、麻布台ヒルズに移りましたから本当はそちらに行きたかったのですが、定休日。
チームラボボーダーレスの進化ぶりを確認したくて、今年の初めから狙っているのですが、誰も一緒に行こうとは言ってくれません(笑)
一人で行くのもよし、心許せる友人と行くのもまたよし。
今度はチームラボボーダーレスに行ってきます。

by 高槻絹子








夏の思い出①ーハリーポッター

2024年09月30日 | 私の右脳ライフ
もう26年も昔の話。ソウル63ビルディング(当時韓国最大の国際会議対応のビル)で認知症予防の話をしました。もちろん日本語でいいということでしたが「せめて挨拶だけは韓国語でしよう」と思っていたところ、隣町で日本語修学中の金さんに出会いました。そこからずっと親しいお付き合いが続いています。韓国の「娘」一家は長女出産の年とこのコロナ禍で行き来ができなかった期間を除き毎年一度は「里帰り」してくれます。
今年は1週間の滞在ということでしたから、趣向を変えて「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 - メイキング・オブ・ハリー・ポッター」へ。これが元豊島園にできた新しい施設の正式名i称なのですが、長すぎですね。
ハリーポッターファンのこの一家は、もちろんロンドンにもいっています。
「東京のほうが規模が大きい!工夫されている」そうです。
荷物検査を受けてさあ入場。
ハリーポッターシリーズの初版はなんと25年前!子供はすでに社会人で十分大人だった私も手に汗を握って読みました。けれどこのスタジオツアーには私の世代の入場者は少なかった…
作りが重厚だったり繊細だったり、本で読んだシーンが目の前に繰り広げられるようでした。
見学していると写真や動画に誘われ、気がつくとホールにあまたある肖像画が私たちのものに差し代わっている。

空飛ぶホウキに乗って、インストラクターの指示どうりに動いておけば、ロンドンの空を豪快に飛んでいる動画ができあがる。

食堂!イメージ通り!

壁面には登場人物やコスチュームや小道具などが展示されています。







とにかく丁寧な作りです。



バックロットカフェ。

お楽しみのバタービール。
コスプレしてくれている人たちがいると、まさにあの世界に。





ハリーポッターといえば、ロンドン駅9と3/4ホームのホグワーツ特急。





もう一つはホグワーツ城。ライトアップで雰囲気が出ていました。

なんと5時間!十分に楽しめました。
でも、一人では行かないでしょう。世代を超えた交流って素敵ですね。











認知症新薬の解説をテレビで見ました

2024年09月17日 | 二段階方式って?
友人から電話。
「今テレビで認知症の新しい薬のことやってる!」
「うーん。又レカネマブ。か、イーライリリーの新薬の話かな」と思いつつせっかく電話をくれたので見ました。
案の定…見終わって大袈裟なようですが、ちょっと暗澹たる思いに苛まれました。
「認知症になる原因をアミロイドベータとかタウタンパクに決めつけている」

庭で初めて見つけたこの写真はpicture this によれば「ヤマノイモ」。確かにムカゴに似てるような気もします。

あの権威あるネイチャー誌から「アミロイドベータ説にデータ捏造を初め多くの疑義が生じている。検討中」という発表がなされてもう2年くらいたっていると思います。

私たちは、認知症になるかならないかは次のように考えています。
根本的な要因は、アミロイドベータやタウ蛋白ではなくて、その人の生活ぶり…つまり脳の使い方による。
元来老化していく宿命を負った脳機能の使い方が悪いと老化が加速されて行き、とどのつまりが世の中でいう認知症の状態になる。
ちょっと難しい表現を使えば、脳が廃用性機能低下を起こしてしまった結果が認知症ということです。
どんなに精緻な研究や新しい研究であっても、その前提に間違いがあったら…暗澹たる思いというのもわかっていただけるでしょうか?

塊になり始めたアミロイドベータを除去。当然より早い時期つまり若い時からの対応になります。発症が2-3年遅れるとして、じゃあいつまで投与するのでしょうか?
それ以前に、投与してアミロイドベータを除去し続けていても、2-3年しか持たないというのはどういうことなのでしょうか?どうしようもなくたまるということでしょうか?

「レカネマブは認知機能低下を2-3年遅らせる」とありますが、発表時には1.5年後にCDRで比較したら27%効果があったという内容でした。
実はこの件について、このブログで疑義を表明しています。
もう一度まとめて見ましょう。
「27%の進行抑制:CDRで偽薬群1.66低下。投与群1.21低下。その数値をこのように計算します。
(1.66-1.21)=0.45/1.66×100≒27
これが27%の進行抑制ができたという発表の根拠です。
注目すべきは投与群でも悪化している点と、もう一点、今回の統計処理は個人内での変化ではなく集団的に処理していることです。
さらに、CDRは観察による評価なのでバイヤスがかかってしまうのに、数値で表すので客観的な印象がある点です。
CDRは、生活を「記憶」「見当識」「判断力 問題解決」「社会適応」「家庭状況 興味関心」「介護状況」の6分野から観察して5段階に評価するものです。5段階は「健康(CDR0)」、「認知症疑い(CDR0.5)」、「軽度認知症(CDR1)」、「中等度認知症(CDR2)」、「重度認知症(CDR3)」。
まったく何の問題もない正常な場合は0点、最重度は18点
ただし数値化されていても「誰かが評価したもの」ですが。
0.45の改善というのは、つまりどの分野で見ても1段階の改善もない。ということなのです。
もともと1~2点の変化で初めて臨床的意義があるとされています。
以上が進行抑制に関する、私からの丁寧な疑問です。

次の画面は早期発見のために必要な検査のことです。
上にあげた私のブログでも、PETは高価。腰椎穿刺による検査は負担が大きい(痛い)。と解説してありますが、テレビから流れるコメンテーターの声を聞いてちょっと耳を疑いました。
「高いと言っても7万円ですから、得られる利益とのバランスですよね。それに結局は高額医療費で戻ってきますから」と言う発言!
個人負担が3割で7万円ということは、一回のPET検査にかかる医療費は23万円できかないということです。それを年に2回実施します。7万円にしろ0円にしろ、個人負担がいくらであれ、かかった医療費は間違いなく医療機関に支払われます。その老人医療費が増大して大きな問題になっていることをこんなに簡単にスルーしていいのでしょうか?ついでに言えば介護費用だけでも23年度予算で13.5兆円になっています…マスコミはどんな姿勢で国民に向かうつもりなのでしょうか?

次のテーマは、認知症を早期の段階で見つける方法として、高価なPET検査や痛みのある腰椎穿刺でなく血液検査があるという話に移りました。
以下は島津製作所のHPからの抜粋です。
島津製作所と国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(長寿研)が共同して、血液数滴からアミロイドβの蓄積量を推定するのに有効なバイオマーカーを発見しました。
血液数滴でチェックできると聞けば、誰でも朗報と思います。
でも大問題があります。
この研究の前提は「認知症の原因はアミロイドベータの蓄積があるということ」ですね。ネイチャーが「研究結果の数値に改ざんがある」と調査中。元々仮説として発表されたアミロイドベータ仮説が否定されるかもしれない状態なのですよ…
本当に専門家たちはどこに行こうとしているのでしょうか?

今回の番組では東大の岩坪教授が解説されていましたし、言及されませんでしたが、島津製作所の血液マーカーの研究は、田中耕一さん、ノーベル賞受賞者のあの田中耕一さんがトップとしての研究成果です。(2年くらい前に一般の人たちにも報道されました)

いうわけで、せっかくの友人のお知らせも予想通りの、明るい展望につながるものではありませんでした。

by 高槻絹子








夏の挑戦③ー負うた子と遊ぶ

2024年09月12日 | 私の右脳ライフ
北九州市の戸畑高校天籟同窓会関東支部の会長をした時に、本部同窓会事務局をやってくださっていてお近づきになったT田T子さんとは21歳の歳の差を物ともせず、ずっと付き合いが続いています。
彼女が9月11日の誕生日記念に北九州から東京まで歌舞伎観劇に行くというプランに、誘ってくれました!行きますとも!
若い人たちは、こんな写真を撮ります!勉強させてもらっちゃった(笑)

観劇の前日に上京なのです。いろいろ案を並べての結論「毛利先輩の毛利バーグランに行きたい」
オッケー!

高校同級生の毛利さんは世界的なバーテンダーとして知る人ぞ知るレジェンドです。銀座シックスの裏で12時からオープンですから行きやすいのです。誕生日の祝杯は毛利バーグランで。

グラスホッパー、プリンセスルビー、有名な毛利マテーニ、コーラ。 4杯あるのは、彼女のお母さんと娘さんと私の4人の女子会だったからです。

ランチは道を隔てた筑紫樓。
おしゃれな雰囲気。「今まで食べた杏仁豆腐でベスト!」との評価あり。

ついでに夕食の記録も。若者推薦のモンスーンカフェお台場





あまりにも心地良い接客に、老若混成の女子会から賛辞を送ったら破顔一笑のモンスーンカフェお台場のY澤マネージャー。(掲載許可済み)

長崎五島の出身とのことで、九州人としての熱い連帯感で盛り上がり、再会を約しました。あ、お料理もおいしくお値段もとてもとてもリーズナブルでした。

一夜明けてさあいよいよ最大目的の歌舞伎鑑賞。
彼女のご贔屓の成駒屋三兄弟、中村橋之助、福之助、歌之助による「第二回神谷町小歌舞伎」
「小」とあるように若手の研鑽発表の場ですね。若者らしいアイディアもそこここに見つかりました。歌舞伎のチラシの役者がスーツ姿!

「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょう くるわにっき)」
遊女の身請けに絡んで、力士同士の意地をかけた一歩も引かぬやりとりがメインテーマということですが、人気力士濡髪長五郎の登場の場面が強く心に残りました。歌舞伎の伝統的様式美に則ったものを表現しようとしていることが伝わってきたからです。
「一本刀土俵入」
筋はなぜか知っていました。舞台が終わった時、二人顔を見合わせて「涙が出たね…」
歌舞伎はどこか大袈裟な演技という感じが否めないのに、感情に深く切り込む力もあるのですね。
三兄弟の母、三田寛子。父は不倫騒動で悪名高い中村芝翫。パンフレットによれば長男橋之助の尊敬する人の中に芝翫の名前を発見。芸道上ということなのでしょうね…

歌舞伎座などに比べて、舞台変換に手間取るところが手作りぽくて、若手俳優挑戦のしかも2回目の舞台とうまくシンクロしてるなと好感を持ってみていましたが、はたと気づきました。回り舞台の装置がない!
一番最後の場面、ヒロインお蔦の住まいが家の中から、満開の桜が咲く家の外に変わるのですが、その時だけ照明を落とした場面変換がありました。黒子が押しているのが見えました。
歌舞伎が庶民に受け入れられるためには、今回の「小」公演のように、様々な工夫がなされたのだろうと思いました。会場が浅草公会堂。その場所を活かす姿勢を感じたことでした。
花道が設置されていて、とてもよく使われていました。ちょうど良い場所の席で表情や衣装の細かいところまで見ることができました。

帰宅して少しチェックしてみたら、回り舞台がある古い芝居小屋のサイト発見。
江戸期からの小屋もあり、おおきな大衆のニーズが「芝居を見るということ」にあったことにちょっと感動しました。歴史話では手に汗を握り、人情話では感情をシンクロさせたに違いない。その力が歌舞伎にあるので、大掛かりな舞台装置を備える力につながったのだろう…
こんな思いがけない感想まで湧いてきました。
ひとえにT田T子さんの、歌舞伎愛が導いてくれた結果です。

東銀座で出会って、翌日浅草で別れるまで、26時間一緒にいたのです。本当に楽しくあっという間に過ぎた時間ですが、思い出してみるとあまりにも楽しい時間の連続でたった26時間という短さが納得できないほどです。
そうなのです!楽しい時はあっという間に過ぎ、その時間違いなく脳は活性化されています。思い出す時、あふれるようにエピソードが連なって出てきます。
認知症を予防するには「変化ある楽しい時間を過ごすこと」とお話しする通りだと実感しました。

「お誕生日おめでとうございます。一緒に満喫させてもらいました」

by 高槻絹子






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