地方では美味しく食べさせてくれる店がない、どうしても東京でなければ、という食べ物がある。
寿司、焼き鳥、うなぎ、蕎麦・・・特にうなぎ。
天然ものだから、養殖だから、といったことではない。
店主のこころ心構え、伝統、職人技、店を支える客、そんな文化が一体となってうなぎの味を支えているからだろう。
うなぎが好きで東京にいた頃は美味しいと言われる店を訪ね歩いた。
明神下神田川、竹葉亭本店、麹町秋本、飯田橋石ばし、野田岩・・・
数年前、TVで観たプロフェッショナル・仕事の流儀、
野田岩のご主人、金本兼治郎氏のうなぎ職人として仕事に立ち向かう真摯な姿勢に感銘を受けたものだった。
今日は知人から送っていただいたその野田岩のうなぎを食した。添えるものは菜園から木の芽、香の物、お酒、シンプルにうなぎを味わう。
レトルトではあるがさすが野田岩、自宅で野田岩の美味しさが味わえるとは信じられない。(写真が下手でうなぎの照りを捉えられない)
裂き3年、串刺し3年、蒸し、焼き一生、職人がいかに焦げ目なく飴色に焼き上げることに心血を注いでいるかが解る。
とろり溶けてしまうふっくらとした柔らかさ、口中にうなぎの旨さ、香りが広がる。何年ぶりだろうか、美味しいうなぎを食すのは・・・感謝、感謝。
ああ、黒塀の門をくぐり、広々とした座敷に座り込み、庭を眺めながら焼き上がりを待つ時間、ゆっくり酒を飲む、
明神下神田川でゆっくりうなぎを、酒を、そんな贅沢をしてみたい、と思う。
そうだ、今夜は桂文楽演じる鰻の幇間、聴きながら眠りにつくことにしよう。