学問空間

「『増鏡』を読む会」、第9回は2月22日(土)、テーマは「上西門院とその周辺」です。

荻原重秀とジョン・ロウ

2008-11-16 | 近現代史
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2008年11月16日(日)22時57分15秒

>筆綾丸さん
>荻原重秀
去年出た村井淳志氏の『勘定奉行 荻原重秀の生涯 ―新井白石が嫉妬した天才経済官僚』(集英社新書)という本、私は未読ですが、ずいぶん評判がよいみたいですね。
荻原重秀の言葉とされる「貨幣は国家が造る所、瓦礫を以って之に代えるといえども、まさに行ふべし」は、まさに至言ですね。

http://books.shueisha.co.jp/tameshiyomi/978-4-08-720385-1.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%BB%E5%8E%9F%E9%87%8D%E7%A7%80

私は今日、竹森俊平氏の新刊『資本主義は嫌いですか-それでもマネーは世界を動かす』(日本経済新聞出版社)を読んでいました。
軽いタイトルと軽い装丁に反して中身は非常に高度ですが、その第1部「ゴーン・ウィズ・ア・バブル」は「ミシシッピー・バブル」の紹介で始まり、ゲーテの『ファウスト』で終わっています。

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 ファウストが実在の錬金術師をモデルにしていたのだとすると、メフィストのモデルは誰なのだろうか。これについては「ファウスト」を翻訳された池内紀氏の解説文を読んでいただくのが、手っ取り早い。
    紙幣づくりのくだりは、実のところ、実際にあった事件をモデルにしている。『ジョン・
   ロー事件』といって、大革命以前のフランスをみまった大騒動だった。ゲーテはジョン・ロー
   をメフィストに換えて劇にとりこんだ。
 ゲーテが第二部を書いた十九世紀前半までには、ドイツにおいてはまだ「紙幣」が流通した歴史的経験はなかった。だから、いくら想像力に長けた文豪といえども、実在のモデルを参考にしなければ、こう生々しく「紙幣創造」の場面を描くことは、おそらくできなかっただろう。その実在のモデルとは他でもない、ミシシッピー・バブルの主役、ジョン・ロウだというわけである。
 ジョン・ロウの事件は、ゲーテに神の啓示のような衝撃を与えた。ゲーテはこの事件に、鉛よりも価値が低い「ただの紙切れ」を、「金」にも等しい価値を持つ紙幣に変えるという、古代エジプト以来、人類が永いこと追い求めてきた「錬金術」の実現を見たのである。なにも、物質としての「鉛」を物質としての「金」に変える必要はない。人が想像力を働かして、「ただの紙切れ」を、「金」だと思い込むことさえできれば、「錬金術」は成るのである。「錬金術」とは、「バブル」に他ならなかった!
(p154)
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新井白石にとって、荻原重秀はメフィストのような存在だったかもしれないですね。

ミシシッピー・計画
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B7%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%94%E8%A8%88%E7%94%BB
ファウスト
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%88_%E7%AC%AC%E4%BA%8C%E9%83%A8
ジョン・ロウ
http://en.wikipedia.org/wiki/John_Law_(economist)
コメント
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