11月22日、防衛局は大型コンクリートブロック(以下、「CB」)を積んだクレーン船を大浦湾に進入させた。公文書公開請求で入手した埋立本体工事の設計書では、今後、汚濁防止膜の設置のために57㌧のCBが102ケ、44㌧のCBが86ケ、12㌧のCBが48ケ投下されることとなっている(他にも係留用シンカーとして38㌧のCB 50ケ)。そのための準備が始まったのだ。
私はこの問題について、岩礁破砕許可を得ていない違法行為だとして、県が防衛局を毅然と指導するよう何回も訴えてきた(本ブログ11月21日、11月22日参照)。しかし、このままでは台風の波浪が収まり次第、防衛局はCBの投下を強行する恐れが強い。
県は、15㌧のCBについては岩礁破砕許可を出しているという見解のようだが、理解できない。昨年8月28日の埋立本体区域の岩礁破砕許可は埋立を前提としたものだから、知事が10月13日に埋立承認を取消した際、同時にこの岩礁破砕許可も取消すべきだった。しかし、知事は11月17日の記者会見で「岩礁破砕許可の取消しには至らない」と表明してしまった。そのため、防衛局は今がチャンスだと大型CBを搬入したのだ。今からでも遅くない、知事はただちに岩礁破砕許可の取消しに踏み切るべきだ。
今日の琉球新報は1面トップで防衛局が全CBを15㌧以下に変更すると報じた。防衛局は、変更により県との事前協議の必要はなく、そのままCBを投下することができるとの認識を示しているという。業者と契約した工事設計書で、57㌧、44㌧のCBを大量に投下するとしておきながら、それが問題となると全てを15㌧以下と変更する。なんというデタラメな防衛局の対応だろうか。
以下、この問題について説明する。
、
◆昨年8月の岩礁破砕許可にはCB設置は含まれていないのではないか?
県は、15㌧のCBについては岩礁破砕許可を出しているという前提に立っているが、昨年の岩礁破砕許可の書類を見ても15㌧のCBについて岩礁破砕許可があったとはとても言えない。
昨年8月28日の岩礁破砕許可には下のような施工要領図が添付されていた。汚濁防止膜を両側からチェーンで引っ張り海底のブロックに固定している図面だ。そこでは、CBの寸法が2.5×2.5×1.0とされているだけで、重量や個数、設置箇所については全く記載がない(この寸法にコンクリートの比重を掛けて重量が15㌧と推測されるだけである。)。これで15㌧のCBについて岩礁破砕許可を出したというのであろうか?
また、「岩礁破砕の行為に係る面積及び容積」という図面がある。汚濁防止膜のおよその位置は図示されているが、左側の「岩礁破砕の行為に係る面積、容積」には、汚濁防止膜、CBは全く記載されていない。CBは岩礁破砕許可には含まれていないと解釈せざるを得ない。
(57㌧のCB 102ケ、44㌧のCB 86ケ、12㌧のCB 48ケの底面積は2556㎡にもなる。「岩礁破砕の行為に係る面積」の表は、「西側進入灯杭 34㎡」、「燃料桟橋等杭 79㎡」などの細かいものの記載されているのだから、CBは岩礁破砕許可には入っていないと見なさざるを得ない。)
当時は、仲井真県政の時代だった。このような杜撰な内容にもかかわらず、15㌧のCBについて岩礁破砕許可を出したというのなら、審査の過程に瑕疵があったと言わざるを得ないだろう。
◆当初の57㌧の計画が何故、15㌧に変更されたのか?
また、問題が大きくなった途端、防衛局は、57㌧や44㌧のブロックを全て15㌧以下に変更したので、県との協議の必要はないと主張しているという。これほど人を馬鹿にした話はない。
今後設置される汚濁防止膜は、海中に深さ7mものカーテン部分がついている。そのため、波の抵抗を大きく受けることから、57㌧や44㌧という大きなCBが必要とされていたはずだ。現在、施工区域周辺に張り巡らせているフロートを固定するためには45㌧や20㌧等のCBが使われている。汚濁防止膜の固定のためには、フロートを固定するよりはるかに大きい力が必要となることから、15㌧以下のCBへの変更など有り得ない。
私は26日、防衛局に対して、当初の57㌧や44㌧のCBを必要とした計算書、そしてそれを15㌧以下に変更するとした根拠となる計算書の公文書公開請求を行なった。防衛局はいったいどのような説明をするだろうか?
◆CBの投下を阻止するためには、岩礁破砕許可そのものの取消しを!
県は11月25日、防衛局に対して「①CBの使用目的、②CBの寸法、重量及び個数、③CBの設置位置図及びその個々の座標、④今回の設置計画について、上記申請書等に関連する記載がある場合、その記載内容との整合性に関する貴局の見解」について質問し、「このような大重量の構造物設置行為は、県漁業調整規則第39条に規定される岩礁破砕行為に該当する可能性が高いと判断されますので、本件の確認ができるまでの間、当該CBを海域へ設置されないよう、申し添えます」と指示した。
県は12月1日までの回答を求めているが、現状では台風の波浪が収まり次第、防衛局はCBの設置を強行する恐れが強い。それを阻止するためには、昨年8月の岩礁破砕許可そのものを取消す以外にはない。その場合、政府は再度、行政不服審査請求、執行停止を行うだろうが、それを恐れては何もできない。国が「私人」と称して行政不服審査法を使うことに対する批判はますます高まっている。「文書で投下しないよう指示したが、防衛局は設置を強行した。誠に遺憾だ」では済まされない。県の毅然とした対応が望まれる。