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漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 370

2024-04-20 05:39:04 | 貫之集

山里の桜を見る

まだしらぬ ところまでかく きてみれば さくらばかりの はななかりけり

まだ知らぬ ところまでかく きてみれば 桜ばかりの 花なかりけり

 

山里の桜を見る

見知らない山里までこのように来てみると、桜ほど良い花はないということがわかった。

 

 山里の満開の桜は、都のそれとはまた次元の違う美しさなのでしょう。
 この歌は、風雅和歌集(巻第二「春中」 第164番)に入集おり、そちらでは第三句が「きてみれど」とされています。


貫之集 369

2024-04-19 04:59:39 | 貫之集

古里にいたれり

はなのいろは ちらぬまばかり ふるさとに つねにもまつぞ みどりなりける

花の色は 散らぬ間ばかり 古里に つねにも松ぞ 緑なりける

 

古里についた

花の色が美しいのは散らない間のわずかの期間だけであるが、古里の松はいつも緑であるよ。

 

 この歌は後撰和歌集(巻第一「春上」 第43番)に入集していますが、そちらでは藤原雅正(ふじわら の まさただ/中納言藤原兼輔の長男)の作とされています。


貫之集 368

2024-04-18 04:56:41 | 貫之集

女、柳を見る

あをやぎの まゆにこもれる いとなれど はるのくるにや いろまさるらむ

青柳の 繭にこもれる 糸なれど 春のくるにや 色まさるらむ

 

女が柳を見ている

繭にこもっている青柳の糸ではあるけれど、春が来るからだんだんと色づいてきている。

 

 第四句「くる」は「(春が)来る」と「(糸を)繰る」の掛詞になっています。
 まだ色味の薄い柳を繭から紡ぎ出される前の糸に喩え、それが春の訪れとともに青く色づいて行くさまを詠んでいますね。


貫之集 367

2024-04-17 05:23:25 | 貫之集

貫之集 第四

 

天慶二年四月、右大将殿御屏風の歌二十首

人の家に紅梅あり

くれなゐに いろをばかへて むめのはな かぞことごとに にほはざりける

紅に 色をばかへて 梅の花 香ぞことごとに 匂はざりける

 

天慶二年(939年)四月、右大将殿の御屏風の歌二十首

人の家に紅梅がある

紅梅は色が紅に代わって美しいが、香りがまた白梅とは違って匂わないのだった。

 

 「右大将」とは藤原実頼(ふじわら の さねより)のこと。また、「二十首」とありますが、実際には 388 まで二十二首採録されています。
 紅梅は白梅と違って匂わない、と歌われていますが、そうなのでしょうか。調べて見ると、まったく匂わないということはないですが、実際、白梅は紅梅に比べて香気が強いとの研究結果もあるようです。 

 この歌は後撰和歌集(巻第一「春上」 第44番)に入集していますが、そちらでは凡河内 躬恒作とされています。


貫之集 366

2024-04-16 05:18:29 | 貫之集

まつがえに つるかとみゆる しらゆきは つもれるとしの しるしなりけり

松が枝に 鶴かと見ゆる 白雪は つもれる年の しるしなりけり

 

松の枝に、鶴かと思われるほどに積もった白雪は、長い年月のしるしなのですよ。

 松と鶴と雪の組み合わせは 051074278 にも登場した、こちらも定番ですね。


 今日で366番。今年、2024はうるう年でしたので、貫之集のご紹介を始めてからちょうど1年たっということになります。毎日たくさんの皆さんにご来訪いただき、ありがとうございます。そしてこの366番で「貫之集第三」の読み切り。明日からは「第四」、天慶期(938~947年)の屏風歌のご紹介です。
 引き続きよろしくお願いします。 m(_ _)m