【現代思想とジャーナリスト精神】

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新型コロナウイルス対策のための特措法改正に反対する緊急声明 宇都宮健児さん記者会見

2020-05-19 19:32:10 | 声明
<宇都宮健児さんの会見要旨>
もともと民主党政権下で成立した「新型インフルエンザ等対策特別措置法」について、
2012年3月22日、日弁連会長として宇都宮健児さんは、以下の声明を出しています。
今回の改正についてもそのまま当てはまる法案であり、断固反対するものです。


今回の改正のもとになる「新型インフルエンザ等対策特別措置法」というのは、民主党政権下で成立しているわけですけど、この法案が審議されている時に、私は日本弁護士連合会の会長をしていまして、この法案に反対する会長声明を2012年3月22日に出しております。

(参照)https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2012/120322.html
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公表資料>会長声明・日弁連コメント>year>2012年>新型インフルエンザ等対策特別措置法案に反対する会長声明
新型インフルエンザ等対策特別措置法案に反対する会長声明
政府は、2012年3月9日、新型インフルエンザ等対策特別措置法案(以下、「本法案」という。)を国会に提出した。

本法案には、検疫のための病院・宿泊施設等の強制使用(29条5項)、臨時医療施設開設のための土地の強制使用(49条2項)、特定物資の収用・保管命令(55条2項及び3項)、医療関係者に対する医療等を行うべきことの指示(31条3項)、指定公共機関に対する総合調整に基づく措置の実施の指示(33条1項)、多数の者が利用する施設の使用制限等の指示(45条3項)、緊急物資等の運送・配送の指示(54条3項)という強制力や強い拘束力を伴う広汎な人権制限が定められている。


このような人権制限は、その目的達成のために必要な最小限度にとどめられなければならないことはいうまでもないが、本法案においては、その必要性の科学的根拠に疑問がある上、人権制限を適用する要件も、極めて曖昧である。


すなわち、本法案の多くの人権制限の前提となる「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」の要件は、「新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章において同じ。)が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態」とされ、具体的要件は政令に委任し、法律上は抽象的な定めがなされるにとどまっている。政府の新型インフルエンザ対策行動計画(2011年9月20日)によれば、新型インフルエンザの被害想定の上限値は、受診患者数2500万人、入院患者数200万人、死亡患者数64万人という極めて大規模なものとされ、このような被害想定が、『万が一に備える』との考え方により安易に用いられれば、本法案の上記要件を充足するものとたやすく判断されてしまうおそれがある。そもそも、この被害想定は、1918年(大正7年)に発生したスペインインフルエンザからの推計であるが、当時と現在の我が国の国民の健康状態、衛生状況及び医療環境の違いは歴然としており、こうした推計に基づく被害想定が科学的根拠を有するものといえるのか疑問である。



また、新型インフルエンザ等緊急事態宣言に当たり定められる緊急事態措置の実施期間の上限を2年(32条2項)とし、更に1年の延長が可能としている(同条3項)ことは、その人権制限の内容に照らして、長きに過ぎる。宣言後に緊急事態措置を実施する必要がなくなったときには速やかに解除宣言をするとされているが(同条5項)、これらの判断を政府に委ねるのみでは全く不十分である。新型インフルエンザ等緊急事態宣言には国会の事後承認を要するものとするとともに、期間の上限はより短いものとし、国会の事前承認を延長の要件とすべきである。



さらに、個別の人権制限規定にも、多くの問題がある。



特に、多数の者が利用する施設の使用制限等(45条)は、集会の自由(憲法21条1項)を制限し得る規定であるが、その要件は、「新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるとき」(45条2項)という抽象的かつ曖昧なものであり、その対象も、「政令で定める多数の者が利用する施設」とされているのみで、極めて広範な施設に適用可能な規定となっている。



他方で、一時的な集会などを制限することが感染拡大の防止にどの程度効果があるのかについては十分な科学的根拠が示されておらず、効果が乏しいとの意見もあるところであり、制限の必要性にも疑問がある。そのため、感染拡大の防止という目的達成に必要な最小限度を超えて集会の自由が制限される危険性が高い。



また、指定公共機関に対する総合調整に基づく措置の実施の指示(33条1項)は、日本放送協会(NHK)が指定公共機関とされ(2条6号)、民間放送事業者も政令により指定公共機関とされ得る(同号)ことから、これら放送事業者の報道の自由(憲法21条1項)を制限し得る規定であるが、その要件である「第20条第1項の総合調整に基づく所要の措置が実施されない場合」にいう総合調整の内容は全く不明確であり、また、なし得る指示の内容についても、「必要な指示をすることができる」とされ、具体的な限定は全くなされていない。表現の自由に対する規制が可能な条文としては、曖昧に過ぎるといわざるを得ない。むしろ、本法案の適用により国民の人権が広範囲に制約されることに鑑みれば、法適用の根拠及び各措置の結果等については随時全面的に情報開示を行い、専門家らを含む第三者が広く検証できるようにすべきである。



当連合会は、去る3月2日の会長声明で、本法案に先立って公表された「新型インフルエンザ対策のための法制のたたき台」に対し、2009年に発生したA型H1N1型インフルエンザに対し、その危険性が不明な時点で「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」上の「新型インフルエンザ等感染症」に該当するとし、その危険性が季節性インフルエンザと同程度であることが判明した後も適用を続けられたという経緯にも鑑み、新型インフルエンザ特措法についても、その拡大適用が懸念されることを指摘して、慎重な検討を求め、性急な立法を目指すことに反対を表明した。しかるに、本法案は、上記のとおり、科学的根拠に疑問がある上、人権制限を適用する要件も極めて曖昧なまま、各種人権に対する過剰な制限がなされるおそれを含むものである。



よって、当連合会は、本法案に反対の意を表明する。



2012年(平成24年)3月22日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児

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大変な人権の制限を伴う緊急事態宣言に関して、必要性等について科学的根拠が明らかにされてないということ。緊急事態宣言っていうのは、宣言されると最長2年、さらに1年延期されるということになっています。

この緊急事態宣言は、国家における事後承認を必要としていない、延長のときの国会の事前承認も必要としていない。それを必要とすべきであるというような提言したのですが、残念ながらこの特措法にはそういう要件が入っていない。だから内閣総理大臣が宣言すれば国会の同意が無くても大幅な人権制限、人権が制限されるような緊急事態の様々な措置が行われることになっております。
まずここが非常に問題であると思っています。

国会の承認に関しては、「災害対策基本法」という法律があるんですけれど。
災害対策に関して、内閣総理大臣は災害緊急事態の布告ということが災害対策基本法の105条ででできるようになっていますが、この災害対策の緊急事態の布告については「20日以内に国会の承認を求めなければならない」という規定になってます。それから国会の不承認の議決があったときは、条項を廃止する。
こういう緊急事態の布告について国会が厳しくチェックするようなシステムができてますけれど、この特措法にはそういう国会のチェックが全く働かないで内閣総理大臣の一存で、こういう厳しい人権制限が伴うことが行われる前提になっているということですね。

それから、感染症対策について。
それをやることが本当に科学的に効果があるのかどうか、科学的根拠がですね、全く示されていない。
この間の一斉の全国小中学校の休校とか、イベントの中止等についても、先ほど検査が十分やれてないということを言われましたけど、休校やイベント中止等をやることが感染防止にどのような効果があるのか科学的な根拠は説明されてないんですよね。

だから多くの国民が不安に感じているんだろうと思いますけど、こういう強力な人権制限、制約を伴うようなことをまったく根拠がなく総理の一存でやるということは、はたして感染防止に役立つかどうかもわかりませんし、そのことで様々な制約がもたらされるということで、これは私たちとしては断固反対するという立場で、日弁連の会長としても声明を出させてもらいましたし、この声明は今回の改正等にもそのまま当てはまると考えています。


以上

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