【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

【色平哲郎氏からのご紹介】 ウクライナにおける最近の事件について――暫定的な声明

2022-03-05 09:26:28 | 転載
【色平哲郎氏からのご紹介】 ウクライナにおける最近の事件について――暫定的な声明

> Dハーベイのこの立論はしっくりきません。
>
> まず、知識人の声明として、(朝鮮戦争でDマッカーサーが核兵器使用を本気で訴えて
> 以来の)核兵器を実際に使用するという威嚇をしているプーさんの野蛮な行為を徹底的に
> 批判し、やめさせるメッセージがないのは致命的にダメ。
>
> このような全人類に対する重大な挑戦に、感覚マヒしている言論が日本国内でも
> 「訳知り」のようにあることに、私は危機感を抱いています。
>
> バイデンはじめ欧米諸国首脳が露骨な介入をして、全面核戦争に向かう道を
> 押しとどめていることに希望をもたざるをえない。
>
> 「新自由主義」とNATOのせいで、ロシアも追い詰められているんだから仕方ないか
> のような叙述では、そんなのマルクス主義的ですらない。
>
> 米国の軍事的・経済的覇権の衰退、加えてグローバル資本主義に参入したロシア・中国、
> 彼ら、米中ロによる、他民族と自国民を抑圧する覇権争いだとみるべきではないか。
>
> そう、いまこそレーニンに立ちかえって、、
>
> しかし、レーニンの時代と決定的に異なるのは、戦術核や原発攻撃などという
> 人類滅亡に繋がりかねない大惨事、これが起きかねない瀬戸際にあるということ。
>
> ・国際法違反の侵略戦争をやめさせる
> ・国際人道法に反する、民間人への殺戮をやめさせる
> ・核兵器による威嚇、全人類への挑戦をゆるさない
>
> こうした国際世論でロシアを包囲することを相対化させるような言説では有益でない。
>
> こうした倫理が押しつぶされた場合、
> 国際ルールなんて無力、暴力がなければ無力、
> というモラルハザードとシニシズムが増幅されましょう。


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ウクライナにおける最近の事件について――暫定的な声明
デヴィッド・ハーヴェイ 2022年2月25日


 ロシアのウクライナ侵攻による本格的な戦争の勃発は、世界秩序に対する重大な転換点をもたらすものだ。今回の事件は、本年の年次総会に集まった地理学者たち(残念ながらZoomによるものだが)には無視できないものであり、議論の基礎として、専門家ではないコメントをいくつか提示したい。

 次のような神話がある。1945年以来世界は平和であり、アメリカのヘゲモニーのもとで構築された世界秩序は、互いに競争しあう資本主義国家の戦争志向を抑制する上で十分に機能してきたという神話だ。たしかに、2度の世界大戦を引き起こしたヨーロッパにおける国家間競争はほぼ封じられ、西ドイツと日本は1945年以降、平和的に資本主義世界システムに再統合された(それはソ連の共産主義の脅威と戦うためでもあった)。ヨーロッパでは国家間協力のための諸機関・諸制度が整備された(共同市場、欧州連合、NATO、ユーロ、等々)。一方、1945年以降も、数多くの「熱い」戦争(内戦と国家間戦争)が遂行されてきた。朝鮮戦争とベトナム戦争に始まり、ユーゴスラビア内戦、NATOによるセルビア空爆、2つの対イラク戦争(うち1つは、イラクの大量破壊兵器保有に関する米国のあからさまな嘘によって正当化された)、イエメン、リビア、シリアでの戦争
がそうである。

 1991年まで、冷戦は世界秩序を機能させるうえでかなりの程度、持続的な支えを提供してきた。この冷戦は、アイゼンハワーがかつて「軍産複合体」と呼んだものを構成する米国企業にとって経済的利益になるよう大いに利用された。ソヴィエトと共産主義に対する恐怖心(偽りの恐怖心と本物の恐怖心の両方)を醸成することは、この冷戦政治にとって基本的な手段の一つだった。その結果、軍用ハードウェアにおける技術的・組織的なイノベーションの波が次々と起こり、経済的にも大きな影響を及ぼした。そうした軍事技術の多くは、航空、インターネット、核技術など、広範にわたる民間利用をもたらし、こうして、終わりなき資本蓄積を支え、独占市場を通じて資本主義的権力の集中を昂進させることに大いに貢献した。

 さらに、「軍事ケインズ主義」への依存は、1970年以降、先進資本主義国の諸国民に新自由主義的緊縮財政が繰り返し実施されてきた過酷な時代における例外として好まれるようになった。レーガンは軍事ケインズ主義に頼りつつソ連に軍拡競争を仕掛けた。それは、ソ連の崩壊を招くことによって冷戦の終結に貢献したが、同時に両国の経済を大きく歪めることになった。レーガン以前の〔高成長だった〕アメリカの最高税率は70%を下回ることはなかったが、〔低成長の〕レーガン以降は40%を超えたことはなかった(この事実は、高い税率が経済成長を阻害するという右派の主張を論駁するものだ)。1945年以降、アメリカ経済の軍事化が進むと、経済的不平等が拡大し、アメリカ国内だけでなく、他の地域でも(ロシアでさえ)支配的寡頭制が形成されるようになった。

 ウクライナのような状況において西側の政策エリートたちが直面している困難は、紛争の根本的な原因を悪化させない形で当面する短期的問題に対処しなければならないことだ。たとえば、不安に駆られた人々はしばしば暴力的に反応するが、ナイフを持って向かってくる相手に対して、不安を和らげるために「まあ落ち着け」というような言葉でもって対峙することはできない。相手を武装解除しなければならないが、その際、できれば不安を増幅させないような方法をとる必要がある。目的とするべきなのは、より平和的で協調的で、かつ非軍事化された世界秩序の基礎を築くことであり、同時にこの侵略がもたらす恐怖や破壊、不必要な人命損失を速やかに抑え込むことだ。

 ウクライナ紛争でわれわれが現在目にしていることは、多くの点で、かつて「現存する共産主義」とソヴィエト政権の力を解体させたプロセスの産物である。冷戦の終焉とともに、ロシア人は、資本主義のダイナミズムと自由市場経済の恩恵がトリクルダウンによって国中に広がるという、バラ色の未来を約束された。しかし、かつてボリス・カガリツキー〔ロシアの社会主義左派知識人〕による表現に従えば、その現実は次のようなものだった。冷戦が終わり、ロシア人はパリ行きのジェット機に乗っていると信じていたのに、飛行中に「ブルキノ・ファソ〔アフリカの国で貧困と内戦に苦しんでいる〕へようこそ」と言われたようなものだと。

 1945年以降に日本や西ドイツで起こったことと違って、ロシアの人々や経済をグローバルシステムに有機的に組み込む試みはまるでなされなかった。IMFや西側の主要な経済学者(ジェフリー・サックスなど)からの助言は、新自由主義的な「ショック療法」を移行への特効薬として受け入れることであった。それが明らかにうまくいかなかったとき、西側エリートたちは、被害者の方を非難するという新自由主義のいつものゲームを展開した。つまり、ロシアの人々は自分たちの人的資本を適切に開発せず、個々人の起業家精神に対する多くの障壁を取り除かなかったのが悪いというのだ(したがって、寡頭制(オリガルヒ)が台頭したことも暗黙の裡にロシア人自身の責任にされた)。ロシア国内の結果は実に悲惨なものだった。GDPは崩壊し、ルーブルは役立たなくなり(お金はウォッカの瓶で計られた)、平均寿命は急降下し、女性の地位は下落し、社会福祉と政府
機関は完全に崩壊し、オリガルヒの権力を中心にマフィア政治が台頭し、1998年には債務危機が頂点に達した。金持ちのテーブルからパンくずをねだり、IMFの独裁に服従するしか道はないように思われた。オリガルヒの繁栄を例外とすれば、経済的屈辱は全面的なものだった。さらにその上、ソヴィエト連邦は、民衆にあまり相
談されることもなく、独立した諸共和国へと解体された。

 ロシアはわずか数年の間に、人口と経済の縮小、産業基盤の破壊を経験し、その規模たるや、過去40年間にアメリカの古い地域で経験した脱工業化よりも大きなものだった。ペンシルベニア州、オハイオ州、そして中西部における脱工業化の社会的、政治的、経済的影響は広範囲に及んでいる(合成麻薬であるオピオイドの蔓延から、白人至上主義やドナルド・トランプを支持する有害な政治的傾向の台頭に至るまで)。しかし、ロシアの政治的、文化的、経済的生活に対する「ショック療法」の影響は、案の定、それよりはるかにひどいものだった。西側は、欧米流の「歴史の終わり」なるものを吹聴してほくそ笑むこと以外、何もできなかった。

 さらにNATOの問題がある。もともと防衛的かつ協調的なものとして構想されたNATOは、共産主義の拡大を抑えることと、ヨーロッパにおける国家間競争が軍事的な方向に向かうのを防ぐことを目的に設置された主たる好戦的軍事機構だった。おおむねそれは、ヨーロッパでの国家間競争を緩和する協調的な組織的機関としては多少とも役立った(ただし、ギリシャとトルコはキプロスをめぐる対立を何ら解決していない)。実際には、ヨーロッパ連合(EU)の方がずっと役に立った。ソ連の崩壊とともに、NATOの主要な目的は消滅した。アメリカ国民が国防予算の大幅削減によって「平和の配当」を実現したことは、軍産複合体にとってリアルな脅威となった。その結果、ペレストロイカ初期のゴルバチョフとの口約束に反して、NATOのアグレッシブな利用(それは常にあったが)がクリントン時代に積極的に主張されるようになった。1999年の米国主導のNATOによるベ
オグラード爆撃は、その端的な例である(このとき中国大使館も爆撃に遭ったが、それが偶然なのか意図的なのかは不明だ)。

 米国のセルビア爆撃をはじめ、小国家の主権を侵害する米国の介入は、プーチンの行動の先例として想起される。この間、NATOが(明確な軍事的脅威がないにもかかわらず)ロシア国境付近まで拡大したことは、米国内でも強く疑問視されており、ドナルド・トランプはNATOの存在意義をも攻撃している。最近『ニューヨーク

・タイムズ』に寄稿した保守派の論客トム・フリードマンでさえ、NATOの東欧への拡大によるロシアへの攻撃的、挑発的なアプローチを通じて、最近の事件に対する米国が責を負っていることを想起している。1990年代、NATOはまるで敵を探している軍事同盟のように見えた。プーチンはさんざん挑発され、今日ついにそれに乗った。明らかに、ロシアを経済的に破壊された屈辱と、世界秩序におけるロシアの地位に対する西側の無礼な傲慢さに怒っている。

 米国と西側の政治的エリートたちは、相手に屈辱を与えることが、外交問題においてしばしば長期的で破局的な影響をもたらす破滅的な手段であることを理解すべきだった。ベルサイユにおいてドイツに与えた屈辱は、第2次世界大戦の火種となる重要な役割を果たした。政治的エリートは、1945年以降、マーシャル・プランによって西ドイツと日本に対する屈辱の繰り返しを回避したのに、冷戦終結後、ロシアに対して(積極的にも、あるいは不注意によっても)屈辱を与えるという破滅的愚行を繰り返した。ロシアは、1990年代の新自由主義的解決策の妥当性についてレクチャーを受けるよりも、マーシャル・プランのようなものを必要としていたし、またそれに値した。同じく、欧米帝国主義による1世紀半にわたる中国への屈辱(これは日本による軍事占領と1930年代の悪名高い「レイプ・オブ・ナンキン」という屈辱へと受け継がれた)は、現代の地政学的闘争
において重要な役割を果たしている。その教訓は単純である。屈辱を与えることは危険だということだ。たとえ噛まれないまでも、恨まれることになる。

 もちろん、以上のいずれもプーチンによる行動を正当化するものではない。それは、40年にわたる脱工業化と新自由主義的な労働者抑圧が、ドナルド・トランプの行動や立場を正当化しないのと同じである。しかし、それと同じく、ウクライナにおけるこうした行動は、グローバル軍国主義の諸機関(NATOなど)を再活性化させることを正当化するものではない。それはむしろ問題の発生に大きく寄与するものだった。1945年以降、ヨーロッパ内の国家間競争が非軍事化される必要があったように、今日、権力ブロック間の軍拡競争をやめさせて、協力と協調のための強力な制度に取って代える必要がある。資本主義企業間や権力ブロック間の競争の強制法則に従うことは、将来における災いの元でしかない。たとえ――残念ながら――大資本が依然として、それを将来における無限の資本蓄積を支える手段だとみなしているとしてもである。

 このような時期にきわめて危険なのは、どちらかの側の小さな判断ミスが、核保有国間の大規模な衝突に簡単にエスカレートしてしまうことだ。核兵器は、これまで圧倒的だったアメリカの軍事力に対してロシアが自力で対抗できる分野である。1990年代に米国のエリートたちは一極集中の世界に住んでいたのだが、その世界はすでに二極化された世界に取って代わられている。そして、それ以外の多くのことは流動的である。

 2003年1月15日、世界中の何百万人もの人々が、イラク戦争の脅威に対して抗議するために街頭に繰り出した。『ニューヨーク・タイムズ』紙でさえ、これは世界の世論の驚くべき表現であると認めた。しかし、残念至極なことに、この抗議は失敗に終わり、20年間にわたり世界中で無駄で破壊的な戦争が繰り返されることになった。ウクライナの人々が戦争を望んでいないこと、ロシアの人々も戦争を望んでいないこと、ヨーロッパの人々も戦争を望んでいないこと、そしてまた北米の人々も新たな戦争を望んでいないこと、このことは明らかである。平和を求める民衆の運動に新たに火をつけ、再活性化させる必要がある。世界中の人々が、競争、強制、激しい対立ではなく、平和、協力、協調に基づく新しい世界秩序の創造に参加する権利を主張する必要がある。

https://bit.ly/3vzcbKv
Remarks on Recent Events in the Ukraine: A Provisional Statement
FEBRUARY 25, 2022  David Harvey

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久保佐世


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夜の繁華街 訴えるタイ人女性 県下 駆け込み急増
支援団体 警察に 「国へ帰りたい・・・」 「売春」「賃金」 救い求め

信濃毎日新聞 1991年10月3日


夜の繁華街で働くタイ人女性が2日までに、「売春を強要された。国へ帰りたい」と更埴警察署に助けを求めてきた。
東京の外国人女性支援団体「HELP(ヘルプ)」にも、ここ1週間だけで、戸倉上山田温泉街で働いているタイ人女性5人が「売春を強要されている」「賃金が不当に低い」などと電話で訴えてきた。HELPによると、県下からのこうした駆け込みは全国的にも最も多く、東南アジア人女性の増加とともに、人権侵害の深刻化を示している。


タイ人女性は1日深夜、電話で更埴署に助けを求めたため保護した。
更埴市周辺のスナックで働いていたとみられる。日本語をほとんど話せないため同署は2日、市内に住むタイ人主婦に通訳を依頼し事情を聴き始めた。

HELPに電話してきたタイ人女性5人は、いずれも今年に入って入国。
スナックで働き、毎晩のように日本人男性を相手に売春しているという。「経営者はお金をたくさんくれないのに売春させる」「男が監視していて逃げられない」
「経営者がパスポートを取り上げた」とし、帰国の手助けを求めている。

この夏には、小諸市で働いていた台湾人女性2人が東京都の福祉事務所に相次いで駆け込んだ。
1人は手などに傷を負い、「ヤクザに監禁されていた」とおびえながら訴えた。

県下では最近、小諸市から長野市にかけてのJR信越線沿線を中心に夜の繁華街で働く東南アジア人、特にタイ人女性が急増。

タイ人女性を雇っている小諸市のスナック経営者は「東京に近いためか、小諸市内に定着した女性がボスになって国から友人たちを呼び寄せ、上田、長野方面の飲食店に送り込んでいるケースがある」と話す。
戸倉上山田温泉街で働く東南アジア人女性は300から500人いるとの指摘もある。

長野市ではタイ人ホステスだけのスナックも増えている。

小諸市の別のスナックで売春をしているというタイ人女性は「タイのシンジケートで300万円を借金し来日した。借金を返すまでは売春を続けるしかない」と話す。売春の料金をピンハネしている経営者も多い、という。

HELPに駆け込んできた外国人女性は、今年だけで199人。
県下からの駆け込みが最も目立つという。HELPの松田瑞穂さんは「売春を承知で入国する女性たちにも問題はある。
が、需要があるから女性たちが増えている。経営者や、女性を買う日本人は彼女たちの人権をどう考えているのか」と訴えている。


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福島で死んだフィリピン女性 「遺体に虐待の跡」 家族ら指摘 
朝日新聞 1991年10月10日


【マニラ9日=大野拓司】
福島県東白川郡塙町のナイトクラブで働いていたフィリピン人女性が、先月14日に同町内の病院で死亡し遺体で帰国したが、「虐待された跡がある」などと家族らから死因に疑問を投げかける声が上がり、比当局もこれを重視、トーレス労相が調査のため近く日本に行く。フィリピン人労働者の就労状況一般についても関係当局と意見交換するという。

この女性はマニラ出身のマリクリス・シオソンさん(22)。9月7日に入院、1週間後に死んだ。
病院側の死亡診断書だと、死因は「肝炎」とされる。だが、返された遺体を見た家族の要請で比司法当局が検視した結果では、頭部に陥没や大量の出血痕があり、何らかの理由による「頭部の外傷が死因」との見方をしている。

病院側は「診察、治療に誤った点はなかった」と話している。
また、事実関係を調べた福島県警棚倉署も「病院の診断通り。不審な点はなかった」としている。


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過酷な出稼ぎに反発 比・タイ「死んで帰国も」 上田で懇談会 SOS外国人

信濃毎日新聞 1991年10月26日


タイやフィリピンで日本から帰国した女性に対するソシアルケースワーカーとして働いている女性ら3人が25日上田市を訪れ、日本人と結婚した市内のフィリピン人女性4人と懇談した。福島県でのフィリピン人女性ダンサー死亡事件などに論議が集中。ケースワーカーたちは「日本から死んで帰ってくる女性はほかにもいる。過酷な出稼ぎを通じ日本への反発が強まっている」と報告した。


上田カトリック教会で開いた懇談会は、長野市や上田市の主婦らの市民グループ「アジアの花ヨメを考える会・ながの」が呼び掛けた。
フィリピン人のケースワーカー、ルビー・ジャーデニルさん(31)と国立フィリピン大学大学院生で現地でディスクジョッキーを担当している穴田久美子さん(31)=北海道出身、タイ人のケースワーカー、パンニー・アスワポンチョトさん(38)が出席した。

ルビーさんは自分の活動経験から「日本から女性が帰国する理由の第一は精神的な不安など、、、死亡しての帰国」と報告。
穴田さんらによると、出稼ぎのフィリピン人女性が事故や病気で死亡しても、日本ではあまり問題にされていないようだという。

福島県のダンサー死亡事件では、現地の新聞などを手に議論。
ルビーさんは「フィリピン国内では、経済大国の日本に黙っていたが、もう我慢できないという気持ちが強くなっている」と指摘。
「娘を日本に送った家族の不安を知ってほしい」と呼び掛けた。

穴田さんが、ダンサーの家族から提供してもらった遺体の写真を前に、女性たちはショックを受けた表情で「フィリピンだけでなくアジア全体の問題」と話していた。

日本での結婚生活では、文化や習慣の違いによるすれ違い、差別の悩みを訴える人が目立った。「あいさつしても返事をしてもらえないことが多い」という女性もいた。

参加者は、日本に住む外国人女性たちのネットワークづくりを強調。
パンニーさんは「タイの女性は英語を話せない人が多く孤立している。危険に陥ることも多い」と指摘。
「身を守るため、法律や制度についての情報交換が必要」と交流を呼び掛けた。

「考える会」は27日、同教会で外国人女性と家族たちの交流会を開き、ネットワークづくりを支援していく。


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「外国人医療相談室」佐久総合病院が開設

朝日新聞 1992年12月3日 東北信版


(長野県)南佐久郡臼田町の県厚生連佐久総合病院(若月俊一院長)で3日、言葉の壁に悩む外国人労働者らの医療問題に取り組むことを目的に「外国人健康医療相談室」がスタートすることになった。同病院は地域医療への先進的な取り組みで知られるが、外国人を対象とした医療相談窓口の開設は全国でも初めてといわれる試み。成果が期待されている。

同病院の佐々木真爾副院長によると、相談室の開設は、現実に増え続ける
外国人患者の増加に対応した措置。同病院には、出稼ぎの日系人やタイ、フィリピンなど東南アジアからの外国人労働者が救急医療患者として運び込まれるケースも数多い。
このため、同病院は今年6月、外国人医療問題小委員会を設置。「言葉の壁を取り除き、相談の内容によって適切な医療機関を紹介する」ことを目的に、相談室開設を検討してきたという。

相談は当面、月1回、毎月第1木曜日の午後6時から8時。相談料は100円。様々な国籍の患者に対応するため、タイ語やポルトガル語、スペイン語などの通訳と医師が一組となって、相談に応じることにしている。


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昨年冬、県東部の総合病院をナイジェリア国籍の男性(30)が訪れた。
悪性リンパしゅが進行、全身が衰弱していた。その場で入院し2週間の治療を受けたが、回復の見込みは立たず、病院は本人の意思を尊重して帰国させることにした。

ところが、男性の持っていたのは偽造パスポート。旅券を手に入れるため、主治医とソシアルワーカーは大使館に1週間通い詰め、やっとのことで母国に送り出した。
後には医療費53万円、帰国手続き費用70万円の未回収金が残された。来日して2年たっていたが定職がなく、医療保険にも入ってなかったからだ。

「お金を持っていないからといってほうってはおけないから、、、」。
この医師は複雑な心境を語る。
未払い金の中には、交渉に駈けずり回った医師やケースワーカーの人件費はもちろん、交通費さえ含まれていない。
病院は「せめて医療費だけでも」と、県に補てんを申請するつもりだ、、、

【毎日新聞 埼玉県版 浦和支局・藤後野里子  1995年3月6日】
外国人未払い医療費対策事業 望まれる抜本的対策 不況反映、増える無保険での雇用

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