もろともに なきてとどめよ きりぎりす あきのわかれは をしくやはあらぬ
もろともに なきてとどめよ きりぎりす 秋の別れは 惜しくやはあらぬ
藤原兼茂
一緒に鳴いて、旅立つ人をとどめておくれ、こおろぎよ。秋の別れは、名残惜しいものだから。
掛詞と言えるかどうかわかりませんが、「なきて」は別れを惜しんで作者を含む人が「泣く」のに合わせて、こおろぎに一緒に「鳴」いてほしいとの意。それでなくとも物悲しさを伴う秋という季節に別れが重なって、一層寂しさがつのります。
作者の藤原兼茂(ふじわら の かねもち)は平安時代前期の貴族にして歌人。名前は「かねもり」とも読むようです。古今集には、このあとの 0389 と本歌、計二首が入集しています。