【現代思想とジャーナリスト精神】

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文科省の名古屋市中学校への調査の問題の中枢はなにか

2018-03-16 20:40:29 | 政治・文化・社会評論

2018/03/16         
         櫻井 智志                  


 NHKニュースの公正な報道をもとに、林文科大臣の公式見解と広田照幸教授の見解を中心軸において「政治の論理」でなく「教育の論理」として考えた。


 林文部科学大臣は16日の会見で、メールについては誤解を招き、担当者を注意したことを明らかにした。だが今回、文部科学省が中学校の授業に対して行った調査は法令では適切だったと述べた。

 根拠は「地教行法」。48条は、文部科学大臣が都道府県に対して学校の教育課程や学校運営に対し指導助言援助ができると記され、53条はその権限の実施にあたり、必要な調査を行うことができるとされている。

 ただしこれらを行使する目的は「教育の事務の適正な処理を図る必要がある時」と書かれている。文部科学省は「前川氏が天下り問題において違法行為があり辞任した人物」、事実確認が必要と説明した。授業自体は「総合的な学習の時間」授業で、文科省も具体的法令違反は確認していないと認めている。

 日本教育学会会長でもある広田照幸日大教授(教育行政)は今回の事件について、NHKのインタビューにこう述べている。

「国の地方の教育行政への関わりは、基本的に抑制的であまり口を出さないのが基本だ。学校の教育内容は教育委員会の管轄であり、何より個々の学校が責任を持って行うものだ。それに対し、明確な法律違反の疑いもないまま授業内容にここまで質問するのは明らかに行き過ぎだ」。

「行政が必要以上に学校をコントロールすることになりかねず、現場は国からの指摘をおそれて萎縮し、窮屈になってしまうのではないか。国があら探しするような調査をかけることは教育の不当な支配にあたると解釈されてもおかしくない」。


 以上を通して、教育の国家の指導のありかたを考えた。ただ、今回の問題の報道を追跡していて、与党公明党井上幹事長や河村名古屋市長もはっきりと批判し、文科省内部からも批判が出ている。教育の論理から見ると、あまりに低次元である。さらに、名古屋市中学校へ問い合わせの文科省のメール中に、講師の文科省元事務次官前川喜平氏を「出会い系バーに出入り」は,菅官房長官以来の名誉毀損事実無根のデマゴギーである。ここまで来ると、政権に対してイエスマンでない人間に対する見せしめとおどしの、政治的動向としか言いようがない。「出会い系バー」云々と喧噪かまびすしい事柄の真実を世間に公表している前川喜平氏の事実を無視して、極めて意図的な作為にみちた虚言は、前川氏と世間に対して削除と謝罪とを表明すべき事柄である。人格形成に資する役所である文科省の見識を疑う。


【まとめ】

 戦後文部相には哲学者天野貞祐や永井道雄らがいた。戦後文部省官僚には、重松鷹泰、勝田守一、倉澤栄吉ら後に日本の教育界をリードする一級の大学教師・学者としてご活躍された錚々たる人物がいた。
 文科省になってからも大学教授・教育啓蒙家の寺脇研、国立教育政策研究所長・群馬県立女子大学長となる富岡賢治らがいる。そして前川喜平は現在の最良の官僚の1人。
 違法スパイ行為もどきの愚行を指示した官僚とそれを法令からは適切と弁護して、教育原理に関しての一般的常識を欠き知見の狭さをさらけだした林文科相は現職である。日本の教育行政史上に、取り返しのつかない失態を残したことだけは言えよう。











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