『名も無く豊かに元気で面白く』

読んだ本、ニュース、新聞、雑誌の論点整理、備忘録として始めました。浅学非才の身ながら、お役に立てれば幸いです。

❝邯鄲の夢❞習体制の安泰≒中国バブル崩壊

2020-11-22 10:54:47 | 日記
中国習近平国家主席は、世界の人の往来を回復させるため、中国の独自システム ❝交通機関や飲食店の利用時にPCR検査の結果などをスマートフォンに表示して、健康状態を証明する仕組み「健康コード」❞を国際的に普及させることを提案していますが、北京、上海、深せんの住宅価格が平均年間所得の40倍を超え中国の不動産市場が「不安定のピーク」にあり、コロナ禍で調整が必要・不可避との専門家の意見です。中国不動産バブルは毎回ピークを過ぎ、下落するとの意見が出てきていますが資本主義社会とは違い、体制の安泰を第一に考える政府が国民の不満が爆発するマンション価格の暴落を容認することは難しい。そこで、経済再建のため、現体制化で世界中の人の往来を再開させようと考えているのでしょう。いずれにしても主要都市住宅価格が平均年間所得の40倍は一般生活者の限界を遥かに超えており、周体制の目論見は❝邯鄲の夢❞で終わると筆者は考えます。
以下抜粋コピー
 中国共産党の5中全会(第19期中央委員会第5回全体会議)で、2035年に1人当たりGDPを先進国並みにするという長期目標が示された。習近平総書記が目指す長期政権への布石だろう。だが、経済停滞につながりかねない「不動産バブル」崩壊が、足元に迫っている。  「またか」と思うかもしれない。中国バブル崩壊論は出る度に消えた。
だが、元IMFのチ-フエコノミストで、過去800年の経済危機の歴史を分析した「This Time is Different」(邦題「国家は破綻する」)の著者、ケネス・ロゴフ米ハーバード大教授の見解なのだ。  中国の不動産市場が「不安定のピーク」にあり、調整が必要・不可避だと。8月に出たロゴフ教授の共著論文「PEAK CHINA HOUSING」の要点を紹介する。
 ▼30年以上続く中国の不動産ブームは前例のないもので、北京、上海、深せんの住宅価格は、平均年間所得の40倍を超えた。住宅が7割を占める不動産投資は、中国の経済発展の主エンジンで、GDP比13%超、密接な関係がある建設部門を合わせるとGDPの3割に迫る。
 ▼資産(住宅、株式、債券など)に占める住宅の比率は、米国の35%に対し、中国は78%。中国の住宅ストックの市場価格は米国の2倍超、欧州の3倍超に膨らんだ。バブル期に米国の2倍超だった日本の住宅ストックは、今では3分の1以下に縮小している。
 ▼住宅空き家率(17年)は北京、上海などの1線都市で17%、2、3線都市で20%以上。家計負債のGDP比は08年の18%から18年の60%に、日本や欧州並みまで上昇した。住宅需要は鈍化、供給は過剰で、先行き住宅購買年齢層の人口減少、所得の伸び鈍化が見込まれる。不動産活動が20%縮小すると、金融部門への影響を考慮しなくてもGDPを5~10%下押しする。  バブル崩壊の予兆はコロナ禍前からある。アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)は昨年末の同郷企業人の会合でスピーチし「19年は企業家には大変な年だった。1日に5人から融資を求める電話があった。1週間に不動産を売りたいという友人が10人いた。これはまだ難局の始まりかもしれない」と語り、注目された。 
 8月には、約13兆円の負債を抱えるとされる不動産大手の恒大集団の経営不安説が流れた。手持ち不動産の3割引き販売に踏み切り、一部投資家との合意で資金繰りをつけたとされるが、経営不安説はくすぶり続ける。  習近平政権発足前の12年2月、世界銀行と中国国務院発展研究センターが共同で発表した「2030年の中国」リポートは、中国が中所得国のワナを避け、「近代的で調和がとれ創造性ある高所得国」になるための改革案を提言した。 
 肝は「市場経済化」の徹底。リーマン危機後の景気対策がインフラ投資主導になった結果、国有企業が幅をきかせ民間企業を圧迫する「国進民退」の弊害が出ていた。赤字企業比率が高く、生産性で民間企業に見劣りする国有企業の民営化が、提言の柱だった。
13年に習近平国家主席、李克強首相の体制が発足して間もなく「リコノミクス」が流行語になった。李首相にちなみ、安定成長へ軟着陸するための構造改革優先の政策を意味し、英投資銀行が名付けた。江沢民政権で朱鎔基首相が、胡錦涛政権で温家宝首相が経済政策を仕切ったので、習政権では経済学博士号をもつ李首相が仕切ると見たのだが「リコノミクス」の語はすぐ消えた。  習近平が自ら経済政策も仕切ろうとしたからだ。民営化提言は無視され、国有企業は「より強く、より優秀に、より大きく」と、国有企業同士が合併・強大化する例が増えた。他方、外資系や上場企業にも社内に共産党委員会の設置を迫る。まるで「党進民退」だ。  インフラ投資の重視も変わらない。高速鉄道網は短期間に約3万キロに拡大したが、中国国家鉄路集団は90兆円近い債務を抱え、黒字路線は数えるほどだ。  「防火長城」と呼ばれるネット検閲システムの強化、AI付き監視カメラ網、個人信用スコア制など「デジタルレーニン主義」とも評される監視国家化も進む。米国の華為技術(ファーウェイ)排除に始まる「ハイテク冷戦」は、中国が種をまいた面がある。 
 5月の全人代後の記者会見で、李克強首相が「中国には月収1000元(1.5万円)以下の人が6億人いる」と明かした。今年は13次5か年計画の最終年で、小康社会(ややゆとりのある社会)の実現が目標だった。習近平路線への、あてこすりのように聞こえた。  
米国の政治学者イアン・ブレマーは「国民の繁栄と体制の安泰のどちらかを選べと迫られたら、国家資本主義の政府は判で押したように体制の安泰を選ぶ」と述べている。習近平は、その選択を体現する。
不動産バブルが崩壊すれば、「15年で先進国」という夢は幻になりかねない。中国は習長期政権とともに、長期停滞に迷い込むかもしれない。
 ■土谷 英夫氏ジャーナリスト
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