投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2017年11月22日(水)10時17分48秒
新聞の死亡記事と古くからの友人だという財界人のエッセイに「青木春男」となっていたので、私もこれが本名だろうと思ったのですが、正しくは「青木春雄」ですね。
国会図書館サイトで『現代の出版業』(日本エディタースクール出版部、1975)という本を見つけ、実際に同書を確認してみたところ、奥付に、
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青木春雄(あおきはるお)
1917年神奈川県に生まれる.1939年横浜専門学校商学部在学中に主婦之友社編集局入社.美術主任,満洲版編集主任を経て,1946年退社.この間,1年半応召.同年生活研究社を友人と創立.1947年同社を離れ,青木書店を創業.現在同社代表取締役会長.日本書籍出版協会設立発起人に加わり,以後同会副会長・副理事長を歴任.現在理事.他に出版クラブ,出版健保組合,日本出版学会等の理事を兼ねる.ユネスコ東京出版センター主催「アジア出版研修コース」講師.
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とあります。
「まえがき」の後半部分から少し引用してみると、
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私は編集者あがりの一出版経営者である。それも零細に近い中小出版企業に属する出版社を三十年近く懸命に経営していたにすぎない。取り柄といえば、出版界生活の過半を出版業者団体の役員としてすごしてきたので、各出版社の事情や業界の実情を比較的にくわしく見、聞きしてきた経験であろうか。そうした立場上、私は今から五年前に、日本出版学会の機関誌『出版研究』創刊号に「出版経営(試)論」と題する一文を発表させられたことがある。これはユネスコ東京出版センターが毎年、東南アジア諸国の研究生を招いて実施している出版研修コースの講義ノートを、日本人向けに補修したものであった。
発表直後に、こうした経済的な面から出版にアプローチしたものが少ないとかで、このテーマを拡充して<エディター叢書>の一冊に入れるよう、吉田公彦氏からつよくすすめられた。とはいっても、私にとって簡単にできる仕事ではないし、またそのつもりも時間もあったわけではない。
たまたま昨年の春、私は永い間の社長業から会長という半ば隠居役についたのを機会に、乞われるままに業界紙や機関誌などに出版に関する個人的考えを連載させてもらった。おかげで一年後には吉田氏との約束を果たせそうな分量になったので、同社編集部で整理してもらったところ、構成上どうしても書き足さなければならない部分が出てきた。
そのために約一ヵ月間、この作業に没頭する羽目になったが、作業中に日頃から気にかけていた<出版界の新人研修用テキスト>になるようなものを、この際、本書へ盛り込もうと意図した。それが本書の総論にもあたる、第Ⅰ部第一章「出版業の職能と機構」である。
この章は、企業としての出版のあらましを知ろうとする人たちのために書かれたが、一方で、経験者のために多少、立ち入った説明を<注>としてできるだけ加えることにより、第二章以下の各論とあわせて通読にたえるように工夫したつもりである。【後略】
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といった具合です。
また、全体の構成を見るために「目次」から大項目だけを抜粋してみると、
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まえがき
Ⅰ 出版業とは何か
第一章 出版業の職能と機構
第二章 戦後出版の発展と企業動向─出版体質のターニングポイント
第三章
Ⅱ 今日の出版業
第一章 出版企業の現代的課題
第二章 出版生産と定価政策
第三章 現代の出版人
Ⅲ 出版業と流通問題
第一章 出版流通資本の生成と発展
第二章 出版流通改革論
付論 流通論を深める三つの論理
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となっていて、私もパラパラと眺めてみましたが、まあ、正直に言って、「企業としての出版のあらましを知ろうとする人たち」以外にとってはそれほど面白い内容ではなく、あくまで実務的なビジネス書ですね。
青木書店といえば世間的には大月書店と同種の共産党系出版社という印象が強いと思いますが、青木春雄氏の文体には思想の臭いが全く感じられないので、ちょっとびっくりです。
新聞の死亡記事と古くからの友人だという財界人のエッセイに「青木春男」となっていたので、私もこれが本名だろうと思ったのですが、正しくは「青木春雄」ですね。
国会図書館サイトで『現代の出版業』(日本エディタースクール出版部、1975)という本を見つけ、実際に同書を確認してみたところ、奥付に、
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青木春雄(あおきはるお)
1917年神奈川県に生まれる.1939年横浜専門学校商学部在学中に主婦之友社編集局入社.美術主任,満洲版編集主任を経て,1946年退社.この間,1年半応召.同年生活研究社を友人と創立.1947年同社を離れ,青木書店を創業.現在同社代表取締役会長.日本書籍出版協会設立発起人に加わり,以後同会副会長・副理事長を歴任.現在理事.他に出版クラブ,出版健保組合,日本出版学会等の理事を兼ねる.ユネスコ東京出版センター主催「アジア出版研修コース」講師.
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とあります。
「まえがき」の後半部分から少し引用してみると、
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私は編集者あがりの一出版経営者である。それも零細に近い中小出版企業に属する出版社を三十年近く懸命に経営していたにすぎない。取り柄といえば、出版界生活の過半を出版業者団体の役員としてすごしてきたので、各出版社の事情や業界の実情を比較的にくわしく見、聞きしてきた経験であろうか。そうした立場上、私は今から五年前に、日本出版学会の機関誌『出版研究』創刊号に「出版経営(試)論」と題する一文を発表させられたことがある。これはユネスコ東京出版センターが毎年、東南アジア諸国の研究生を招いて実施している出版研修コースの講義ノートを、日本人向けに補修したものであった。
発表直後に、こうした経済的な面から出版にアプローチしたものが少ないとかで、このテーマを拡充して<エディター叢書>の一冊に入れるよう、吉田公彦氏からつよくすすめられた。とはいっても、私にとって簡単にできる仕事ではないし、またそのつもりも時間もあったわけではない。
たまたま昨年の春、私は永い間の社長業から会長という半ば隠居役についたのを機会に、乞われるままに業界紙や機関誌などに出版に関する個人的考えを連載させてもらった。おかげで一年後には吉田氏との約束を果たせそうな分量になったので、同社編集部で整理してもらったところ、構成上どうしても書き足さなければならない部分が出てきた。
そのために約一ヵ月間、この作業に没頭する羽目になったが、作業中に日頃から気にかけていた<出版界の新人研修用テキスト>になるようなものを、この際、本書へ盛り込もうと意図した。それが本書の総論にもあたる、第Ⅰ部第一章「出版業の職能と機構」である。
この章は、企業としての出版のあらましを知ろうとする人たちのために書かれたが、一方で、経験者のために多少、立ち入った説明を<注>としてできるだけ加えることにより、第二章以下の各論とあわせて通読にたえるように工夫したつもりである。【後略】
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といった具合です。
また、全体の構成を見るために「目次」から大項目だけを抜粋してみると、
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まえがき
Ⅰ 出版業とは何か
第一章 出版業の職能と機構
第二章 戦後出版の発展と企業動向─出版体質のターニングポイント
第三章
Ⅱ 今日の出版業
第一章 出版企業の現代的課題
第二章 出版生産と定価政策
第三章 現代の出版人
Ⅲ 出版業と流通問題
第一章 出版流通資本の生成と発展
第二章 出版流通改革論
付論 流通論を深める三つの論理
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となっていて、私もパラパラと眺めてみましたが、まあ、正直に言って、「企業としての出版のあらましを知ろうとする人たち」以外にとってはそれほど面白い内容ではなく、あくまで実務的なビジネス書ですね。
青木書店といえば世間的には大月書店と同種の共産党系出版社という印象が強いと思いますが、青木春雄氏の文体には思想の臭いが全く感じられないので、ちょっとびっくりです。