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「住宅ローン金利引下げ」も無反応!中国国民を苦しめ起業を阻む「政治優先姿勢」とは?

2024-10-11 04:59:30 | 日記
中国で国民の消費者心理が統計開始以来、過去最低の水準に落ち込んでいる。それに加えてマクロ経済の最新データも軒並み悪化し、まさに経済は“八方ふさがり”だ。
 9月下旬から中国政府は、新たな経済対策を矢継ぎ早に発表している。不動産支援策と、総額8000億元(約16兆円)もの株価対策をはじめ、中国人民銀行(中央銀行)は立て続けに金融緩和を実施した。9月26日には中央政治局会議を開催し、財政支出を増やしてGDP(国内総生産)成長率5%程度の目標の実現に取り組む姿勢も示した。
 中国では、不動産バブル崩壊による景気後退の危機感が高まっている。新たな政策の「規模」については、大方の予想を上回ったこともあり、株式市場の反応としては上昇傾向を示している。背景には、大手投資家が中国株を売り持ちにして、日本株を買い持ちにするオペレーションの巻き戻しがあったとみられる。
今回の政策パッケージの「内容」は、人々の自由な発想を生かし新しい需要創出をサポートするものにはなっていない。スタートアップ企業向けの投資ファンド業界では、「中国の民間企業の活力が、目の前で衰退していく」などと、かなり悲観的な見方もある。
 また、政府は不良債権処理にどう取り組むか、抜本的な措置も示していない。これは政策の調整が必要な措置であることは理解できるが、現状の政策内容で景気が下げ止まるかは疑問符が付く。追加の金融緩和や株価維持策が実施されたとしても、政治優先の政策方針が転換しない限り、債務問題の解決を目指すことは難しいはずだ。
8月の小売り、物価、新規の銀行融資、不動産販売や不動産投資、鉱工業生産、住宅価格などの各種データは軒並み、想定以上に悪化していた。そこで、政府はこれまでの政策をチューニングし、国債などの発行増加による財政支出の拡大と、金融緩和を進める方針を示さざるを得なくなった。それだけ、中国政府は追い込まれている。 
 新パッケージの主な狙いは、個人消費を下支えし、デフレへの懸念を払拭することだ。9月24日、中国人民銀行は、銀行の預金準備率を0.5%引き下げるなどの金融緩和に加え、既存の住宅ローン金利も平均で0.5%引き下げた。「国家隊」と呼ばれる政府系ファンドによる本土株の購入(株価支援策)は、リスク資産の価格を下支えし資産効果を高める可能性を持つ。同日、人民銀行トップが臨時の記者会見を開き、今後も必要に応じて対策を実施する方針を示した。
 他にも、中国政府は10月1日の国慶節の祝日までに、極貧層や孤児などに生活補助として現金を給付することも公表した。支給金額や対象者など詳細は不明だが、中国民政省(わが国の総務省に相当)によると、6月時点で中国国内には474万人の極貧層がいるという。なお、かつて中国政府は貧困の基準を年間純収入2300元(約4万6000円、2010年基準)としていた。
 さらに、これまでは控えてきた国債発行増発による中央政府の財政支出拡大の方針も示している。通常、中国政府は4月、7月、12月に経済の現状を点検し、当面のマクロ経済運営の政策指針を定めてきた。なので、9月の会議で経済政策を議論することは異例である。裏を返せば、それだけ中国政府は経済の現状を厳しいと認識しているのだろう。
問題は、不動産や地方融資平台の債務問題をどのように解消するかが見えないことだ。刺激策で需要を喚起する一方で、不動産デベロッパーの不良債権処理を進めないことには、銀行の収益性低下や、自動車をはじめとした重工業の過剰な生産能力など付随する問題の解決も難しい。
リーマンショック後、中国では民間のアリババやテンセントなどが急成長を遂げた。また、半導体関連の技術革新も目覚ましく、ファーウェイの設計開発や、中芯国際集成電路製造(SMIC)の製造技術に関して、半導体トップ企業である台湾積体電路製造(TSMC)との技術格差も縮まってきているという。これらの分野に明るい中国人ビジネスパーソンの成長意欲は旺盛だ。企業家の野心、自由な意思決定を政府がもっと認めれば、成長分野に経営リソースが再配分され、景気回復の萌芽も出ることだろう。
 しかし今回、中国政府は経済と社会への統制、IT先端企業への締め付けを緩める考えは示さなかった。企業家のリスクテイクを促す策も示さなかった。そこに、中国政府の「政治優先姿勢」が見て取れると指摘する経済の専門家は多い。振り返ると18年には中国で5万社を超える企業が設立されたようだ。中国内外のベンチャーキャピタルなどの投資ファンドは積極的に資金を供給した。ところが、24年1~8月の起業件数は260社程度だった。スタートアップ企業によるドル、人民元での資金調達市場は事実上の停止状態にあると考えられる。
 家計や企業は債務の返済を急ぎ、経済全体で需要は盛り上がりづらくなっている。その状況下で政府が追加の対策を打てば、国民は早くも次の策を催促し始めるだろう。利下げや量的緩和に加え、中国全体で国債発行が増加し、中央・地方政府の財政悪化リスクも高まりそうだ。景気回復の道のりは期待先行で厳しい。

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