福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

「地獄」

2022-04-09 | 法話

「地獄」

 

芥川龍之介は「地獄」で「人生は地獄よりも地獄的である。地獄の与える苦しみは一定の法則を破ったことはない。たとえば餓鬼道の苦しみは目前の飯を食おうとすれば飯の上に火の燃えるたぐいである。しかし人生の与える苦しみは不幸にもそれほど単純ではない。目前の飯を食おうとすれば、火の燃えることもあると同時に、又存外楽楽と食い得ることもあるのである。のみならず楽楽と食い得た後さえ、腸加太児の起ることもあると同時に、又存外楽楽と消化し得ることもあるのである。こう云う無法則の世界に順応するのは何びとにも容易に出来るものではない。・・」と述べています。これは時間軸にそって人生は「地獄」になる時もあれば「極楽」になるときもある、これは無法則であるところが地獄的であるということでしょう。

しかし地上を瞬間的に切り取って見ると、同じ時間帯に「地獄」の苦しみを味わっているひともいれば「極楽、極楽」と人生を謳歌している人間もいるわけで、これが最も地獄的でしょう。ウクライナで子供や女性が虐殺されていても、同時に同じ地上でゴルフをしていたり、花見をしてる人間がいるのです。東日本大震災のとき、ボランテアで遺体安置所で数十体の遺体に読経しているとき、途一つへだてたところではパチンコ屋が営業しており、道路を多くの車が何事もなかったかの如く行き来していたのを思い出します。このコントラストこそ「地獄よりも地獄的」です。

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