あれはまだ私が高校生の時の出来事でした。
当時、エンジンに興味があったため、私はエンジンに関する書物を読みあさっていました。
そんなある日、いつのもようにエンジンに関する書物を読んでいる私を見て、私の父親は一言つぶやきました。
「本を読むのもええけど、やっぱり実物を見んと話にならんで…」。
私はそれならばと、実際にバイク屋から壊れたバイクをもらってきてバラしに入ったのですが…。しかし、錆び付いたボルトがはずせなかったのです。ブレーキパッドのはずし方、バルブのコッターピンのはずし方…。本を読んで知っていたつもりになっていたのですが、実際には出来なかったのです。
このとき、私は父親がつぶやいた一言の意味の大きさに気がつきました。
いくら知識があっても、実際に出来なければ何の役にも立たないのです。
それ以後、私はそれを教訓に、何でも実際に試して体験していくことを大切にしてきました。
実は、弊社のEXEの意味は、EXECUTEつまり「実行」の意味で、理屈ばかり言っているのではなく、何でもまず試して結果を見てみるという意味です。
私はこれをモットーに、何でも実験してみました。
いまのハーネスに問題があるなら、違う観点から違うアイデアを生み出していく必要があるわけであり、それには思いついたものを何でも試してみなければいけないのです。
そんな多くの実験の中で、ハーネスはどんどん進化していきました。
これは弊社だけではなく、他のメーカーさんもまったく同じことを繰り返して現在に至っていると思います。
しかし、そんなハーネスの進化に対して新しい問題を感じるようになりました。
それは、機材やグライダーの進化に対して、ユーザー側がそれらの情報を知る手立てがなく、誤った扱い方をする例が増え始めたことです。
この問題を解決すべく、私はしばらく最新のハーネスのことについて、その扱い方はもちろん、なぜそのような構造、機構になっているのか、そして、それらをどのように扱えばその性能を引き出すことが出来るのか。そんなことを連載してみることにしました。
次回からしばらくお付き合いください。