「インターネット・カウンセリング」 ビルギット・クナッツ/ベルナルド・ドディエ共著 斎藤友紀雄監修/解説 2007年出版
斎藤友紀雄氏;
35年余り前、電話相談を始めた時と同じように、我々は今もなお、「インターネットで相談ができるのか」「インターネットで自殺が防げるのか」あるいは「ボランティアに何ができるのか」といった批判的疑問をしばしば受ける。しかし人間を援助する手段、技法、メディアをめぐって、どちらがよいかとかの「あれかこれか」の議論は不毛である。「東京いのちの電話」は創設の時から、電話と面接、専門家と一般市民、さまざまな機能と手段、さまざまな役割が連携することによって相乗的な効果を挙げてきた。
直接の来所はもちろん、電話でも自分の悩みを訴えることができなかった若者が、インターネットによってやっと治療にたどり着いた事例が最近は少なくない。ネット・コミュニケーションがなければ治療も出会いもあり得ない。
ドイツ全体で106センターがあり、7,500人の相談ボランティアが活動している。メール相談は全体の1/3ほどである(2007年時点)。
本文;
「相談とは、援助を求める人たちの自助の可能性を広げるという目標を持って、一人ひとりの個人的・社会的な状況に合わせていくものである」
1995年以降、私たちはEメールによる相談を実施する中で、このオンライン・コミュニケーションがいかに役立つものかを経験してきた。これまで見ず知らずの援助や支えを探そうとも思わなかった人たちが、私たちにメールをしてくれる。匿名性と確かな距離感が彼らに近さと信頼を抱かせている。
E相談の分野での成功は、書くことをベースにしたコミュニケーションに親しみ、しかも書くことを通して自己表現できる人たちによって行われるかどうかにかかっている。
相談員の資格
1)メールしてきた人に対するオープンな態度
興味と関心を持つ。相手を決めつけない。
2)自分の仕事を省察する能力
自らの限界を知っている。個人指導は不可欠。
我書く、故に我在り
物語る状況と物語られた状況
共感と自己一致には、クライエントの訴えに気づき、クライエントの世界と問題を理解し、そのことについて相手とコミュニケーションを取る能力がなくてはならない。
SETコミュニケーション
S(Support) 支持
“私はあなたのことを本当に心配しています”
E(Empathie)共感(同情ではなく!)
“きっと本当にひどい気分なのでしょうね・・・”
T(Truth) 率直さと真実性
“これこれのことが起きています・・・今後こうなるでしょう・・・そのために私にできることは・・・で、あなたはやってみようと思われますか?”
感想;
いのちの電話は電話で始まっています。いのちの電話は全国に49センターありますが、インターネット相談は、盛岡、仙台、奈良、福岡、愛媛、埼玉、東京のいのちの電話で行っています(現在)。
新しいことを始める時は、反対もありなかなか難しいのだと思います。
それが斎藤友紀雄氏の言葉なのでしょう。
「インターネットで相談ができるのか」
「インターネットで自殺が防げるのか」
電話がない時代は手紙が離れていた人のコミュニケーションでした。電話ができたことで、手紙よりも電話が重宝されるようになりました。そして今は電話よりもメールがよりコミュニケーションツールになっています。
新しいことは、既存の勢力以外のとことで起きると言われています。何故なら、既存の専門家は自分たちの専門を守ることに注力するので、そこから新しいことが出難いと言われています。
自分の専門を棄てて、新しいことにチャレンジして行くことで道が広がって行くのではないでしょうか。自分の専門を棄てて新しいことにチャレンジできる人こそ、本当の専門家なのだと思います。