学問空間

「『増鏡』を読む会」、第9回は2月22日(土)、テーマは「上西門院とその周辺」です。

年頭のご挨拶

2019-01-05 | 「五〇年問題」と網野善彦・犬丸義一
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2019年 1月 5日(土)10時27分8秒

新年明けましておめでとうございます。
既に五日になってしまいましたが、今日からまたボチボチと投稿を始めたいと思います。

まず、去年の大晦日に書こうとした一年の纏めについて、少し書いておきます。
一昨年十一月、小川剛生氏の『兼好法師─徒然草に記されなかった真実』(中公新書)が刊行されたのをきっかけに、昨年の前半まで、本当に久しぶりに中世文学・中世史に復帰し、『増鏡』『とはずがたり』『五代帝王物語』の検討を続けましたが、六月に入って少し息切れしてしまいました。
そして六月後半、大山喬平氏のインタビュー「大山喬平氏の中世身分制・農村史研究」(『部落問題研究』218号、2016)にメキシコ旅行時の奇妙な記述があるのが気になってラテンアメリカ史を少し調べ、ついで井出英策・松沢裕作編『分断社会・日本―なぜ私たちは引き裂かれるのか』(岩波ブックレット、2016)、松沢裕作氏『町村合併から生まれた日本近代 明治の経験』(講談社選書メチエ、2013)、同『自由民権運動―〈デモクラシー〉の夢と挫折』(岩波新書、2016)などを読んで明治時代に関心が移りました。
といっても、この時点では秩父事件や群馬事件など、地域史的な関心から少し資料を集めてみただけで、お盆以降は森見登美彦の小説を読むなど、ダラダラと過してしまいました。
そして、九月に入り、この掲示板の投稿を保管しているブログ「学問空間」で、「廃仏毀釈に殉教者はいるのか?」という記事にコメントをもらったことをきっかけに1872年(明治5)の「御岳行者皇居侵入事件」を少し検討し、ついで須田努氏『三遊亭円朝と江戸落語』(吉川弘文館、2015)、同『幕末の世直し 万人の戦争状態』(吉川弘文館、2010)、横山百合子氏『江戸東京の明治維新』(岩波新書、2018)などの明治維新期を扱う書物をボチボチと読んでいたところ、十月中旬、松沢裕作氏の新刊『生きづらい明治社会』(岩波ジュニア新書)に出会い、直ちに私の心の中のチコちゃんが起動して、「莫迦言ってんじゃねーよ!」、「ボーっと生きてんじゃねえよ!」と叫んだのでした。
そこで、突如として近代製糸業史の勉強を始めることになったのですが、世界遺産・富岡製糸場の所在地でありながら「製糸王国」になりそこねた群馬県に生まれた私がかねてから抱いていた疑問、即ち、何故に群馬県は「製糸王国」の地位を長野県にあっさり奪われてしまったのか、という疑問は、中林真幸氏の『近代資本主義の組織─製糸業の発展における取引の統治と生産の構造』(東大出版会、2003)を読んで、殆ど解決済みになってしまいました。
ただ、近代製糸業の研究史を調べているうちに、何故に「講座派」の影響力が戦後の歴史学界において非常に長く続いたのかが新たな疑問となり、「講座派」の駄目な部分を濃縮したような中村政則氏の『日本の歴史第29巻 労働者と農民』(小学館、1976)が「コミンテルンの常任委員クーシネン」の発言を賞賛しているのを見て、コミンテルンの「32年テーゼ」をきちんと調べる必要を感じました。
ちょうどそんなときに、内田力氏の「一九五〇年代の網野善彦にとっての政治と歴史 : 国際共産主義運動からの出発」(『日本研究』58巻、国際日本文化研究センター、2018)という論文の存在を知りました。
まあ、正直、その内容にはあまり感心しなかったのですが、この論文で指摘されていた網野善彦と伊藤律の関係を調べて行くと、やはり「32年テーゼ」の問題にぶつかります。
そこで、今しばらく「32年テーゼ」と、これが歴史学に与えた影響について検討を続けるつもりです。

「大山喬平氏の中世身分制・農村史研究」
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/c1422218c8cfcc2a3e215a63052fd5d0
横山百合子『江戸東京の明治維新』
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/9b0ecdefd29768b3149546fbdc46341e
松沢裕作『生きづらい明治社会』(その1)
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/93f8958b1bd2e3ef432ffc8253569f68
松沢裕作『生きづらい明治社会』(その7)
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/fc41bdd5e500d67043621a5114e098a3
中林真幸『近代資本主義の組織』
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/eba774a36beb84acfef63794e27d6cc9
中林真幸『近代資本主義の組織』の書評比べ
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/003902c1a78eedd67c9c3b4ce64581b3
設問:一橋大学名誉教授・中村政則の「カラクリ」について
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/3e8ee2cf121a12cc91b07e4be9bb165e
「日本の農村は、日本資本主義にとって自国内地における植民地である」(by コミンテルン常任委員クーシネン)
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/cf6f12b889a2567829509bb36c1b6e44
内田力「一九五〇年代の網野善彦にとっての政治と歴史」へのプチ疑問(その1)
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/5f1a53b23573ef967eb5bb03921d8937
コメント
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