をしむから こひしきものを しらくもの たちなむのちは なにここちせむ
惜しむから 恋しきものを 白雲の たちなむのちは なに心地せむ
紀貫之
別れを惜しむうちからもう恋しくなるものを、白雲の立つはるか遠くまであなたが旅立ってしまった後には、いったいどんな心地がするのでしょうか。
詞書には「人のむまのはなむけにてよめる」とあります。「むまのはなむけ」とは 0369 でもご紹介した通り、送別の宴のこと。まだ実際にお別れする前からこれほどの恋しい気持ちになるのに、いざ実際に遠く離れ離れになってしまったら一体どれほどの気持ちにになるのか、と、まさに最大級の惜別の辞ですね。