アーク・フィールドブック

四万十フィールドガイド・ARK(アーク)のブログ

ココロも温める音

2024-10-02 | ・最新のお知らせ・イベントなど

「ココロも温める音」2005年に書いた旅雑文です。期間限定公開中。

 最高気温27度。

 10月の夜空に、まあるい月がぽっかりと浮かんでいます。

月光に蒼白く沈む庭から聞こえてくるのは、秋の虫の合唱。

今宵は、ベランダで焼酎片手に月見&月光浴です。

 

 少し冷えてきた空気の中、お湯割りショーチュー用の湯をわかす。

「家庭用ガスコンロで湯をわかすのは、なんだか味気ないなぁ・・・」

そう思った僕は、キャンプ用の小型ガソリンストーブを引っ張りだした。

シュコ、シュコ、シュコ。ポンピングし、燃料タンクに圧力をかけ、火力調節レバーをまわしライターで点火。

シュッー、ボッ!シュゴォーッー。強い火力で、すぐにお湯がわきはじめる。

夜の静かさの中に、シュゴォーッとストーブの低い燃焼音がひびく。

ストーブの火を止める、とあたりはふたたび静かさにつつまれた。

ストーブの燃焼音は、火を使える(温かな食事、飲み物にありつける)という安心感をもたらしてくれる。

「山、川、海、荒野」

自然のフィールドをひとり旅する時、その音に何度もココロも温められたものです。

 

 わおっ!!すげっ!!はぁーっ・・・。

夜空にかがやく無数の星、ほし、ホシ、☆・・・。

それは、お湯割りウイスキーを片手に、テントの外に出た時のデキゴト。

荒野にマットを敷き、ごろり寝ころんで、すばらしい天体ショーをボーゼンとながめた。

そこは「アウトバック」と呼ばれるオーストラリアの内陸荒野。

 

 ある時僕は、どでかい空と赤茶けた荒野の熱風大陸を、オフロードバイクで気ままに一人旅をしていた。

その日も足元の悪路(ガレ場や深い砂場のミックス)に苦戦し、

時速30~40キロの低速で慎重にバイクを走らせていた。全神経を集中し、体力をフルに使って。

日が地平線に沈むまえ、その日の走行をやめてテントを設営することにした。

バイクのエンジンを止めれば、ピュゥー・・・聞こえてくるのは、強い風が荒野をわたる音だけ。

見わたす限りの大地には、樹木はおろか潅木すらなく、風をさえぎる物がナニもない。

へろへろにくたびれたカラダで、しばらくボンヤリと風に吹かれた。

 

 地平線に日が落ち、急速に暗くなるにつれ、気温がずんずんと下がっていった。

ビユゥーウウッーッ、バタバタバタッ。

強い風にホンロウされながらも、なんとかテントを立てるが、風に吹きとばされそうだ。

荷物をテントの中にほうりこみ、バイクとテントをロープで結びつけた。これでまぁ、大丈夫だろう。

テントの中に入り、荷物を片付け、そして入口のすぐ外においたストーブに点火。

シュゴォーッ、ストーブから威勢よく炎があがる。

その青白い火と低い燃焼音は、なんともたのもしく、気持を落ちつかせてくれた。

 

 お湯をわかし、ソーセージ入りのインスタントラーメンを作り、緑茶をいれた。ふうっ・・・。

食事をすませ、ようやく人心地つくと、右足首がジンジンとひどく痛むことに気がついた。

日中、コケた時、足首がバイクの下敷きになってしまったのだ。

全身は赤土まみれ、頭をかくと、砂が頭からポロポロと落ちてきた。

 

 しばらくすると、風がおとなしくなった。

お湯割りウイスキーを片手に、テントの外にでると、そこは満天の星の劇場だ。

荒野にマットを敷き、寝ころび、星をながめつつお湯割りウイスキーを飲む。ぽっと胃に火がともる。

もう一杯だけ・・・。ふたたびストーブでお湯をわかした。

冷えてきたので、枕にしてたシュラフを袋からとりだし、もぞもぞとその中に包まった。

「このまま外で寝ちゃまずいかもな・・・」

そう思いつつも、まぁいっか、と2杯目のウイスキーを飲み終えるころには、Zzz、すでに夢の中。

 

 ビユゥー、バタバタバタッ。「おおっ、さみーっ!!」

未明、吹きわたる冷たい風にたたき起こされた。ストーブを点火して湯をわかした。

シュゴォーッ、ストーブの炎と低い燃焼音が、ココロも温めてくれる。

熱いお茶を飲みながら考えた。この痛む足で明日はどこまでいけるかな、と。



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