長年愛用してきた、弊社のセール縫製専用のステージャーミシン。
このステージャーミシンは、私が引き継いで愛用し始めてから早20年。
実はその前は、かつて日本に存在したハンググライダーメーカー「ファルフォーク」の機体のセールを縫い続け、最終的には日本のハンググライダー史上最高の傑作機と言われた「エクセル」のセール専用に使い続けられた由緒あるミシンでもあります。
わけあってこのミシンは私が引き継ぐことになりましたが、延べで約40年ほど使い続けられたミシンでもあります。
このミシンが、先日突然壊れてしまいました!
ミシンの修理は何度もやっているので、とりあえずはオーバーホールに入ります。
手前のごちゃごちゃとしているリンク類をすべて外し、各部のセッティングをチェックしますがどうにも故障の原因が分からない‥。
最後の最後ままで分解したところで、ようやく原因が見つかりました!
が、それは、ミシン内のある部品がミシンの動作を邪魔しているものでした。
「このミシンの動きを邪魔している部品はなんのためにあるのだろうか?意味のない部品などこんなところに使わないはず‥。この部品の意味が分からなければ、うかつにこれを取り除けない!」そう私は判断し、ミシンの修理専門のプロに見てもらうことに決めました。
電話帳でミシンの修理業者に連絡を取るも、今では工業用ミシンを修理してもらえる業者は少なく、ようやく潮来近くの修理業者にこの修理を引き受けていただけることになりました。
ミシン屋さんの名前は「沼里ミシン」。
正直、なんの変哲もない町の小さなミシン屋さんです。
一時間かけてミシンを運び、ここのご主人に見てもらいます。
「ステージャーの両送りジグザグミシンですね!私も初めて見ました。そうそうないミシンですね。
いったい何に使っているんですか?」
店のご主人は一目でこのミシンが特殊であることを見抜き、話を続けてきます。
「ステージャージャパンは数年前に潰れましたね。ここの社長の奥さん、実はここの近所の出なんですよ!」。
そんなことを話しながら、このご主人はミシンの分解に入りました‥。が、このご主人ですら苦戦している様子‥。
私も手を貸しながら、とりあえず私が見つけた故障の原因をお話したところ、「その部品は本来そこにあってはいけないもの。何かの理由でそこに挟まってしまったのでしょう。それにしても珍しい事例ですね!故障の原因がはっきりしました」と、その問題の部品を正規の場所に戻し、無事ミシンの修理が終わりました。
私もたいていのミシンの修理は自分で行いますが、今回のような判断が難しい修理はサスガにお手上げです。
しかし、ここのご主人にとってもかなり難易度が高い修理であったはずですが、このご主人は初めてみるミシンであるのにもかかわらず、一所懸命修理してくださいました。
人は誰しも困難なことは避けたがります。
しかし、それでは自分が成長できないように思えます。
ここのご主人は、私が困っている様子から嫌がりもせずにこの困難な修理を引き受けてくれて、苦労しながらこのステージャーミシンを修理してくださいました。
私はこのような人がいるからこそ、世の中がうまくまわってくれるように思います。
沼里ミシンのご主人には本当に感謝です!
ここで修理したステージャーミシンは、私が工場に運び込んだ後、更に細かな調整を施したところ以前にもまして快調に動くようになりました!!