漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0385

2020-11-18 19:05:11 | 古今和歌集

もろともに なきてとどめよ きりぎりす あきのわかれは をしくやはあらぬ

もろともに なきてとどめよ きりぎりす 秋の別れは 惜しくやはあらぬ

 

藤原兼茂

 

 一緒に鳴いて、旅立つ人をとどめておくれ、こおろぎよ。秋の別れは、名残惜しいものだから。

 掛詞と言えるかどうかわかりませんが、「なきて」は別れを惜しんで作者を含む人が「泣く」のに合わせて、こおろぎに一緒に「鳴」いてほしいとの意。それでなくとも物悲しさを伴う秋という季節に別れが重なって、一層寂しさがつのります。
 作者の藤原兼茂(ふじわら の かねもち)は平安時代前期の貴族にして歌人。名前は「かねもり」とも読むようです。古今集には、このあとの 0389 と本歌、計二首が入集しています。