よをいとひ きのもとごとに たちよりて うつぶしそめの あさのきぬなり
世をいとひ 木のもとごとに 立ち寄りて うつぶし染めの 麻の衣なり
よみ人知らず
世を捨てて木々の元に立ち寄り、うつむく私が身に着けるものは、うつぶし染めの麻の衣なのであるよ。
第四句の「うつぶし」に、「うつぶす(うつむく、下を向く)」と僧衣を染める黒い染料の「うつぶし」を掛けています。後者は漢字で書けば「空五倍子」ですね。
68首を採録した巻第十九「雑躰」はこれで読み切り。明日からはいよいよ最後の巻、巻第二十「大歌所御歌」の歌群のご紹介です。