今日(11月3日・休)の沖縄タイムスは、1面トップで「辺野古ダム周辺掘削着手」と大きく報じた。美謝川水路変更に向けたボーリング調査が始まったという。この問題について説明したい。
美謝川の切替については10月25日のブログでも詳しく説明したが、実に多くの問題がある。
美謝川の切替のためには、名護市法定外公共物管理条例に基づき、名護市長との「協議」が必要である。今日の沖縄タイムスは、市の「許可」が必要と報じたが、同条例では、国の事業の場合は「許可」ではなく、「協議」とされている(同条第5条)。
防衛局は2014年4月11日、美謝川の切替と、辺野古ダム周辺からの土砂採取に必要な辺野古ダム上部へのベルトコンベア設置について、名護市に協議書を提出した(当初の美謝川の切替ルートは下図の「青ルート」だった)。しかし名護市は、書類の記載事項に不備があるとして、協議書をいったん取り下げた上で再提出するよう指示した。
ところが防衛局は、同年9月3日、突然、この2件の協議書を取り下げ、同日、沖縄県に設計概要変更申請を提出し、美謝川の切替ルートを「青ルート」から下図の「赤ルート」に変更するとしたのである。その理由は、「赤ルートの方が工期が短い」、「効率的かつ着実に事業を進めることができる」というものであった(2014.9.3 設計変更申請書)。
当時は、埋立を承認した仲井眞県政時代だったが、県はこの「赤ルート」は環境への影響が大きいとして難色を示した。すると防衛局は同年11月27日、美謝川の切替に関する「赤ルート」の変更申請を取り下げてしまったのである。
しかし、防衛局はその後も、「赤ルート」案に固執し続けた。沖縄県へも、「美謝川の辺野古ダム下流側の一部(約500m)については、環境保全の観点から、取り下げ後も現状のまま残す方針に変更はありません」(2014.12.1)、「美謝川下流域を現状のまま残すことを前提とした切替ルートの変更について設計概要変更承認申請を行う考えです」(2014.12.4)という回答文書を送っている。
また、第3回(2015.1.6)、第5回(2015.6.5) の環境監視等委員会でも、やはり「赤ルート」を前提とした環境対策を報告している。その後、美謝川の切替問題について新たな方針は出されていない。防衛局はあくまでも「赤ルート」を前提としていたのである。
ところが、本年4月21日、防衛局は設計概要変更申請を提出したが、そこでは美謝川の切替は当初の「青ルート」に戻っている。環境監視等委員会にはいっさい諮られていないのだ(環境監視等委員会には、本年7月28日になってやっと事後報告されている)。
そもそも、2014年の設計変更申請では、「工期が短い」、「効率的かつ着実に事業を進めることができる」として、「赤ルート」に変更するとした。今回、「青ルート」に戻すというのは、2014年の設計変更申請との矛盾をどう説明するのか?
今後、美謝川の切替について、防衛局と名護市長との協議が始まる。渡具知市長は、こうした経過を問題とし、防衛局に毅然と対応しなければならない。