今日16日は閻魔の祭日とされます。一月十六日と七月十六日は地獄の獄卒も休むとされ藪入りといい奉公人等の骨休めが許された日です。閻魔祭りの日には閻魔詣・十王詣の参詣がおこなわれました。
中勘助の「銀の匙」には「じき近くに閻魔様のお寺(注、小石川源覚寺の蒟蒻閻魔)があった。地獄の釜のふたのあく日がきて陰鬱な鐘の音が人を促すように鳴りはじめると伯母さんは気のすすまない私に花色の帷子をきせ、唐縮緬のしごきを胸高にしめさせてお詣りにつれてゆく。お盆にはきまったその帷子をきせられたため花色という色までが私を陰気にするようになった。狭くるしい境内から門前へかけて一杯五厘の氷屋や、おでん、寿司の屋台店がぎっしりとならんで、ぴいぴいいう風船の音、物うりの呼び声などが砂ほこりのなかに堪えがたい騒ぎをする。・・二、三段あがって千社ふだのべたべたはりついた赤門をくぐれば右てに小さな閻魔堂があって型のごとく野鄙な顔をした閻魔様がひかえている。・・ほっと息をつくと今度は本堂にある三途の川のおばあさんのところへつれてゆく。かなつぼまなこのなま白いばあさんが紅白の綿を幾枚も頭にのせてすわっている。・・」
・「おしろいのにほふ子供や宵ゑんま(鶏二)」