【現代思想とジャーナリスト精神】

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【沖縄タイムス社説】転載

2023-09-20 20:28:31 | 転載・政治社会と思想報道
[社説]玉城知事国連演説 平和の権利 世界に訴え
2023年9月20日 5:01


 米軍基地が集中し、平和が脅かされ、意思決定への平等な参加が阻害されている-。玉城デニー知事が18日(日本時間19日未明)、スイス・ジュネーブで開かれた国連の人権理事会で、沖縄を取り巻く基地問題の実情を訴えた。




 日本政府は選挙や県民投票で示された沖縄の民意を顧みず、国土の0・6%に過ぎない沖縄に在日米軍専用施設の7割を封じ込めている。日本政府に異議を唱えても米国に物申しても、らちが明かないからの国連である。国際社会に訴えざるを得なかった現状を日米両国の政府と国民は真剣に考えてほしい。

 沖縄県知事の国連演説は、2015年の故翁長雄志前知事に続いて2回目となる。

 翁長氏は、米軍基地から派生する事件・事故や環境問題がいまだ県民生活に大きな影響を与えているとして「沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている」と訴えた。

 翁長氏の演説から8年。「台湾有事」を念頭に軍拡が進む中での登壇である。玉城知事は、軍事力の増強は日本の周辺地域の緊張を高めることが懸念され、「沖縄県民の平和を希求する思いとは全く相いれない」と指摘。16年に国連総会で採択された「平和への権利」を具体化するよう、関係政府に外交努力の強化を要請した。

 時間にして1分半ほどだったが、沖縄の声をないがしろにする現状を告発し、基地問題を巡る不条理への理解と協力を求めた。多くの県民の声を代弁した重い訴えであった。

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 玉城知事の演説に日本政府代表部は即座に反論した。沖縄への米軍駐留は地政学的な理由で安全保障上の必要性があるとして「差別的な意図に基づくものではない」と主張。普天間の返還については「辺野古が唯一の解決策」とした。

 新基地を巡っては、森本敏元防衛相が「軍事的には沖縄でなくてもいいが政治的には沖縄が最適」との見解を示したり、知日派の重鎮ジョセフ・ナイ元米国防次官補が「中国の弾道ミサイルの発達で沖縄の米軍基地は脆弱(ぜいじゃく)になった」と基地分散化を説いたりし、沖縄の「地理的優位性」は既に説得力を失っている。

 普天間の返還合意から27年。辺野古の新基地建設には最低でもあと12年かかるとされ、その後の普天間返還は時期を見通せない。「辺野古が唯一」と繰り返すのは辺野古以外で解決を探ろうとしない政府の不作為である。

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 1960年12月、国連総会で、植民地主義の速やかな終結をうたう「植民地独立付与宣言」が採択された。琉球立法院は62年2月、同宣言を引用し、国連の加盟国が沖縄の復帰に尽力することを求める決議をした。

 復帰後、半世紀を経た今も、沖縄は広大な米軍基地を抱え、不条理に向き合い続けている。沖縄に基地負担を強いる差別の構図を訴える玉城知事と、「辺野古が唯一」一点張りの日本政府のどちらに正当性があるのか。世界の人々に沖縄の現状を知ってもらいたい。


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