このブログでは、認知症治療薬に対しては懐疑的というよりも否定的な投稿を続けてきました。
対象はエーザイがアリセプトの特許切れの後に発表したアデュカムマブや最近のレカネマブでした。
ヤマボウシ
対象はエーザイがアリセプトの特許切れの後に発表したアデュカムマブや最近のレカネマブでした。
ヤマボウシ
ところが10月25日のニュースで「英医薬品・医療製品(MHRA)は、23日米イーライリリー社の早期アルツハイマー病治療薬ドナネマブを承認した」と知りました。「ブルータスお前もか!」と思いながら続けて読むと「英国の国立医療技術評価機構(NICE)は、患者の利益が比較的小さく費用に見合わないとして、公的医療制度での使用に否定的な勧告案を示した」
「おやま。またまたブルータスお前もか!」副作用だけでなく、効果そのものも疑問視されていることと、あまりにも高価という点は、いち早く認可したアメリカでも指摘されています。
レカネマブとドナネマブの違いについては国立長寿医療研究センターの記事に詳しい解説があります。
アルツハイマー病の新しい治療薬(中編)ドナベマム
アルツハイマー病の新しい治療薬(中編)ドナベマム
~マブという舌を噛みそうな薬名についてもちょっと解説しておきます。
アミロイドβのような特定のたんぱく質に対する抗体を作って、そのたんぱく質を排除する薬を抗体医薬といいますが、その薬の末尾は~mab(マブ)という表現をされます。すべてこの種の薬は高価なのです。
1999年に初めてこの種の薬がアミロイドβ排除に有用だとわかり、一斉に研究が進みましたが、残念なことに髄膜炎という重篤な副作用が見つかりあえなく中止。
さらに大手製薬会社で新薬の研究にしのぎが削られたのですが、次に出てきた結論は「アミロイドβを排出させることはできるが、認知機能は改善しない」。
ファイザー社はバピネウズマブ、イーライリリー社はソラネズマブ、ロシュ社はガンテネレマブ。(~マブのオンパレードでしょ?)全部が撤退…
ファイザー社はバピネウズマブ、イーライリリー社はソラネズマブ、ロシュ社はガンテネレマブ。(~マブのオンパレードでしょ?)全部が撤退…
フジバカマが咲きましたがアサギマダラは来ません。
皆さんは記憶にありますか?
今はエーザイのレカネマブが脚光を浴びていますが、ちょっと前は同じエーザイのアデュカヌマブがさっそうと登場したのです。
「今までのアリセプトはいわば対症療法だったが、アプローチが根本的に違う画期的な認知症にさせない薬(ではなく遅らせるですが)」という触れ込みだったはず。
「今までのアリセプトはいわば対症療法だったが、アプローチが根本的に違う画期的な認知症にさせない薬(ではなく遅らせるですが)」という触れ込みだったはず。
このアデュカムマブは、米食品医薬品局(FDA)に2020年7月申請。2021年6月に条件付き承認されました。ところがFDAの下部組織の末梢・中枢神経系薬物諮問委員会がほとんど全否定、反対の委員が職を辞すというドラマチックな展開になりました。
日本では2020年12月厚労省に申請。2021年12月に継続審議。承認見送りという経過になっています。
この顚末に対する株価の変動を見てください。株価は正直です。
シロバナフジバカマ
アデュカヌマブはひっそりと表舞台から消えさって、次なる役者はレカネマブ。
アデュカヌマブはアミロイドβがある程度固まったものに対して抗体が働きかけて、固まりを排出する仕組みです。
それに対してレカネマブは、アミロイドβが固まる前に排出させることができるのが最も違う点です。だからより早期が対象。アミロイドβが溜まっていないことをアミロイドPETか脳脊髄液検査で確認する必要があるのです。
どうもレカネマブの方が有効っぽい印象が強いでしょう?
ちなみに、アデュカヌマブもレカネマブもエーザイとバイオジェン社の共同開発です。
ハイビスカスローゼル(ハイビスカス茶)
何度もこのブログで言っているように、認知症発症の原因がアミロイドβならば、創薬開発も意味があると思いますが、エイジングライフ研究所の主張は全く違います。
脳には正常な老化がある、それを器質的に見れば、アミロイドβによる老人斑もできるでしょうし(加齢とともに顔にもシミができます)アミロイドβに疑問を持つ人たちは神経原線維変化が犯人ではないかというのですが、神経原線維変化も増えてくるでしょう。
そういう加齢とともに目で見える形で起きてくる変化ではなく(従来は死後剖検。最近ではアミロイドの量は血液で測定できるようになってきています)、機能的に見直してみると、正常老化の道筋をたどっている人たちの脳の働きと認知症になっていく人たちの脳の働きはできなくなる機能に差があります。
繰り返しますが、それは器質とは無関係です。
老人班があっても、萎縮があっても脳の機能が万全な人がいます。
きれいな脳をしていても働きが悪い人もいます。
きれいな脳をしていても働きが悪い人もいます。
その差を生むのは、脳の使い方です。イキイキとその人らしく生きているかどうか、楽しい変化のある暮らしぶりをしているかどうかが認知症になるかならないかのカギだと私たちは思っています。
2021年6月に書いた記事をコピーしておきます。
「ナンスタディ」という有名な 研究があります。これは1986年に始まったノートルダム教育女子修道会 の75歳以上のシスター(678名)の追跡調査で す。現在も継続中。
<1>修道院に保管されている修道女の個人記録や利用記録を提供すること
<2>年1回、身体能力と精神能力の詳しい検査を受けること
<3>死後、脳を取り出して解剖すること
ここからいくつもの仰天させられる情報が飛び出してきました。
解剖結果からアルツハイマー変化と表現される、老人斑、神経原繊維変化、萎縮。それに脳の重さが記録されました。本にまとめられた時点で300例を超えていたそうです。
「100歳の美しい脳」デヴィット・スノウドン著
「ナンスタディ」という有名な 研究があります。これは1986年に始まったノートルダム教育女子修道会 の75歳以上のシスター(678名)の追跡調査で す。現在も継続中。
<1>修道院に保管されている修道女の個人記録や利用記録を提供すること
<2>年1回、身体能力と精神能力の詳しい検査を受けること
<3>死後、脳を取り出して解剖すること
ここからいくつもの仰天させられる情報が飛び出してきました。
解剖結果からアルツハイマー変化と表現される、老人斑、神経原繊維変化、萎縮。それに脳の重さが記録されました。本にまとめられた時点で300例を超えていたそうです。
「100歳の美しい脳」デヴィット・スノウドン著
*アルツハイマー変化は脳重量・萎縮の状態・アミロイドβ沈着状態からみます。
*ステージというのがアミロイドβが沈着している状態です。0が最小、増えるとともに数値があがっていきます。
*青欄は状態が良好、赤欄は状態がよくないことを表しています。
82歳の例のようにアルツハイマー変化がほとんどなく、絶対ボケてるはずがない脳を持ちつつ、重度の認知症をきたした例。91歳と?歳の例のようにアルツハイマー変化が大きくても、全く認知症がない例。さらに100歳という超高齢でありながらアルツハイマー変化がなく、認知症状も皆無であった例。
*ステージというのがアミロイドβが沈着している状態です。0が最小、増えるとともに数値があがっていきます。
*青欄は状態が良好、赤欄は状態がよくないことを表しています。
82歳の例のようにアルツハイマー変化がほとんどなく、絶対ボケてるはずがない脳を持ちつつ、重度の認知症をきたした例。91歳と?歳の例のようにアルツハイマー変化が大きくても、全く認知症がない例。さらに100歳という超高齢でありながらアルツハイマー変化がなく、認知症状も皆無であった例。
これは実証研究ですが、どう考えますか?
脳のアルツハイマー変化と認知症の発症には関係がないということにならないでしょうか?
少なくとも一直線に、アミロイドβが認知症の原因とはいいがたい。
脳のアルツハイマー変化と認知症の発症には関係がないということにならないでしょうか?
少なくとも一直線に、アミロイドβが認知症の原因とはいいがたい。
ちなみにもうひとつ。2022年6月に発表されました。「サイエンス」は世界最高峰の科学雑誌です。
「Science」は、2006年に発表され、その後のアルツハイマー病の研究に大きな影響(アミロイドβ原因説。引用論文は2200報!)を与えた論文に、改竄された内容が含まれている可能性があるという調査結果を発表した。
認知症の原因究明からいうと、天地がひっくり返るような発表に思えますが、おおきなニュースになってないのはなぜでしょうか?
どうして専門家たちはいまだにアミロイド説から自由になれないのでしょうか?
by 高槻絹子
参考にしたサイトです。
国立長寿医療研究センターの記事は、専門的すぎますが、知識欲は満たしてくれます。歴史的な経過などはよくわかります。残念ながらアミロイド原因説に乗っかった上での解説です。
認知症の新しい治療薬アデュカヌマブ(5編あります)