NHKが沈む中間層という特集番組でこの30年間停滞した日本経済を分析した。先週の日曜日の放送ではいくつかのデーターでその実態を浮き彫りにした。
先ずNHKは、政府系の研究機関「労働政策研究・研修機構」と共同で、ことし7月から8月にかけて全国の20代から60代の男女を対象にインターネットで調査を行い5370人から回答を得てまず、「イメージする“中流の暮らし”」について複数回答で聞いたところ、回答者のおよそ6割が「正社員」、「持ち家」、「自家用車」などを挙げた。
全世帯所得の分布を見ると、中央値は1994年に505万円だったのに対し、2019年は374万円へ実に131万円も減少し、まさに「失われた30年」といえる。どんどん所得が低下し、人々の暮らしが豊かになっていかない。NHKではこの中央値が低下した状況を「沈む中間層」と表現した。
そして以前は「一億総中流」と呼ばれ、経済成長を支えた中間層が危機を迎え、大きく崩れつつあると指摘した。
もう一つの可処分所得データでは第一生命経済研究所 星野卓也主任エコノミストによると、
可処分所得については、さまざまなデータがあるが、かつての日本のモデル的な家庭として「40代男性で妻が専業主婦、小学生の子ども2人」という世帯においては、1990年が576万円だったのが、2020年に463万円となり、年間113万円余り減少した。このデータでも沈む中間層が実証されている。
放送ではモデル的な家庭が取材され、賃金の低下で住宅ローンが払われずせっかく手に入れたマンションを手放せざるを得ない家庭が出された。
どうしてこうなったのか?政治、財界、労働界各分野における責任だ。政治はアベノミクスがトリクルダウンなどとわけのわからない言葉を使い企業が利益を出せば賃金が上がると唱えた。企業は内部留保を貯め込んで分配しなかったので、トリクルダウンは起きなかった。労働組合は力不足でストもできず実質賃金は下がり続けた。
欧米ではインフレに対応すべく、労働組合はストを背景に賃上げを要求しており、米国の鉄道組合では労働時間の短縮を含めバイデン大統領の仲介で賃上げが実現している。
岸田政権の課題は多いが、経済立て直しには中間層の底上げが最大課題だ。