リテラ転載
【大阪地震で差別デマ! 三浦瑠麗の影響か「スリーパーセルの仕業」なるデマまで…関東大震災の過ちを繰り返すな】
2018.06.18
本日午前7時58分ごろ、大阪府北部で最大震度6弱を記録する地震が発生した。気象庁は、揺れの強かった地域では地震発生から1週間程度、最大震度6弱程度の地震のおそれがあるとして警戒を呼びかけている。
建築物等の倒壊被害や交通機関の麻痺による混乱が報じられているが、そんななか、もうひとつ注意をしてもらいたいのがネットのデマだ。
なかでも看過できないのが差別デマである。2016年4月の熊本地震では、発生直後から〈熊本の井戸に朝鮮人が毒を入れて回っているそうです!〉などという悪質なデマツイートが出回った。今回もすでにTwitter等のSNSでは、地震に乗じて差別を扇動する以下のようなヘイトデマが散見される。
〈在日4世の女学生が混乱に乗じて道行く爬虫類系の男性を睡眠薬入りアイスティーで昏睡させてさらってるらしいです!〉
〈大きい地震とか災害おこると在日が嬉々として犯罪に走るから気を付けなよ〉
〈外国人って地震に慣れていないから、真っ先にコンビニ強盗を始めるか、空港に殺到するようです〉
〈在日・中華人種の”窃盗・搾取・強盗”にはくれぐれもご用心をッ!!!〉
〈今後の在日朝鮮人・共産主義者による暴動、略奪、暴行に注意しよう〉
念のため繰り返すが、これらのツイートは明確なデマであり、極めて悪質な偽情報である。
さらには〈みんな気をつけろよ スリーパーセルが動き出す〉〈新幹線の次は地震。スリーパーセルの仕業だな〉といったようなツイートも見あたる。少なくとも熊本地震の際には「スリーパーセル」なる言葉はTwitter上で確認できなかったが、これは、今年2月の『ワイドナショー』(フジテレビ)での三浦瑠麗氏のデマ発言が影響したものと考えるのが自然だろう。
番組中、三浦氏は米朝開戦について語るなかで、「実際に戦争がはじまったら、テロリストが、仮に金正恩さんが殺されても、スリーパー・セルと言われて、もう指導者が死んだってわかったら、もう一切外部との連絡を絶って都市で動きはじめる、スリーパー・セルっていうのが活動をはじめるって言われてるんです」「それがソウルでも東京でも、もちろん大阪でも。いま結構大阪ヤバイって言われていて」などとなんの根拠もないデマを語った。番組もデマであると指摘することなく、スリーパー・セルの解説として「一般市民を装って潜伏している工作員やテロリスト」とのテロップを流していた。
当時本サイトでも詳しく解説した(http://lite-ra.com/2018/02/post-3799.html)が、この三浦氏の“スリーパー・セルでとくに大阪がやばい”発言はなんの根拠もない浅薄なデマであり、しかも「北朝鮮のスリーパー・セル=在日朝鮮人」と想起させ、差別を助長するものだと放送直後から大きく批判された。今回の大阪を中心とした大規模地震で「スリーパー・セル」なる言葉が新たなデマとして出てきたのは、やはり無関係ではないだろう。
差別デマが招いた関東大震災時の朝鮮人虐殺 政府はただちに差別デマを否定しろ!
いずれにしても、こうした差別デマが悪質なのは、ただ被災地を混乱させるだけでなく、ヘイトクライムを招く危険性があるからだ。
1923年9月の関東大震災では、発生直後の数日間で、「朝鮮人が暴動を起こした」「井戸に毒をいれた」「放火している」等のデマが広がり、日本人らによる大規模な朝鮮人のジェノサイドが行われた。いわゆる「朝鮮人虐殺」である。
明らかに荒唐無稽な話であっても、非常事態の心理においては信じてしまいやすくなる。中学2年時に関東大震災を体験した映画監督の黒澤明は、のちに被災後の状況を振り返って〈恐怖すべきは、恐怖にかられた人間の、常軌を逸した行動である〉と記している。
〈下町の火事の火が消え、どの家にも手持ちの蠟燭がなくなり、夜が文字通りの闇の世界になると、その闇に脅えた人達は、恐ろしいデマゴーグの俘虜になり、まさに暗闇の鉄砲、向こう見ずな行動に出る。
経験の無い人には、人間にとって真の闇というものが、どれほど恐ろしいか、想像もつくまいが、その恐怖は人間の正気を奪う。
どっちを見ても何も見えない頼りなさは、人間を心の底からうろたえさせるのだ。
文字通り、疑心暗鬼を生ずる状態にさせるのだ。
関東大震災の時に起った、朝鮮人虐殺事件は、この闇に脅えた人間を巧みに利用したデマゴーグの仕業である。〉(自伝『蝦蟇の油』岩波書店)
デマは非常時の心理のなかで増幅する。とくにインターネットが発達した現代では、デマはSNSを通じ、ひと昔前では考えられなかったほど早く、広範囲に拡散される。言わずもがな、公的機関やマスコミは、冷静にデマの流布への警戒を呼びかけなければならない。
Twitterでは、大阪府の広報担当アカウント「もずやん」が15時40分ごろ、〈SNSでは実際に起こっていない事故など、事実と異なる情報が発信・拡散されています。情報の発信元にはご注意いただき信頼できる情報かどうか、十分に確認をしてください。また、未確認の情報をむやみに拡散しないでください〉とツイートで呼びかけた。
一方で、公的機関や公人は、こと差別デマに関してはほとんどメッセージを発していない。
たとえば、前述の〈みんな気をつけろ スリーパーセルが動き出す〉なるデマは、あるユーザーが10時ごろに自民党の杉田水脈衆院議員へ向けたツイート(メンション)だったが、杉田議員は16時現在、こうした差別デマについて一切の注意喚起をしていない。
国や大阪府、大阪市をはじめとする各自治体は、デマ一般だけでなく、差別デマについてもただちに否定し、偽情報であることを周知させるべきだ。政府や公的組織、公人がこうした差別デマを明確に否定することなく放置していることが、差別の蔓延を助長していることをいい加減自覚してほしい。そして、私たちは、こうした差別デマに絶対に踊らされてはならないのはもちろん、偽情報を指摘するときも「明確なデマ」であることがわかるようなかたちで拡散するよう、配慮が必要だろう。
(編集部)
【大阪地震で差別デマ! 三浦瑠麗の影響か「スリーパーセルの仕業」なるデマまで…関東大震災の過ちを繰り返すな】
2018.06.18
本日午前7時58分ごろ、大阪府北部で最大震度6弱を記録する地震が発生した。気象庁は、揺れの強かった地域では地震発生から1週間程度、最大震度6弱程度の地震のおそれがあるとして警戒を呼びかけている。
建築物等の倒壊被害や交通機関の麻痺による混乱が報じられているが、そんななか、もうひとつ注意をしてもらいたいのがネットのデマだ。
なかでも看過できないのが差別デマである。2016年4月の熊本地震では、発生直後から〈熊本の井戸に朝鮮人が毒を入れて回っているそうです!〉などという悪質なデマツイートが出回った。今回もすでにTwitter等のSNSでは、地震に乗じて差別を扇動する以下のようなヘイトデマが散見される。
〈在日4世の女学生が混乱に乗じて道行く爬虫類系の男性を睡眠薬入りアイスティーで昏睡させてさらってるらしいです!〉
〈大きい地震とか災害おこると在日が嬉々として犯罪に走るから気を付けなよ〉
〈外国人って地震に慣れていないから、真っ先にコンビニ強盗を始めるか、空港に殺到するようです〉
〈在日・中華人種の”窃盗・搾取・強盗”にはくれぐれもご用心をッ!!!〉
〈今後の在日朝鮮人・共産主義者による暴動、略奪、暴行に注意しよう〉
念のため繰り返すが、これらのツイートは明確なデマであり、極めて悪質な偽情報である。
さらには〈みんな気をつけろよ スリーパーセルが動き出す〉〈新幹線の次は地震。スリーパーセルの仕業だな〉といったようなツイートも見あたる。少なくとも熊本地震の際には「スリーパーセル」なる言葉はTwitter上で確認できなかったが、これは、今年2月の『ワイドナショー』(フジテレビ)での三浦瑠麗氏のデマ発言が影響したものと考えるのが自然だろう。
番組中、三浦氏は米朝開戦について語るなかで、「実際に戦争がはじまったら、テロリストが、仮に金正恩さんが殺されても、スリーパー・セルと言われて、もう指導者が死んだってわかったら、もう一切外部との連絡を絶って都市で動きはじめる、スリーパー・セルっていうのが活動をはじめるって言われてるんです」「それがソウルでも東京でも、もちろん大阪でも。いま結構大阪ヤバイって言われていて」などとなんの根拠もないデマを語った。番組もデマであると指摘することなく、スリーパー・セルの解説として「一般市民を装って潜伏している工作員やテロリスト」とのテロップを流していた。
当時本サイトでも詳しく解説した(http://lite-ra.com/2018/02/post-3799.html)が、この三浦氏の“スリーパー・セルでとくに大阪がやばい”発言はなんの根拠もない浅薄なデマであり、しかも「北朝鮮のスリーパー・セル=在日朝鮮人」と想起させ、差別を助長するものだと放送直後から大きく批判された。今回の大阪を中心とした大規模地震で「スリーパー・セル」なる言葉が新たなデマとして出てきたのは、やはり無関係ではないだろう。
差別デマが招いた関東大震災時の朝鮮人虐殺 政府はただちに差別デマを否定しろ!
いずれにしても、こうした差別デマが悪質なのは、ただ被災地を混乱させるだけでなく、ヘイトクライムを招く危険性があるからだ。
1923年9月の関東大震災では、発生直後の数日間で、「朝鮮人が暴動を起こした」「井戸に毒をいれた」「放火している」等のデマが広がり、日本人らによる大規模な朝鮮人のジェノサイドが行われた。いわゆる「朝鮮人虐殺」である。
明らかに荒唐無稽な話であっても、非常事態の心理においては信じてしまいやすくなる。中学2年時に関東大震災を体験した映画監督の黒澤明は、のちに被災後の状況を振り返って〈恐怖すべきは、恐怖にかられた人間の、常軌を逸した行動である〉と記している。
〈下町の火事の火が消え、どの家にも手持ちの蠟燭がなくなり、夜が文字通りの闇の世界になると、その闇に脅えた人達は、恐ろしいデマゴーグの俘虜になり、まさに暗闇の鉄砲、向こう見ずな行動に出る。
経験の無い人には、人間にとって真の闇というものが、どれほど恐ろしいか、想像もつくまいが、その恐怖は人間の正気を奪う。
どっちを見ても何も見えない頼りなさは、人間を心の底からうろたえさせるのだ。
文字通り、疑心暗鬼を生ずる状態にさせるのだ。
関東大震災の時に起った、朝鮮人虐殺事件は、この闇に脅えた人間を巧みに利用したデマゴーグの仕業である。〉(自伝『蝦蟇の油』岩波書店)
デマは非常時の心理のなかで増幅する。とくにインターネットが発達した現代では、デマはSNSを通じ、ひと昔前では考えられなかったほど早く、広範囲に拡散される。言わずもがな、公的機関やマスコミは、冷静にデマの流布への警戒を呼びかけなければならない。
Twitterでは、大阪府の広報担当アカウント「もずやん」が15時40分ごろ、〈SNSでは実際に起こっていない事故など、事実と異なる情報が発信・拡散されています。情報の発信元にはご注意いただき信頼できる情報かどうか、十分に確認をしてください。また、未確認の情報をむやみに拡散しないでください〉とツイートで呼びかけた。
一方で、公的機関や公人は、こと差別デマに関してはほとんどメッセージを発していない。
たとえば、前述の〈みんな気をつけろ スリーパーセルが動き出す〉なるデマは、あるユーザーが10時ごろに自民党の杉田水脈衆院議員へ向けたツイート(メンション)だったが、杉田議員は16時現在、こうした差別デマについて一切の注意喚起をしていない。
国や大阪府、大阪市をはじめとする各自治体は、デマ一般だけでなく、差別デマについてもただちに否定し、偽情報であることを周知させるべきだ。政府や公的組織、公人がこうした差別デマを明確に否定することなく放置していることが、差別の蔓延を助長していることをいい加減自覚してほしい。そして、私たちは、こうした差別デマに絶対に踊らされてはならないのはもちろん、偽情報を指摘するときも「明確なデマ」であることがわかるようなかたちで拡散するよう、配慮が必要だろう。
(編集部)