『名も無く豊かに元気で面白く』

読んだ本、ニュース、新聞、雑誌の論点整理、備忘録として始めました。浅学非才の身ながら、お役に立てれば幸いです。

感覚の変化に追いつけない「序盤のエジソン」VS王将戦最年少五冠に王手なるか「AIの申し子」

2022-01-25 07:42:13 | 日記
藤井聡太竜王が2連勝した王将戦、第3局は29、30日に栃木県大田原市の「ホテル花月」で行われる。渡辺王将は
得体の知れない物の怪(け)に取りつかれているのだろうか。渡辺にとって91手目▲4四歩以降は、いわゆる「形作
り」。さくさくと手を進める姿からは物寂しさすら漂う。過去29期のタイトル保持を誇るつわものが、持ち味を発
揮できないまま投了せざるを得なかった。終局後、開口一番に悔いたのは指し掛け間際に藤井が2時間28分の長考
を経て8八に叩いた歩の処理だ「(53手目)▲同金と取ったのがちょっとまずかったかもしれない。その時は仕方
ないと思ったが、進んでみたら、そこを過ぎてから駄目にした気がしました」 感想戦では序盤を省略して、くだ
んの場面を徹底的に分析。まずは8八歩を無視して攻めに転じる変化を検討したが「うーん、難しい」。ならば本
譜の同金に手を戻しても、好転の筋を発見することはできなかった。「(敗戦への)レールに乗っちゃったんで
すかね…」と、3度に及ぶつぶやきは、静粛の対局室にむなしく響くばかり。第62期(13年)の初挑戦以来、今期
が7度目の王将戦7番勝負登場となる渡辺だが、開幕連敗は過去に一度もなかった。スタートダッシュを決めてタイ
トルを奪取・維持するスタイルが定着していただけに、想定外の滞留となる。 加えて藤井相手のタイトル戦は
20年7月16日の棋聖戦5番勝負第4局以来、実に6連敗の屈辱だ。通算成績もこの日で2勝10敗。無限の成長を遂げ
つつある新星との差を詰めるどころか徐々に広げられている。渡辺王将は4連覇を目指すが第2局は納得いかない
内容になってしまっただけに、第3局では気持ちを切り替えて、まず1勝を挙げたい。持ち時間は各8時間の2日
制で、先手は藤井竜王で第3局で一方的に王将戦に王手をかけるのか注目です。

以下抜粋コピー

藤井聡太四冠と渡辺明三冠の王将戦が話題になる中で、1人のタイトル経験棋士が引退ぎりぎりの戦いを強いら
れている。田中寅彦九段といえば、「序盤のエジソン」と同業者にリスペクトされたほどの革新的な作戦家と
て知られる。 大山康晴十五世名人の影響下にあって振り飛車が猛威を振るっていた70年代に、その決定的な対
策として居飛車穴熊を発掘。古い将棋にもあった言わばゲテモノ作戦に、研ぎ澄まされたプロ感覚を注入して練
りに練り上げ、「寅ちゃん流」にまで高めたことで27歳でのA級入りの原動力とした。 また、飛車先不突矢倉
の発明も田中によるものだった。飛車先の歩を一つで止めることで2五に桂馬を跳ねる余地を残す発想は以前か
らあったが、田中の工夫はさらにその先を行った。2七に空間をあけないことのメリットと、ほかの手を優先す
るスピード感で作戦勝ちを狙う構想を盤上に表現して、古典とも純文学とも言われた矢倉戦法に新しい可能性を
吹き込んだのだ。かつて棋聖を獲得した田中は今C級2組で A級に6期、竜王戦の最上級1組にも9期在籍し88
年には棋聖のタイトルも獲得した田中だが現在は順位戦の最下級、C級2組にいる。しかも降級点を2つ持っ
ていて、あと1つ降級点をもらうとその地位からも滑り落ちることになる。プロ棋士にも細かい定年制度があり
4月29日に65歳の誕生日を迎える田中は、いままさにその対象者となりかけている。「60歳以上でC級2組か
ら降級したら引退」の規定。つまり今年度の順位戦で田中が降級点を取ってしまうと、その引退規定に引っ
かかってしまうのだ。「その規定は、私が理事職のときに私自身が強く主張してできたものです。そこまで指
せたらもういいでしょう、と会議の場で言った記憶がありますが、それがピッタリ自分に返ってくるとは思い
ませんでした」「堅い、攻めてる、切れない」の3要素が、田中が居飛車穴熊を指すときの絶対の大局観だっ
た。 ところが、現代の将棋の頂点に君臨しているAIの形勢判断は、「堅い」を少しも評価しようとはしない。
 一時は「隙あらば穴熊」がプロ感覚の最先端となっていたはずだがいまは、例えば矢倉から穴熊への組み替
えを積極的に行なおうとするプロはいなくなってしまった。争点とのバランスを、玉将の居場所の調整でうま
くやるのがなによりも大事な時代だからだ。田中の発想はAIと同じ方向性だったのだが 矢倉で飛車先を突か
ない画期的な作戦も、進化を続けるAIにはまったく評価されなかった。序盤戦の指し手の優先順位が厳しく評
価されるという意味で、田中の発想はAIと同じ方向性だったのだが飛車先はズンズンと素早く伸ばすべしがい
まのAIの考え。全盛時の田中が面白いように勝ち星を稼いだ飛車先不突矢倉だったが、現代では真似る人がい
なくなった。「感覚の変化について行けていない自覚は、実は早い時期から感じていました。とはいえ、経験
という武器で自然にクリアできていくものだろうとも思っていたんですよ。しかし、そのスピードはあまり
にも速過ぎました」と、田中の嘆息だ。 AI導入の必要性を感じながら、大きく出遅れてしまった劣等感のよ
うな思いを乗り越えられずに、いまだに研究に取り入れられていない棋士が実は少なくないという。それを
アナログ世代デジタル世代と単純に色分けするだけで済む話ではなさそうだ。出遅れても、AIを玩具のように
可愛がって手の内に入れかけている森内俊之九段のような棋士も存在するのだから。田中の今年度の順位
戦は、8戦を終えて1勝7敗。53人の大所帯で、昇級3人降級点11人を争う戦いで、ここまで来てしまえば残
り2戦を連勝する以外に生き残る道はない。「2月10日の黒沢(怜生六段)戦が鬼勝負になります」とここで
やっと田中らしい前向な表情が戻った。相手はここまで6勝2敗と昇級の可能性を残しているデジタル棋士。
地位をかけた戦いはその内容にも大いに注目したい。
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