今回の米大統領選では郵便投票の影響で結果判明が長引く可能性がある。米国の郵便事情に日本ほどの信頼性はなく、二重投票や投票用紙の盗難リスクが囁かれていた。❝ 古代哲学者プラトンによる『国家』の中に、今の社会を予言するような描写がある。曰く、父親は息子を恐れ、息子は両親の前で恥じる気持ちも恐れる気持ちも持たない。教師は生徒を恐れてご機嫌を取り、生徒は教師を軽蔑する。若者は年長者と同様に振る舞い、年長者は若者に合わせてご機嫌を取る。犬は飼い主のように行動し、馬でさえも出会う人をよけずにぶつかってくる──。 自由と平等が広く行き渡る社会では、すべての人が強い権利意識を持つようになる。すると、ほんの少しの抑圧にも我慢ができず、エリート層への不満をためる。そこに、高い大衆人気を誇るポピュリストが颯爽と現れ、不満をためる民衆を熱狂的な渦に巻き込む。そして、独裁者が生まれていく。僭主独裁制が生まれるのは民主制以外にはあり得ない。それを語るために、自由と平等を手にした人間の姿を描いたのだ。❞ 社会的分断が加速している米国はプラトンが予言した民主制の最終形に近づいているように見える。このまま社会の亀裂が拡大し続けるのか、市民を熱狂させる独裁者が現れるのかは分からない。今回の大統領選の勝者が米国を融合させることはなく、人々の中に残ったしこりが今後4年にわたってさらなる火種になり、現在の民主制崩壊へ走り出すことです。
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これまでの米大統領選での開票作業は、主に投票所で投じられる票を機械が自動的に集計するというシンプルなものだった。だが今年の大統領選では、新型コロナウイルスの流行を受け、郵便投票が大幅に増加。国内に数千ある選挙区で開票の手順や規則がそれぞれ異なることも相まって、各地で人手不足や技術的・法的問題が生じている。 3日に行われる今年の米大統領選で、共和党の現職ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏と民主党候補ジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領の得票数が僅差となった場合、2000年の選挙のように法廷闘争に発展し、最高裁にまで持ち込まれる可能性があると広く予想されている。
世論調査からは、郵便投票を選ぶ民主党支持者の割合が共和党支持者よりもはるかに多いことが分かっており、共和党は各地で郵便投票の制限を目指した法廷闘争を繰り広げている。
近年の選挙では、郵便で投じられた票の約1%が無効となっているが、今回は郵便投票の増加によりその割合は増える見通しで、有効性が問われる票の数は数十万に上る可能性がある。2000年の大統領選では、フロリダ州でのわずか537票の差が勝敗を分けた。
■投票の全体像は?
2016年の選挙では約1億3900万人が投票し、うち3300万人が郵便で投票した。今年の投票者数は1億5000万人を超える可能性があり、うち半数が郵便投票を選ぶとも予測されている。
■郵便投票の仕組みは?
郵便投票の制度は州によって異なる。大半の州では、記入した投票用紙を返信用封筒に入れ、封筒に署名をした上で返送するか、指定の投票箱に入れる。一部の州ではプライバシー保護用の内袋があり、投票用紙をこれに入れて封筒に入れる。さらに封筒に立会人の署名と連絡先を記入する必要がある州もあり、中でも関連法が特に厳しいアラバマ州では立会人2人の署名が必要とされる。
■票はいつ集計される?
投票所で直接投じられた票は自動的に集計され、開票結果は大抵、投票締め切りから数時間後、あるいは早くて1時間以内に発表される。しかし郵便投票の集計は煩雑で、州によって規則は異なる。
一部の州では郵便投票による票は選挙日までに到着した分のみを集計する。一方、投票日までの消印があれば最大10日後に到着した分も集計する州もある。米郵政公社(US Postal Service)への負担を考慮し、今年は票の到着受付期間を延長したところもある。
■法廷闘争も
激戦州では、民主・共和両党が法務チームを増強してきた。トランプ氏はすでに、投票日を過ぎて届いた郵便投票の票は信頼できないと宣言している。
最終結果が僅差となれば、2000年のフロリダ州のように、複数回の再集計を求める声が出るだろう。そうなれば両党は票の一つ一つについて有効性を争い、正しい消印・署名があるか、住所は正確か、不備は合法的に訂正できるのか、それとも、もう遅いのかといった点が検証されることになる。