高木仁三郎氏(2000年死亡)は物理学者。福島原発等に『考えられる事態とは、地震とともに津波に襲われた時 』を警告していた。老朽化原発についても、強い警告を出している。高経年原発の復活の動きがある中、彼の警告を聞くべし、著書『原子力神話からの解放』
原子力発電所の老朽化問題
A: 原子力発電所の老朽化に対する高木仁三郎氏の発言
高木仁三郎(1938年7月18日 - 2000年10月8日)は、物理学者、専門は核化学。理学博士(東京大学)。原子力発電の持続不可能性等に警告を発した。特に、地震の際の原発の危険性を予見し地震時の対策の必要性を訴えた。
1995年、『核施設と非常事態 : 地震対策の検証を中心に』] を、「日本物理学会誌」に寄稿。「地震」とともに、「津波」に襲われた際の「原子力災害」を予見。
「地震によって長期間外部との連絡や外部からの電力や水の供給が断たれた場合には、大事故に発展」するとして、早急な対策を訴えた。
福島第一原発 について、老朽化により耐震性が劣化している「老朽化原発」であり、「廃炉」に向けた議論が必要な時期に来ていると1995年の時点で指摘。 加えて、福島浜通りの「集中立地」についても、「大きな地震が直撃した場合など、どう対処したらよいのか、想像を絶する」とその危険に警鐘を鳴らしていた。
『考えられる事態とは、地震とともに津波に襲われたとき 』
『原子炉容器や1次冷却材の主配管を直撃するような破損が生じなくても、給水配管の破断と 緊急炉心冷却系の破壊、非常用ディーゼル発電機の起動失敗といった故障が重なれば、メルトダウンから大量の放射能放出に至るだろう』
『老朽化原発が大きな地震に襲われると、いわゆる共通要因故障(一つの要因で多くの機器が共倒れする事故)に発展し、冷却材喪失事故などに発展していく可能性は十分ある』
(出典:ウィキペディア)
高木仁三郎氏は、2000年8月『原子力神話からの解放』を出版、これが2011年講談社α文庫になっている。
ここでの原子力発電所経年問題への発言。
・原発の運転年数との関連で表(原子力発電所の事故・故障)を見ていくと。顕著に判ることがあります。それは、運転年数の少ない原発と、その一方で運転年数が二十年以上の原発に、事故・故障が極めて多いという事実です。事故の内容を見ると、構造物の損傷であるとか、ひび割れであるとか、腐食による漏洩に至るまでさまざまですが、このようなトラブルが運転の長い原発には多くなっています。
日本の原発は平均寿命は16年あたりの所にあって(注:1999年の時点)、16年だとトラブルを起こすことが意外と少なく、運転年数が20年以上になると、トラブルがみられるようになってきます。
・原発全体は膨大な配管とバルブの集合体です。バルブは何万という数に及びますし、配管も総延長が数キロにも及んでしまいます。
・原発の老朽化は一般に、圧力容器の脆化、つまり圧力容器がどれ位脆くなったかで判断されます。
・さらに一つ一つの故障が単独で起こっているうちはまだいいのですが、老朽化した原発ではさまざまなトラブルが増えてきますから、いくつものトラブルが重なって起こる可能性があります。二つの小さなトラブルが一つの事故になって、それが大事故に発展していく可能性が否定できません。大事故における、たとえば測定機器の感度だとか、迅速な対応なども老朽化した原発では弱くなっていく可能性が強いので、本当に大事故になる可能性があると思います。
これから2000年にかけて、運転開始から30年を超える原発が二基、五基、七基というふうに増えてきます。それまでに原発を止めないと、40年くらいの寿命をもた原発がますます増えてしまいます。そういう時代に大きな原発事故が起こる可能性を私は本当に心配しています。
B:原子力発電の延長を主張する人々に、老朽化による事故の可能性をどれ位考慮しているでしょうか。
参考 産経新聞「【主張】高経年原発の復活 脱炭素社会への先導役だ」.4.29
運転開始から40年を超えた「高経年原発」の再稼働に向けた地元同意プロセスの最後の扉が開かれた。
福井県の杉本達治知事が同県内に立地する関西電力の美浜原発3号機(美浜町)と高浜原発1、2号機(高浜町)の運転開始に同意したことによる前進だ。
3基の原発は平成28年に原子力規制委員会による審査に合格しており、60年運転が可能な20年間の運転延長が認められていた。
審査合格後の再稼働には地元同意が必要で、立地地域の美浜町と高浜町に続いて28日、杉本知事の同意も得られた。
東京電力福島第1原発事故を受けて定められた原則40年の原発運転期間を超えて再稼働が実現する国内初の例となる。
かつて54基を数えた国内の原発は福島事故後、33基にまで減少した。再稼働を果たした原発は、わずか9基にすぎない。これまでのところ、政府は原発新増設の計画を示していない。
菅義偉首相は「2030年度までの温室効果ガス46%削減」を表明したばかりだが、それまでに約10基の原発が運転開始から40年を迎えてしまう。
日本がこの国際公約の達成に近づくためにも、40年超えの認可を獲得する原発が後に続くことが必要だ。関電はその先導役を務める重責も担うことになる。無事故は言うまでもなく、不祥事の再発もあってはならない。
40年以上の運転をする原発に対して「老朽」の言葉が冠せられることが多いが、この表現は当たらない。運転開始から30年を迎えた時点で大規模な点検を行い、計画的な機器の取り換えなどで新品に近い状態を保っている。
交換が難しい原子炉圧力容器は鋼材の劣化がないことを厳密に確認した上での運転延長だ。