なみのおと けさからことに きこゆるは はるのしらべや あらたまるらむ
波の音 けさからことに 聞こゆるは 春のしらべや あらたまるらむ
安倍清行
波の音が今朝は違って聞こえるのは、立春を迎えて春の調べにあらたまったからであろうか。
詞書には「からことといふ所にて、春の立ちける日よめる」とあります。二句目の「けさからことに」のところ、歌意に沿えば「今朝から異に」ですが、ここに地名の「からこと(唐琴)」が詠み込まれています。ここからしばらく、地名を詠み込んだ物名歌が続きます。
作者の安倍清行(あべの きよゆき/きよつら)は平安時代前期の貴族にして歌人。古今集には本歌と 0556 の二首が入集しています。