【現代思想とジャーナリスト精神】

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東京新聞社説

2023-09-16 08:50:23 | 転載・政治社会と思想報道
<社説>岸田改造内閣 何が狙いの布陣なのか
2023年9月14日 08時03分



 内閣改造と自民党役員人事では政権の骨格は維持され、新味に乏しい。岸田文雄首相が何を目指して、どんな政策に力を入れようとしている布陣なのかも伝わってこない。政権基盤を固めるための党内バランス重視の内向きな「定期異動」というほかない。
 岸田政権の発足から2年近く。経済政策が十分な効果を上げたとは言い難い。エネルギー価格の高騰と円安を背景にした物価上昇に賃上げが追いつかず、国民の暮らしは圧迫され続けている。
 首相は「新たな体制で思い切った経済対策をつくる」と強調したが、とりまとめの中心となる萩生田光一党政調会長、西村康稔経済産業相を続投させた。体制を維持したまま、これまでと異なる経済対策を打ち出せるというのか。
 トラブルが相次ぐマイナンバー制度を担う河野太郎デジタル相、放送法の解釈変更を巡る経緯を記した行政文書を「捏造(ねつぞう)」と言い放った高市早苗経済安全保障担当相も留任させた。混乱の責任を問わぬままでは、国民の批判に正面から向き合ったとは言えまい。
 唯一、首相の意思が読み取れるのは女性閣僚を前内閣の2人から過去最多に並ぶ5人に増やしたことだ。党人事でも選対委員長に小渕優子氏を起用した。女性の積極登用は評価したい。閣僚経験の豊富な上川陽子氏を外相に起用したことは、男女格差の大きさが指摘される日本の国際的なイメージの改善にもつながるだろう。
 ただ、小渕氏に加えて、初入閣した加藤鮎子こども政策担当相、自見英子地方創生担当相、土屋品子復興相の女性3閣僚はいずれも親が国会議員だった世襲議員だ。改造内閣全体でも世襲議員は初入閣11人のうち5人を占める。
 もちろん世襲だからといって直ちに能力を欠くとは言えないが、多様な人材が活躍する機会を狭めて、政治から活力を奪うことにならないか、危惧する。
 岸田首相は、防衛力の抜本的強化や原発新増設、マイナ保険証の実質義務化などの政策転換を国会での徹底した議論や国民の幅広い合意なく進めてきた。これらが国民の支持を得ていると言い難いことは内閣支持率の低迷が示す。
 政治への信頼を回復するには、小手先の人事ではなく、国民の声に誠実に耳を傾け、暮らしに寄り添う政策を着実に実現するほかはあるまい

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