「初冬の山から晩秋の川まで」レターフロムS19再掲です
「ハァッ、ハァッ・・・フゥーッ」
荒い息を吐きながら、高度差約150メーターの急な斜面をゆっくりと登っていく。
三本杭山の頂上は、もうすぐそこ。
急斜を登りきると、それまで頭上をおおっていた木々がなくなり、ゆるやかな起伏の広々とした場所に出た。
そこは、三本のたるみと呼ばれる鞍部。登山道の分岐。
左手にちょこんと三本杭の頂上が見える。あと5分ほどか。
もう一方の道は、御祝山を経て、滑床渓谷へ抜けるルート(所要2時間30分)。
クマザサとアセビのあいだを歩き 、三本杭の頂上へ。標高1226メーター。
ヒュウ―!突きぬけるような青空の下、スルドク頬に冷たい北風が僕をむかえてくれた。
おだやかに晴れた11月20日。
紅葉の黒尊渓谷&冬芽の黒尊山塊、三本杭山(滑床山)を歩いてきました。
黒尊スーパー林道(全面舗装 落石おおし)八面山登山口に車をおき、入山。
大久保山、八面山(1165メーター)、熊のコルを経て三本杭の頂上へ。所要、約1時間30分。
三本杭山が遠くに見える
熊のコル 冬芽の尾根をゆく
分岐 もうすぐ頂上
三本杭山頂上
西は、鈍く光っている宇和海。南と東は、土佐の山並み。北は、伊予の山並み。
頂上からぐるり360度開けたながめがスバラシイ。うーん、イイキブン。
冷たい北風をさけ、南東の斜面に腰をおろし、黒尊川源流の水で茶をいれ、おにぎりをほうばった。
頂上には僕のほかに5~6組の登山者のすがたがみえる。
尾根のブナ、カエデ、ミズナラの落葉樹達は、すでにその葉を落とし冬芽で遠い春を待っている。
ヒュウ―!ときおり突風が吹きぬけてゆく。ほほや耳に染みる風の冷たさに冬のおとずれを感じた。
♪フン、フン、フン♪
頂上をあとにした僕は、鼻歌を歌いながら冬枯れの尾根を歩く。
歌は「もりのくまさん」。今年は、日本のあちこちで熊が里に出没し問題になっている。
でも、このあたりの山には、もう熊(ツキノワグマ)はいない。ザンネン!
鯨は、豊かな海のシンボル。熊は、豊かな森のシンボル。
下山し黒尊渓谷へ。渓谷には紅葉を見にきた人達のすがたがチラホラとあった。
今年は例年にくらべて、色付いた葉がすくなくイマイチ派手さがない(台風で散った)。
木の実などの堅果類も全体的にすくないようだ(これも台風で落ちた)。
ボンヤリと紅葉をながめていると、何故かおばちゃんにつかまってしまった。
僕はおばちゃんに、このあたりの植生や自然について話す。それは、なかなか楽しいヒトトキでした。
黒尊渓谷
カヌー(カナディアン)の船首を白波に突っこんだ。
ザブン、ザブン!船体が大きく上下にゆれ、船内に水飛沫が飛んでくる。
汗ばんだカラダが一気に冷えてゆく。イヤッホー!気持ちよさに思わず声をあげた。
岩などの障害物にぶつからぬよう、パドルでしっかり舵をとり、瀬を下ってゆく。
流れのゆるやかなとろ場に出た。缶ビールを取りだした。ムフフ・・・。
プシュー!ウメーッ!
カヌーの上で仰向けになった僕は、蒼い空と地味な紅葉に染まる山をながめながらビールを飲んだ。
透明度高し
11月おわりの四万十川。晴天。北西のゆるい風。気温17度。
あまり服を着こんでいないけど、陽のあたる水面を漕いでるとカラダが汗ばんでくる。
日陰に入る、とヒンヤリした風が心地良い。川面の水温14度。あまり沈はしたくない水温だ。
減水期の川の水量は少なく、水位は、春~夏の平均的な水位よりも約1メーターほど下がっている。
浅瀬が増え、ところどころでゴツゴツとカヌーの底をこすってしまう。
水の透明度は高く、約5メーター下の川底がみえる。
水温が下がる秋~冬の川は、微生物の活動がにぶくなる。それが水の透明度が高くなる要因のひとつ。
瀬に突入、入り口の浅いところは、水がないように錯覚してしまうほど透きとおっている。
まるでカヌーで空を飛んでるかのよう・・・わおっ、空飛ぶカヌーだ!(ちょっとおおげさですね)。
冬は苦手です
キャラ キャラ!(モヒカンヘッドの)ヤマセミが水面すれすれを滑るように飛んでいった。
警戒心が強く、おもに支流に生息するヤマセミを本流で見るのはひさしぶり。
カメラをかまえ、そーっと近づいてみるが、もう少しで撮れそうなところで前方に逃げられた。
再び、そーっと寄っていくが、また前方に。晩秋の川でヤマセミとおいかけっこだ。
ブルブル、カワガラスが尾っぽを、ふるわせたあと、水の中に潜っていった。
昼間でもヤカン
「秋の日はつるべ落とし」。秋の川は、陽が山にしずむのがとてもはやい。
ヒンヤリした空気の薄明の川原で、火をおこした。
先日の大水のおかげで、川原には流木がたくさんある。
川原に腰をおろした僕は、焚き火料理をつまみに、栗焼酎のお湯割りを飲んだ。
やがて、東の空から大きな丸い月が昇ってきた。月昇る川。
まるで今、流域で熟れているブンタンのような色と形の月。この月を「ざぼんの月」と呼ぶのかな?
そろそろ(秋の透明度よい川と自然を楽しめる)カヌー&焚き火キャンプのベストシーズンも終了~。
12月に入ると、川は冷たい北風が(木枯らしが)ビュウビュウと吹きはじめます。
冬でも、ひとたびカヌーでくだれば、冬の川にしかない風、水、景色が楽しめますが。
では。