普賢菩薩の十大願は四十華厳・入不思議解脱境界普賢行願品に出てきます。十大願の内容が書かれています。
大方廣佛華嚴經(四十華厳)卷第四十罽賓國三藏般若奉詔譯・入不思議解脱境界普賢行願品
爾時普賢菩薩摩訶薩は、如來の勝功徳を稱歎し已り、
諸菩薩及び善財に告げて言く『善男子よ、如來の功徳は假使へ十方一切諸佛の不可説不可説佛刹極微塵數劫を経ても相續演説不可窮盡なり。若し此功徳門を成就せんと欲せば應に十種の廣大行願を修すべし。何等か十と爲すや。一者禮敬諸佛。二者稱讃如來。三者廣修供養。四者懺悔業障。五者隨喜功徳。六者請轉法輪。七者請佛住世。八者常隨佛學。九者恒順衆生。十者普皆迴向なり。
善財白言、『大聖。云何が禮敬乃至迴向』。
普賢菩薩、善財に告げて言く,善男子よ、
『禮敬諸佛』というは所有の盡法界・虚空界・十方三世一切佛刹極微塵數の諸佛世尊に、我普賢行願力を以っての故に、深信解を起すこと目前に対する如し。悉く清淨身語意業を以て常修禮敬す。一一佛所に皆不可説不可説佛刹極微塵數身を現じ、一一身に不可説不可説佛刹極微塵數佛を遍禮す。虚空界が盡れば我禮乃ち盡く。而して虚空界は不可盡の故に、我の此禮敬は窮盡あることなし。如是にすること乃至衆生界盡き、衆生業盡き、衆生煩惱盡きくれば我禮乃ち盡く。而して衆生界乃至煩惱盡くることなくがゆえに我此の禮敬も窮盡あることなし。念念相續して間斷あることなし。身語意業疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『稱讃如來』とは、所有の盡法界・虚空界・十方三世一切刹土、所有の極微・一一塵中に皆な一切世界極微塵數佛有りて一一の佛所に皆な菩薩海會有りて圍遶す。我れ當に悉く甚深勝解を以て現前に知見す。各の辯才天女微妙舌根を以て出過す。一一の舌根は無盡音聲海を出し、一一の音聲は一切言辭海を出し、一切如來諸功徳海を稱揚讃歎し未來際を窮む。相續不斷、法界を盡し周遍せざるなし。如是に虚空界盡き、衆生界盡き衆生業盡き衆生煩惱盡きなば我讃乃ち盡く。而して虚空界乃至煩惱は盡ることなきが故に我此の讃歎も窮盡あることなし。念念に相續し間斷あることなし。身語意業疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『廣修供養』とは、所有、盡法界・虚空界・十方三世一切佛刹極微塵中一一に各の一切世界極微塵數佛を有す。一一の佛所に種種菩薩海會圍遶す。我普賢行願力を以ての故に、深信解を起こし
現前に知見す。悉く上妙諸供養具を以て供養となす。所謂、華雲鬘雲・天音樂雲・天傘蓋雲・天衣服雲・天種種香・塗香・燒香・末香、如是等の雲、一一の
量は須彌山王の如し。然して種種に燈す。酥燈・油燈・諸香油燈、一一の燈炷は須彌山の如し。一一の
燈油は大海水の如し。如是等の諸供養具を以て常に爲に供養す。善男子よ、諸供養中に法供養は最なり。所謂る如説修行供養・利益衆生供養・攝受衆生供養・代衆生苦供養・勤修善根供養・不捨菩薩業供養・不離菩提心供養なり。善男子よ、如前の供養の無量功徳も法供養一念功徳に比して百分に及ばざること一なり。千分に及ばざること一なり。百千倶胝那由他分・迦羅分・算分・數分・諭分・優婆尼沙陀分におよばざること亦た一なり。何以故。諸如來は法を尊重するが故なり。如説修行を以って諸佛を出生するが故なり。若し諸菩
薩、法供養を行ぜば則ち供養如來を成就することを得る。如是修行は是れ眞の供養の故に。此の廣大最勝供養は虚空界が盡き、衆生界が盡き、衆生業が盡き、衆生煩惱が盡きれば、我供乃ち盡く。而して虚空界乃至煩惱は盡くべからざるがゆえに我の此の供養も亦た
盡あることなし。念念相續して間斷あることなし。身語意業疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『懺除業障』とは、菩薩自ら念ずらく、我過去無始劫中において貪瞋癡によって身口意を發し諸惡業を作すこと無量無邊なり。若し此の惡業、體相あれば虚空界を盡して容受することあたわず。我今悉く清淨なる三業を以て法界に遍ずる極微塵刹一切諸佛菩薩衆の前に誠心に懺悔す。後に復た造らず。恒に淨戒に住し、一切を功徳す。如是のこと、虚空界が盡き、衆生界が盡き、衆生業が盡き、衆生煩惱が盡ば我懺も乃ち盡く。而して虚空界乃至衆生煩惱は盡くるべからざるが故に我此の懺悔も窮盡あることなし。念念に相續して間斷あることなし。身語意業疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『隨喜功徳』とは、所有、盡法界・虚空界・十方三世一切佛刹極微塵數の諸佛如來、初發心より、一切智をなし、福聚を勤修し、不惜身命、不可説不可説佛刹極微塵數劫を経て、一一劫中に不可説不可説佛刹極微塵數の頭目手足を捨て、如是の一切難行苦行、種種波羅蜜門を圓滿し、種種菩薩智地に證入し、諸佛無上菩提を成就し、及び般涅槃し舍利を分布す。所有る善根なり。我皆隨喜す。及び彼の十方一切世界の六趣四生・一切種類の所有る功徳乃至一塵、我皆隨喜す、十方三世一切の聲聞及び辟支佛・有學無學の所有の功徳、我皆隨喜す。一切菩薩所修の無量の難行苦行、志求するところの無上正等菩提・廣大功徳、我皆隨喜す。如是に虚空界盡き、衆生界盡き、衆生業盡き、衆生煩惱盡くれば我此隨喜も乃ち盡く。窮盡あること無きが故に念念に相續して間斷あることなし。身語意業も疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『請轉法輪』とは、所有る、盡法界・虚空界・十方三世一切佛刹極微塵中一一に各
不可説不可説佛刹極微塵數廣大佛刹あり、
一一刹中に念念に不可説不可説の佛刹極微
塵數あり、一切諸佛成等正覺し一切菩薩海會圍
遶す。而して我悉く身口意業を以て種種に方便し慇懃に転妙法輪を勸請す。如是にすること虚空界盡き、衆生界盡き、衆生業盡き、衆生煩惱盡るまでなり。我常に一切諸佛の転正法輪を勸請すること窮盡あることなし。念念相續無有間斷。身語意業疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『請佛住世』とは、所有、盡法界・虚空界・十方三世一切佛刹極微塵數の諸佛如來、將に般涅槃を示現せんと欲せん時、諸菩薩・聲聞・縁
覺・有學無學乃至一切諸善知識、我悉く勸請して
涅槃に入る莫らしむ。一切佛刹極微塵數劫を經て一切衆生を利樂せんと欲するために、如是に虚空界盡き、衆生界盡き、衆生業盡き、衆生煩惱盡くまで我の此の勸請は窮盡あることなし。念念に相續して間斷あることなし。身語意業疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『常隨佛學』とは、此の娑婆世界のごときは、毘盧遮那如來、初發心より精進不退なり。不可説不可説の身命を以てして布施となす。皮を剥て紙となし、骨を折りて筆となし、血を刺して墨となし經典を書寫し、積むこと須彌の如し。法を重んずる為の故に身命を惜しまず、何ぞ況んや王位・城邑聚落・宮殿園林・一切所有及餘種種難行苦行をや。乃至樹下に大菩提を成じ種種神通を示し、種種變化を起こし、種種佛身を現じ、種種衆會に處す。或は一切諸大菩薩衆會道場に處し、或は聲聞及辟支佛衆會道場に處し、或は轉輪聖王小王眷屬衆會道場に處し、或は刹利及婆羅門長者居士衆會道場に處し乃至或は天龍八部人等衆會道場に處し、如是の種種衆會に處し、圓滿音を以て大雷震の如く、其樂欲に隨って衆生を成熟し乃至涅槃に入るを示現す。如是の一切を我皆隨學す。如今、世尊毘盧遮那、如是の盡法界・虚空界・十方三世
一切佛刹所有塵中、一切如來皆亦如是なり。
念念中において、我皆隨學す。如是の虚空界盡き、衆生界盡き、衆生業盡き、衆生煩惱盡くまで我此隨學は窮盡あることなし。念念に相續して間斷あることなし。身語意業疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『恒順衆生』とは、謂く、盡法界・虚空界・十方刹海の所有の衆生種種差別、所謂卵生・
胎生・濕生・化生、或は地水火風に依って而も生有りて住む者、或は空及諸卉木に依る有りて而も生住する者、種種の生類、種種の色身、種種の形状、種種の相貌、種種の壽量、種種の族類、種種の名號、種種の心性、種種の知見、種種の欲樂、種種の意行、種種の威儀、種種の衣服、種種の飮食、於種種村營聚落城邑宮殿に處す。乃至一切の天龍八部・人等・無足・二足・四足・多足・有色・無色・有想・無想・非有想・非無想、如是等の類、我皆彼において隨順して轉ず。種種の承事、種種の供養は父母を敬う如く、師長及阿羅漢乃至如來に奉ずる如く、等しいこと異あることなし。諸病苦には良醫と作り、失道者には其正路を示し、闇夜中には光明となり、貧窮者には伏藏を得さしむ。菩薩は如是に平等に一切衆生を饒益す。
何以故。菩薩若し能く衆生に隨順すれば則ち諸佛に隨順供養となる。若し衆生において尊重承事すれば、則ち如來に尊重承事すとなる。若し衆生をして歡喜せしむれば則ち一切如來をして歡喜せしむるとなす。
何以故。諸佛如來は大悲心を以て而も體となす故なり。衆生によりて大悲を起こし、大悲によりて菩提心を生じ、菩提心によりて等正覺を成ず。譬ば曠野沙磧之中に大樹王有りて、若し根が水を得れば枝葉華果悉く皆繁茂するがごとし。生死曠野の菩提樹王も亦復た如是なり。一切衆生を樹根となし、諸佛菩薩を華果となす。大悲水を以て衆生を饒益すれば、則ち能く諸佛菩薩の智慧華果を成就す。何以故。若し諸菩薩、大悲水を以て衆生を饒益すれば則ち能く阿耨多羅三藐三菩提を成就するが故なり。是故に菩提は衆生に屬す。若し衆生無ければ一切菩薩は終に能く無上正覺を成ぜず。善男子よ、汝此義において應に如是に解せよ。衆生心において平等なるが故に則ち能く圓滿大悲を成就し、大悲心を以て衆生に隨うが故に、則ち能く供養如來を成就す。菩薩如是に隨順衆生すること虚空界盡き衆生界盡き衆生業盡き衆生煩惱盡くるまです。我此隨順は窮盡あることなし。念念に相續して間斷あることなし。身語意業疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『普皆迴向』とは、初め禮拜してより乃至隨順し、所有の功徳皆悉迴向す。盡法界・虚空界の一切衆生、願くは衆生をして常に安樂を得、無諸病苦にして、行惡法皆悉不成を欲し、所修善業は皆速成就し、一切諸惡趣門を關閉し、人天に涅槃正路を開示せん。若し諸衆生、其の積集諸惡業によっての故に所感する一切極重苦果を我皆な代受す。彼の衆生をして悉く解脱を得せしめ究竟して無上菩提を成就せしめん。菩薩如是に所修迴向し、虚空界盡き衆生界盡き衆生業盡き衆生煩惱盡くるまで我が此の迴向は窮盡あることなし。念念に相續して間斷あることなし。身語意業疲厭あることなし。
善男子よ、是を菩薩摩訶薩の十種大願具足圓滿となす。若し諸菩薩、此大願において隨順趣入せば則ち能く一切衆生を成熟し則ち能く阿耨多羅三藐三菩提に隨順し、則ち能く普賢菩薩の諸行願海を成滿す。是故に善男子よ、汝此義において、應に如是に知るべし、若し善男子善女人ありて、十方無量無邊不可説不可説佛刹極微塵數一切世界に上妙七寶及諸人天最勝安樂を満たし、爾所の一切世界所有衆生に布施し、爾所の一切世界諸佛菩薩に供養し、爾所に佛刹極微塵數劫を経て相續不斷す、あらゆる功徳は、若復た人ありて、此願王を聞き一經を耳にする功徳に比して百分の一に及ばず、千分の一に及ばず、乃至優波尼沙陀(うぱにしゃだ・極小)分の一にもまた及ばず。或は復た人ありて深信心を以て、大願において、一四句偈を受持讀誦乃至書寫すれば速ち能く五無間業を除滅し、あらゆる世間の身心等病・種種苦惱乃至佛刹極微塵數の一切惡業を皆な銷除することを得る。一切魔軍・夜叉羅刹・若しは鳩槃荼(くばんだ)・若しは毘舍闍(びしゃじゃ)・若しは部多(へいれいた)等の飮血噉肉諸惡鬼神は皆な悉く遠離す。或は時に發心し親近に守護す。是故に若し人、此願を誦する者は行は世間において障礙あることなし。空中の月の雲翳より出るがごとし。諸佛菩薩の稱讃するところなり。一切人天皆應に禮敬し、一切衆生悉く應に供養す。此の善男子は善く人身を得、普賢のあらゆる功徳を圓滿す。久しからずして當に普賢菩薩の如きは微妙色身を速得成就し、三十二大丈夫相を具す。若し人天に生まれれば所在之處、常に勝族にいて悉く能く一切惡趣を破壞し、悉く能く一切惡友を遠離し、悉く能く一切外道を制伏し、悉く能く一切煩惱を解脱す。師子王の如く群獸を摧伏し、一切衆生の供養を受るに堪う。
又復是の人は、臨命終時最後刹那に、一切諸根悉く
皆な散壞し、一切親屬悉く皆な捨離し、一切威勢悉く皆な退失す。輔相大臣・宮城内外の象馬車乘・珍寶伏
藏、如是の一切は復た相い隨うなし。唯此の願王は相捨離せず。一切時において其前に引導し、一刹那中に極樂世界に即得往生し、到已て阿彌陀佛・文殊師利菩薩・普賢菩薩・觀自在菩薩・彌勒菩薩等に即見す。此諸菩薩は色相端嚴、功徳具足し共に圍遶する所なり。其人自ら蓮華中に生ずを見る。佛の授記を蒙り、授記を得已って、無數百千萬億那由他劫を經て、普く十方不可説不可説世界において智慧力を以て衆生心に隨ひて爲に利益をなす。久しからずして當に菩提道場に坐し魔軍を降伏して等正覺を成じ、妙法輪を轉じ、
能く佛刹極微塵數世界の衆生をして菩提心を発せしむ。其の根性に隨って教化成熟、乃至未來劫海を盡すまで廣く能く一切衆生を利益す。善男子よ、彼の諸衆生、此の大願王を若しは聞き、若しは信じ、受持讀誦し廣く人のために説けば功徳有。佛世尊餘の無知者を除く。是故に汝等、此願王を聞き疑念を生ずる莫れ。應當に諦受し、受已りて能く讀み、讀已って能く誦し、誦已って能く持し、乃至書寫し、廣く人のために説け。是諸人等は一念中においてあらゆる行願は皆得成就し、獲る所の福聚は無量無邊なり。能く煩惱大苦海中において衆生を拔濟し、其をして出離せしめ、阿彌陀佛極樂世界に皆得往生せしむ。」
爾時、普賢菩薩摩訶薩は重ねて此の義を宣せんと欲して、十方を普觀し、偈を説て言く
(礼敬諸仏)
あらゆる十方世界中 一切三世の人師子、我れ清浄なる身語意を以て一切遍く礼しことごと く余すこと無からん。普賢行願の威神力、普く一切如来の前に現じ、一身にまた刹塵の身を現じて、一々に遍く刹塵の仏を礼したてまつる。
(称讃如来)
一塵の中に塵数の仏ましまして、 おのおの 菩薩衆会の中に処したまう。無尽の法界、塵にしてまた然り。諸仏みな充満したまうと深信す。
おのおの 一切の音声海を以て、普く無尽の妙言詞を出して、未来一切劫を尽くして、 仏の甚深功徳海を讃ぜん。
(広修供養)
諸の最勝の妙華鬘・妓樂・塗香及び傘蓋を以て是の如き最勝の荘厳具、我れ以て諸の如来を供養せん。最勝の衣服・最勝の香・末香・焼香・燈燭と、 一々みな妙高聚の如し、我れ悉く諸の如来に供養せん。
我れ、広大勝解心を以て、悉く普賢行願力を以て、普 遍く諸の如来を供養したてまつる。
(懺悔業障)
我れ曾って作す所の衆罪の業は、 皆貪欲瞋恚癡に由る。身口意に由って亦た是の如し。 我皆な一切を陳説す。
(随喜功徳)
あらゆる十方の群生の福、 有學無學辟支佛及び諸佛子諸如來、我皆咸く一切を隨喜す。
(請転法輪)
あらゆる十方世間燈は證菩提を以て無染を得る。我今諸世尊を勸請して、 無上の妙法輪を轉ぜん。
(請仏住世)
あらゆる涅槃を現ぜんことを欲ふ者、 我れ皆な彼に合掌して請う。唯願くは諸群生の安樂に利せんが爲久しく刹塵劫に住したまへ。
(総標廻向)
禮拜供養し及び罪を陳べ、 隨喜功徳及び勸請し、我が積集するところの諸功徳 、悉く皆な菩提に迴向せん。
(常随仏学)
諸如來において我修學せん、 普賢行願を圓滿する時、願くは我過去佛に供養し、 所有現住十方世、所有の未來の速願成じ、 意願圓滿して菩提を證せん。
あらゆる十方諸刹土は 願くは皆な廣大にして咸く清淨ならん。
(恒順衆生)
諸佛は咸く覺樹王に詣で、 諸佛子等皆充滿せん。あらゆる十方諸衆生は、 願くは皆な安樂にして衆患無からん。一切の群生は法利を獲、願くは隨順の如意心を得んことを。我れ當に菩提修行の時にあたって 諸趣中に於て宿命を憶せん。
(普皆廻向)
若し諸生中に生滅をなさば、 我れ皆な常に出家を爲すべし。戒行無垢にして恒に清淨、 常行に無缺無孔隙ならん。天語・龍語・夜叉語・ 鳩槃荼語及び人語、あらゆる一切の群生語を 皆諸音を以って説法せん。
妙波羅蜜を常に加行し、 菩提において心に迷を生ぜず。あらゆる衆罪及び障礙は、 悉く皆な滅盡して餘り有ること無けん。業煩惱及び魔境において 世間の道中に解脱を得ること、猶し蓮華の水に著せざる如く、日月の空に著せざるが如からん。諸惡趣苦寂靜を願い、 一切群生を安樂ならしめん。諸群生に利益を行じ、 乃至十方の諸刹土に、常に行じて諸衆生に隨順し、 菩提の妙行を圓滿せしめん。
普賢行願我れ修習す、我が未來劫においての修行は、
あらゆる我と共に同行せん者と、 彼とともに常に咸く聚會をするを得、身口業及意業において 同一の行願にして修習せん。
あらゆる善友・我を益する者・我爲に普賢行を示現し彼と共に常に得て聚會す。 彼において皆な無厭心を得ん。常に諸如來を面見することを得、 諸佛子と共に圍繞して、彼に皆な廣供養を興こし、皆な未來劫において無倦ならん。常に諸佛の微妙法を持し、 皆な菩提行を光顯せしめん。咸く皆な普賢行を清淨にし 皆な未來劫において修行せん。
諸有中流轉時において、 福徳智慧無盡なるを得て般若方便定解脱 無盡功徳藏を獲得せん。
一塵端に如塵の刹あるごとく、 彼の中の佛刹は不思議なり。佛及佛子其中に坐し、 常に菩提勝妙行を見る。
是の如くの無量の一切方に 一毛端に三世の量あり。
佛海及び刹土海と、 我が修行するに諸劫海に入る。
一音聲の功徳海において、 一切如來の清淨の聲あり、
一切群生の意樂の音は 常に皆、佛の辯才に入ることを得。彼の無盡音聲中に、一切三世諸如來の當に理趣妙輪を轉ずべき時、 我が慧力をもって普く能く入らん。
一刹那諸未來なるをもって、 我れ未來の一切劫に入る。三世所有の無量劫は、 刹那に能く倶胝劫に入る。
所有三世の人師子に、 一刹那をもて我れ咸くまみえん。彼の境界において常に得入す。 如幻の解脱行威力あり。あらゆる三世妙嚴刹は 能く一塵端に現じて出生す。如是の無盡諸方所あり。 能く諸佛嚴刹土に入る。あらゆる未來の世間燈は 彼皆覺悟して法輪を轉じ、涅槃の究竟寂を示現す。 我れ皆世尊に往詣せん。神足力を以って普く迅疾なり。 乘威力を以って普く遍門なり。行威力を以って等功徳なり。 慈威力を以って普遍行なり。福威力を以って普く端嚴なり。 智威力を以って無著行なり。般若方便等持力 菩提威力皆な積集せん。
皆業力において清淨なり。 我今煩惱力を摧滅して、
悉く能く魔羅力を降伏す。 普賢一切力を圓滿して、
普ねく清淨刹土海ならしむ。 普く能く衆生海を解脱し、悉く能く諸法海を觀察す。 及び以って源を智海に得、普く行海咸く清淨ならしめ、 又願海咸く圓滿せしむ。諸佛海會を咸く供養し、 普賢の行劫疲倦することなし。
あらゆる三世の諸如來 菩提行願、衆差別、願はくは我圓滿して悉く餘す無く 普賢行をもって菩提を悟らん。
諸佛如來に長子あり。 彼の名を號して普賢尊と曰う。
皆彼の慧妙行同を以て、 一切諸善根を迴向す。
身口意業、願わくは清浄に、 諸行清淨ならば刹土淨なり。
彼の智慧普賢の名のごとく、 願はくは我れ今において盡すこと彼に同じならん。
普賢行願普く端嚴なり。 我れ曼殊室利行を行じ、
諸未來劫において無倦に、一切圓滿して無餘ならん。
所修の勝行能く量ること無し。 所有の功徳は不可量なり。無量の修行、住し已りて、 尽く一切彼の神通を知らん。
(顕示功徳)
乃至虚空に究竟を得ば 衆生無餘究竟も然ならん。
及び業煩惱盡きなば 乃至我願亦た皆な盡きなん。
若し十方無邊刹有りて、 寶莊嚴を以って諸佛に施さば、天妙人民勝安樂 刹微塵劫のごとく捨施す。
若し人此勝願王において 一聞せば能く勝解心を生ず。
勝菩提において渇仰を求めば、 殊勝なる前の福聚を獲得す。
彼の諸惡趣を遠離することを得て、 彼の諸惡友を皆な遠離し、速疾に無量壽を見ることを得。 唯だ憶えらく普賢勝行願は大利益勝壽命を得、 善來し、此の人の生命となる。
彼の普賢大菩薩の如し。 彼の人久しからずして當に獲得すべし
所作罪業五無間 無智慧によって所作す、
彼の普賢行願を誦する時 速疾に鎖滅して無餘を得。
智慧容色及相好 族姓品類成就することを得。
魔外道において難摧得、 常に三界において供養を得。
速疾に菩提樹に往詣し、 彼坐に到って有情を利す。
菩提を覺悟して轉法輪し、 魔羅并びに營從を摧伏す。
若し此普賢願を持することあらば、 讀誦受持及演説し、
如來は具に知って果報を得。 勝菩提を得て疑を生ずる勿れ。
(結帰廻向)
妙吉祥勇猛智の如く、 亦普賢にも是の如くの智あり。
我當に彼に習學せん時、 一切善根悉く迴向せん。
一切三世諸如來 此殊勝願に迴向す。
我皆一切諸善根 悉く以て普賢行に迴向せん。
(願生浄土)
當に臨終捨壽の時、 一切業障皆轉ずることを得、
親覩まのあたりに無量光を見ることを得て、 速に彼の刹極樂界に往ぜん。
彼に到を得て此の勝願、 悉く皆な現前に具足するを得。
我れ當に圓滿して皆な餘り無し。 衆生世間を利益せん。
彼の佛會において甚しく端嚴において 殊勝蓮花中に生れ、彼を獲得して記別を受け、 親しく無量光如來に對し、彼の受記を獲得し已り、 變化すること倶胝無量種なり。
廣く有情に諸利樂を作し、 十方世界にも慧力をもってす。
(結勧受持)
若人普賢願を誦持せば、 所有の善根しかも積集し、
一刹那を以って如願を得、此を以て群生は勝願を獲ん。
我れ此普賢行を獲得し 殊勝無量の福徳聚をもて
あらゆる群生の溺惡習は 皆な無量光佛の宮に往ぜん。
爾時、普賢菩薩摩訶薩は如來の前において、此普賢
廣大願王清淨偈を説き已る。善財童子は踊躍無量し、一切菩薩皆大歡喜す。如來讃して言く、善哉善哉。
爾時世尊、諸聖者・菩薩摩訶薩と、如是に不可思議解脱境界勝法門を演説する時、文殊師利菩薩は諸大菩薩及び所成熟六千比丘の上首となり、彌勒菩薩は賢劫一切諸大菩薩の上首となり、無垢普賢菩薩は一生補處住灌頂位諸大菩薩及び餘の十方種種世界普來集會の一切刹海極微塵數諸菩薩摩訶薩衆の上首となり、大智舍
利弗・摩訶目犍連等は諸大聲聞。并びに諸人天一切世主・天龍夜叉乾闥婆阿脩羅迦樓羅緊那羅摩睺羅伽人等一切大衆の上首となり、佛の所説を聞き皆な大歡喜し信受奉行せり。
大方廣佛華嚴經卷第四十
大方廣佛華嚴經(四十華厳)卷第四十罽賓國三藏般若奉詔譯・入不思議解脱境界普賢行願品
爾時普賢菩薩摩訶薩は、如來の勝功徳を稱歎し已り、
諸菩薩及び善財に告げて言く『善男子よ、如來の功徳は假使へ十方一切諸佛の不可説不可説佛刹極微塵數劫を経ても相續演説不可窮盡なり。若し此功徳門を成就せんと欲せば應に十種の廣大行願を修すべし。何等か十と爲すや。一者禮敬諸佛。二者稱讃如來。三者廣修供養。四者懺悔業障。五者隨喜功徳。六者請轉法輪。七者請佛住世。八者常隨佛學。九者恒順衆生。十者普皆迴向なり。
善財白言、『大聖。云何が禮敬乃至迴向』。
普賢菩薩、善財に告げて言く,善男子よ、
『禮敬諸佛』というは所有の盡法界・虚空界・十方三世一切佛刹極微塵數の諸佛世尊に、我普賢行願力を以っての故に、深信解を起すこと目前に対する如し。悉く清淨身語意業を以て常修禮敬す。一一佛所に皆不可説不可説佛刹極微塵數身を現じ、一一身に不可説不可説佛刹極微塵數佛を遍禮す。虚空界が盡れば我禮乃ち盡く。而して虚空界は不可盡の故に、我の此禮敬は窮盡あることなし。如是にすること乃至衆生界盡き、衆生業盡き、衆生煩惱盡きくれば我禮乃ち盡く。而して衆生界乃至煩惱盡くることなくがゆえに我此の禮敬も窮盡あることなし。念念相續して間斷あることなし。身語意業疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『稱讃如來』とは、所有の盡法界・虚空界・十方三世一切刹土、所有の極微・一一塵中に皆な一切世界極微塵數佛有りて一一の佛所に皆な菩薩海會有りて圍遶す。我れ當に悉く甚深勝解を以て現前に知見す。各の辯才天女微妙舌根を以て出過す。一一の舌根は無盡音聲海を出し、一一の音聲は一切言辭海を出し、一切如來諸功徳海を稱揚讃歎し未來際を窮む。相續不斷、法界を盡し周遍せざるなし。如是に虚空界盡き、衆生界盡き衆生業盡き衆生煩惱盡きなば我讃乃ち盡く。而して虚空界乃至煩惱は盡ることなきが故に我此の讃歎も窮盡あることなし。念念に相續し間斷あることなし。身語意業疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『廣修供養』とは、所有、盡法界・虚空界・十方三世一切佛刹極微塵中一一に各の一切世界極微塵數佛を有す。一一の佛所に種種菩薩海會圍遶す。我普賢行願力を以ての故に、深信解を起こし
現前に知見す。悉く上妙諸供養具を以て供養となす。所謂、華雲鬘雲・天音樂雲・天傘蓋雲・天衣服雲・天種種香・塗香・燒香・末香、如是等の雲、一一の
量は須彌山王の如し。然して種種に燈す。酥燈・油燈・諸香油燈、一一の燈炷は須彌山の如し。一一の
燈油は大海水の如し。如是等の諸供養具を以て常に爲に供養す。善男子よ、諸供養中に法供養は最なり。所謂る如説修行供養・利益衆生供養・攝受衆生供養・代衆生苦供養・勤修善根供養・不捨菩薩業供養・不離菩提心供養なり。善男子よ、如前の供養の無量功徳も法供養一念功徳に比して百分に及ばざること一なり。千分に及ばざること一なり。百千倶胝那由他分・迦羅分・算分・數分・諭分・優婆尼沙陀分におよばざること亦た一なり。何以故。諸如來は法を尊重するが故なり。如説修行を以って諸佛を出生するが故なり。若し諸菩
薩、法供養を行ぜば則ち供養如來を成就することを得る。如是修行は是れ眞の供養の故に。此の廣大最勝供養は虚空界が盡き、衆生界が盡き、衆生業が盡き、衆生煩惱が盡きれば、我供乃ち盡く。而して虚空界乃至煩惱は盡くべからざるがゆえに我の此の供養も亦た
盡あることなし。念念相續して間斷あることなし。身語意業疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『懺除業障』とは、菩薩自ら念ずらく、我過去無始劫中において貪瞋癡によって身口意を發し諸惡業を作すこと無量無邊なり。若し此の惡業、體相あれば虚空界を盡して容受することあたわず。我今悉く清淨なる三業を以て法界に遍ずる極微塵刹一切諸佛菩薩衆の前に誠心に懺悔す。後に復た造らず。恒に淨戒に住し、一切を功徳す。如是のこと、虚空界が盡き、衆生界が盡き、衆生業が盡き、衆生煩惱が盡ば我懺も乃ち盡く。而して虚空界乃至衆生煩惱は盡くるべからざるが故に我此の懺悔も窮盡あることなし。念念に相續して間斷あることなし。身語意業疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『隨喜功徳』とは、所有、盡法界・虚空界・十方三世一切佛刹極微塵數の諸佛如來、初發心より、一切智をなし、福聚を勤修し、不惜身命、不可説不可説佛刹極微塵數劫を経て、一一劫中に不可説不可説佛刹極微塵數の頭目手足を捨て、如是の一切難行苦行、種種波羅蜜門を圓滿し、種種菩薩智地に證入し、諸佛無上菩提を成就し、及び般涅槃し舍利を分布す。所有る善根なり。我皆隨喜す。及び彼の十方一切世界の六趣四生・一切種類の所有る功徳乃至一塵、我皆隨喜す、十方三世一切の聲聞及び辟支佛・有學無學の所有の功徳、我皆隨喜す。一切菩薩所修の無量の難行苦行、志求するところの無上正等菩提・廣大功徳、我皆隨喜す。如是に虚空界盡き、衆生界盡き、衆生業盡き、衆生煩惱盡くれば我此隨喜も乃ち盡く。窮盡あること無きが故に念念に相續して間斷あることなし。身語意業も疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『請轉法輪』とは、所有る、盡法界・虚空界・十方三世一切佛刹極微塵中一一に各
不可説不可説佛刹極微塵數廣大佛刹あり、
一一刹中に念念に不可説不可説の佛刹極微
塵數あり、一切諸佛成等正覺し一切菩薩海會圍
遶す。而して我悉く身口意業を以て種種に方便し慇懃に転妙法輪を勸請す。如是にすること虚空界盡き、衆生界盡き、衆生業盡き、衆生煩惱盡るまでなり。我常に一切諸佛の転正法輪を勸請すること窮盡あることなし。念念相續無有間斷。身語意業疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『請佛住世』とは、所有、盡法界・虚空界・十方三世一切佛刹極微塵數の諸佛如來、將に般涅槃を示現せんと欲せん時、諸菩薩・聲聞・縁
覺・有學無學乃至一切諸善知識、我悉く勸請して
涅槃に入る莫らしむ。一切佛刹極微塵數劫を經て一切衆生を利樂せんと欲するために、如是に虚空界盡き、衆生界盡き、衆生業盡き、衆生煩惱盡くまで我の此の勸請は窮盡あることなし。念念に相續して間斷あることなし。身語意業疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『常隨佛學』とは、此の娑婆世界のごときは、毘盧遮那如來、初發心より精進不退なり。不可説不可説の身命を以てして布施となす。皮を剥て紙となし、骨を折りて筆となし、血を刺して墨となし經典を書寫し、積むこと須彌の如し。法を重んずる為の故に身命を惜しまず、何ぞ況んや王位・城邑聚落・宮殿園林・一切所有及餘種種難行苦行をや。乃至樹下に大菩提を成じ種種神通を示し、種種變化を起こし、種種佛身を現じ、種種衆會に處す。或は一切諸大菩薩衆會道場に處し、或は聲聞及辟支佛衆會道場に處し、或は轉輪聖王小王眷屬衆會道場に處し、或は刹利及婆羅門長者居士衆會道場に處し乃至或は天龍八部人等衆會道場に處し、如是の種種衆會に處し、圓滿音を以て大雷震の如く、其樂欲に隨って衆生を成熟し乃至涅槃に入るを示現す。如是の一切を我皆隨學す。如今、世尊毘盧遮那、如是の盡法界・虚空界・十方三世
一切佛刹所有塵中、一切如來皆亦如是なり。
念念中において、我皆隨學す。如是の虚空界盡き、衆生界盡き、衆生業盡き、衆生煩惱盡くまで我此隨學は窮盡あることなし。念念に相續して間斷あることなし。身語意業疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『恒順衆生』とは、謂く、盡法界・虚空界・十方刹海の所有の衆生種種差別、所謂卵生・
胎生・濕生・化生、或は地水火風に依って而も生有りて住む者、或は空及諸卉木に依る有りて而も生住する者、種種の生類、種種の色身、種種の形状、種種の相貌、種種の壽量、種種の族類、種種の名號、種種の心性、種種の知見、種種の欲樂、種種の意行、種種の威儀、種種の衣服、種種の飮食、於種種村營聚落城邑宮殿に處す。乃至一切の天龍八部・人等・無足・二足・四足・多足・有色・無色・有想・無想・非有想・非無想、如是等の類、我皆彼において隨順して轉ず。種種の承事、種種の供養は父母を敬う如く、師長及阿羅漢乃至如來に奉ずる如く、等しいこと異あることなし。諸病苦には良醫と作り、失道者には其正路を示し、闇夜中には光明となり、貧窮者には伏藏を得さしむ。菩薩は如是に平等に一切衆生を饒益す。
何以故。菩薩若し能く衆生に隨順すれば則ち諸佛に隨順供養となる。若し衆生において尊重承事すれば、則ち如來に尊重承事すとなる。若し衆生をして歡喜せしむれば則ち一切如來をして歡喜せしむるとなす。
何以故。諸佛如來は大悲心を以て而も體となす故なり。衆生によりて大悲を起こし、大悲によりて菩提心を生じ、菩提心によりて等正覺を成ず。譬ば曠野沙磧之中に大樹王有りて、若し根が水を得れば枝葉華果悉く皆繁茂するがごとし。生死曠野の菩提樹王も亦復た如是なり。一切衆生を樹根となし、諸佛菩薩を華果となす。大悲水を以て衆生を饒益すれば、則ち能く諸佛菩薩の智慧華果を成就す。何以故。若し諸菩薩、大悲水を以て衆生を饒益すれば則ち能く阿耨多羅三藐三菩提を成就するが故なり。是故に菩提は衆生に屬す。若し衆生無ければ一切菩薩は終に能く無上正覺を成ぜず。善男子よ、汝此義において應に如是に解せよ。衆生心において平等なるが故に則ち能く圓滿大悲を成就し、大悲心を以て衆生に隨うが故に、則ち能く供養如來を成就す。菩薩如是に隨順衆生すること虚空界盡き衆生界盡き衆生業盡き衆生煩惱盡くるまです。我此隨順は窮盡あることなし。念念に相續して間斷あることなし。身語意業疲厭あることなし。
復次に善男子よ、『普皆迴向』とは、初め禮拜してより乃至隨順し、所有の功徳皆悉迴向す。盡法界・虚空界の一切衆生、願くは衆生をして常に安樂を得、無諸病苦にして、行惡法皆悉不成を欲し、所修善業は皆速成就し、一切諸惡趣門を關閉し、人天に涅槃正路を開示せん。若し諸衆生、其の積集諸惡業によっての故に所感する一切極重苦果を我皆な代受す。彼の衆生をして悉く解脱を得せしめ究竟して無上菩提を成就せしめん。菩薩如是に所修迴向し、虚空界盡き衆生界盡き衆生業盡き衆生煩惱盡くるまで我が此の迴向は窮盡あることなし。念念に相續して間斷あることなし。身語意業疲厭あることなし。
善男子よ、是を菩薩摩訶薩の十種大願具足圓滿となす。若し諸菩薩、此大願において隨順趣入せば則ち能く一切衆生を成熟し則ち能く阿耨多羅三藐三菩提に隨順し、則ち能く普賢菩薩の諸行願海を成滿す。是故に善男子よ、汝此義において、應に如是に知るべし、若し善男子善女人ありて、十方無量無邊不可説不可説佛刹極微塵數一切世界に上妙七寶及諸人天最勝安樂を満たし、爾所の一切世界所有衆生に布施し、爾所の一切世界諸佛菩薩に供養し、爾所に佛刹極微塵數劫を経て相續不斷す、あらゆる功徳は、若復た人ありて、此願王を聞き一經を耳にする功徳に比して百分の一に及ばず、千分の一に及ばず、乃至優波尼沙陀(うぱにしゃだ・極小)分の一にもまた及ばず。或は復た人ありて深信心を以て、大願において、一四句偈を受持讀誦乃至書寫すれば速ち能く五無間業を除滅し、あらゆる世間の身心等病・種種苦惱乃至佛刹極微塵數の一切惡業を皆な銷除することを得る。一切魔軍・夜叉羅刹・若しは鳩槃荼(くばんだ)・若しは毘舍闍(びしゃじゃ)・若しは部多(へいれいた)等の飮血噉肉諸惡鬼神は皆な悉く遠離す。或は時に發心し親近に守護す。是故に若し人、此願を誦する者は行は世間において障礙あることなし。空中の月の雲翳より出るがごとし。諸佛菩薩の稱讃するところなり。一切人天皆應に禮敬し、一切衆生悉く應に供養す。此の善男子は善く人身を得、普賢のあらゆる功徳を圓滿す。久しからずして當に普賢菩薩の如きは微妙色身を速得成就し、三十二大丈夫相を具す。若し人天に生まれれば所在之處、常に勝族にいて悉く能く一切惡趣を破壞し、悉く能く一切惡友を遠離し、悉く能く一切外道を制伏し、悉く能く一切煩惱を解脱す。師子王の如く群獸を摧伏し、一切衆生の供養を受るに堪う。
又復是の人は、臨命終時最後刹那に、一切諸根悉く
皆な散壞し、一切親屬悉く皆な捨離し、一切威勢悉く皆な退失す。輔相大臣・宮城内外の象馬車乘・珍寶伏
藏、如是の一切は復た相い隨うなし。唯此の願王は相捨離せず。一切時において其前に引導し、一刹那中に極樂世界に即得往生し、到已て阿彌陀佛・文殊師利菩薩・普賢菩薩・觀自在菩薩・彌勒菩薩等に即見す。此諸菩薩は色相端嚴、功徳具足し共に圍遶する所なり。其人自ら蓮華中に生ずを見る。佛の授記を蒙り、授記を得已って、無數百千萬億那由他劫を經て、普く十方不可説不可説世界において智慧力を以て衆生心に隨ひて爲に利益をなす。久しからずして當に菩提道場に坐し魔軍を降伏して等正覺を成じ、妙法輪を轉じ、
能く佛刹極微塵數世界の衆生をして菩提心を発せしむ。其の根性に隨って教化成熟、乃至未來劫海を盡すまで廣く能く一切衆生を利益す。善男子よ、彼の諸衆生、此の大願王を若しは聞き、若しは信じ、受持讀誦し廣く人のために説けば功徳有。佛世尊餘の無知者を除く。是故に汝等、此願王を聞き疑念を生ずる莫れ。應當に諦受し、受已りて能く讀み、讀已って能く誦し、誦已って能く持し、乃至書寫し、廣く人のために説け。是諸人等は一念中においてあらゆる行願は皆得成就し、獲る所の福聚は無量無邊なり。能く煩惱大苦海中において衆生を拔濟し、其をして出離せしめ、阿彌陀佛極樂世界に皆得往生せしむ。」
爾時、普賢菩薩摩訶薩は重ねて此の義を宣せんと欲して、十方を普觀し、偈を説て言く
(礼敬諸仏)
あらゆる十方世界中 一切三世の人師子、我れ清浄なる身語意を以て一切遍く礼しことごと く余すこと無からん。普賢行願の威神力、普く一切如来の前に現じ、一身にまた刹塵の身を現じて、一々に遍く刹塵の仏を礼したてまつる。
(称讃如来)
一塵の中に塵数の仏ましまして、 おのおの 菩薩衆会の中に処したまう。無尽の法界、塵にしてまた然り。諸仏みな充満したまうと深信す。
おのおの 一切の音声海を以て、普く無尽の妙言詞を出して、未来一切劫を尽くして、 仏の甚深功徳海を讃ぜん。
(広修供養)
諸の最勝の妙華鬘・妓樂・塗香及び傘蓋を以て是の如き最勝の荘厳具、我れ以て諸の如来を供養せん。最勝の衣服・最勝の香・末香・焼香・燈燭と、 一々みな妙高聚の如し、我れ悉く諸の如来に供養せん。
我れ、広大勝解心を以て、悉く普賢行願力を以て、普 遍く諸の如来を供養したてまつる。
(懺悔業障)
我れ曾って作す所の衆罪の業は、 皆貪欲瞋恚癡に由る。身口意に由って亦た是の如し。 我皆な一切を陳説す。
(随喜功徳)
あらゆる十方の群生の福、 有學無學辟支佛及び諸佛子諸如來、我皆咸く一切を隨喜す。
(請転法輪)
あらゆる十方世間燈は證菩提を以て無染を得る。我今諸世尊を勸請して、 無上の妙法輪を轉ぜん。
(請仏住世)
あらゆる涅槃を現ぜんことを欲ふ者、 我れ皆な彼に合掌して請う。唯願くは諸群生の安樂に利せんが爲久しく刹塵劫に住したまへ。
(総標廻向)
禮拜供養し及び罪を陳べ、 隨喜功徳及び勸請し、我が積集するところの諸功徳 、悉く皆な菩提に迴向せん。
(常随仏学)
諸如來において我修學せん、 普賢行願を圓滿する時、願くは我過去佛に供養し、 所有現住十方世、所有の未來の速願成じ、 意願圓滿して菩提を證せん。
あらゆる十方諸刹土は 願くは皆な廣大にして咸く清淨ならん。
(恒順衆生)
諸佛は咸く覺樹王に詣で、 諸佛子等皆充滿せん。あらゆる十方諸衆生は、 願くは皆な安樂にして衆患無からん。一切の群生は法利を獲、願くは隨順の如意心を得んことを。我れ當に菩提修行の時にあたって 諸趣中に於て宿命を憶せん。
(普皆廻向)
若し諸生中に生滅をなさば、 我れ皆な常に出家を爲すべし。戒行無垢にして恒に清淨、 常行に無缺無孔隙ならん。天語・龍語・夜叉語・ 鳩槃荼語及び人語、あらゆる一切の群生語を 皆諸音を以って説法せん。
妙波羅蜜を常に加行し、 菩提において心に迷を生ぜず。あらゆる衆罪及び障礙は、 悉く皆な滅盡して餘り有ること無けん。業煩惱及び魔境において 世間の道中に解脱を得ること、猶し蓮華の水に著せざる如く、日月の空に著せざるが如からん。諸惡趣苦寂靜を願い、 一切群生を安樂ならしめん。諸群生に利益を行じ、 乃至十方の諸刹土に、常に行じて諸衆生に隨順し、 菩提の妙行を圓滿せしめん。
普賢行願我れ修習す、我が未來劫においての修行は、
あらゆる我と共に同行せん者と、 彼とともに常に咸く聚會をするを得、身口業及意業において 同一の行願にして修習せん。
あらゆる善友・我を益する者・我爲に普賢行を示現し彼と共に常に得て聚會す。 彼において皆な無厭心を得ん。常に諸如來を面見することを得、 諸佛子と共に圍繞して、彼に皆な廣供養を興こし、皆な未來劫において無倦ならん。常に諸佛の微妙法を持し、 皆な菩提行を光顯せしめん。咸く皆な普賢行を清淨にし 皆な未來劫において修行せん。
諸有中流轉時において、 福徳智慧無盡なるを得て般若方便定解脱 無盡功徳藏を獲得せん。
一塵端に如塵の刹あるごとく、 彼の中の佛刹は不思議なり。佛及佛子其中に坐し、 常に菩提勝妙行を見る。
是の如くの無量の一切方に 一毛端に三世の量あり。
佛海及び刹土海と、 我が修行するに諸劫海に入る。
一音聲の功徳海において、 一切如來の清淨の聲あり、
一切群生の意樂の音は 常に皆、佛の辯才に入ることを得。彼の無盡音聲中に、一切三世諸如來の當に理趣妙輪を轉ずべき時、 我が慧力をもって普く能く入らん。
一刹那諸未來なるをもって、 我れ未來の一切劫に入る。三世所有の無量劫は、 刹那に能く倶胝劫に入る。
所有三世の人師子に、 一刹那をもて我れ咸くまみえん。彼の境界において常に得入す。 如幻の解脱行威力あり。あらゆる三世妙嚴刹は 能く一塵端に現じて出生す。如是の無盡諸方所あり。 能く諸佛嚴刹土に入る。あらゆる未來の世間燈は 彼皆覺悟して法輪を轉じ、涅槃の究竟寂を示現す。 我れ皆世尊に往詣せん。神足力を以って普く迅疾なり。 乘威力を以って普く遍門なり。行威力を以って等功徳なり。 慈威力を以って普遍行なり。福威力を以って普く端嚴なり。 智威力を以って無著行なり。般若方便等持力 菩提威力皆な積集せん。
皆業力において清淨なり。 我今煩惱力を摧滅して、
悉く能く魔羅力を降伏す。 普賢一切力を圓滿して、
普ねく清淨刹土海ならしむ。 普く能く衆生海を解脱し、悉く能く諸法海を觀察す。 及び以って源を智海に得、普く行海咸く清淨ならしめ、 又願海咸く圓滿せしむ。諸佛海會を咸く供養し、 普賢の行劫疲倦することなし。
あらゆる三世の諸如來 菩提行願、衆差別、願はくは我圓滿して悉く餘す無く 普賢行をもって菩提を悟らん。
諸佛如來に長子あり。 彼の名を號して普賢尊と曰う。
皆彼の慧妙行同を以て、 一切諸善根を迴向す。
身口意業、願わくは清浄に、 諸行清淨ならば刹土淨なり。
彼の智慧普賢の名のごとく、 願はくは我れ今において盡すこと彼に同じならん。
普賢行願普く端嚴なり。 我れ曼殊室利行を行じ、
諸未來劫において無倦に、一切圓滿して無餘ならん。
所修の勝行能く量ること無し。 所有の功徳は不可量なり。無量の修行、住し已りて、 尽く一切彼の神通を知らん。
(顕示功徳)
乃至虚空に究竟を得ば 衆生無餘究竟も然ならん。
及び業煩惱盡きなば 乃至我願亦た皆な盡きなん。
若し十方無邊刹有りて、 寶莊嚴を以って諸佛に施さば、天妙人民勝安樂 刹微塵劫のごとく捨施す。
若し人此勝願王において 一聞せば能く勝解心を生ず。
勝菩提において渇仰を求めば、 殊勝なる前の福聚を獲得す。
彼の諸惡趣を遠離することを得て、 彼の諸惡友を皆な遠離し、速疾に無量壽を見ることを得。 唯だ憶えらく普賢勝行願は大利益勝壽命を得、 善來し、此の人の生命となる。
彼の普賢大菩薩の如し。 彼の人久しからずして當に獲得すべし
所作罪業五無間 無智慧によって所作す、
彼の普賢行願を誦する時 速疾に鎖滅して無餘を得。
智慧容色及相好 族姓品類成就することを得。
魔外道において難摧得、 常に三界において供養を得。
速疾に菩提樹に往詣し、 彼坐に到って有情を利す。
菩提を覺悟して轉法輪し、 魔羅并びに營從を摧伏す。
若し此普賢願を持することあらば、 讀誦受持及演説し、
如來は具に知って果報を得。 勝菩提を得て疑を生ずる勿れ。
(結帰廻向)
妙吉祥勇猛智の如く、 亦普賢にも是の如くの智あり。
我當に彼に習學せん時、 一切善根悉く迴向せん。
一切三世諸如來 此殊勝願に迴向す。
我皆一切諸善根 悉く以て普賢行に迴向せん。
(願生浄土)
當に臨終捨壽の時、 一切業障皆轉ずることを得、
親覩まのあたりに無量光を見ることを得て、 速に彼の刹極樂界に往ぜん。
彼に到を得て此の勝願、 悉く皆な現前に具足するを得。
我れ當に圓滿して皆な餘り無し。 衆生世間を利益せん。
彼の佛會において甚しく端嚴において 殊勝蓮花中に生れ、彼を獲得して記別を受け、 親しく無量光如來に對し、彼の受記を獲得し已り、 變化すること倶胝無量種なり。
廣く有情に諸利樂を作し、 十方世界にも慧力をもってす。
(結勧受持)
若人普賢願を誦持せば、 所有の善根しかも積集し、
一刹那を以って如願を得、此を以て群生は勝願を獲ん。
我れ此普賢行を獲得し 殊勝無量の福徳聚をもて
あらゆる群生の溺惡習は 皆な無量光佛の宮に往ぜん。
爾時、普賢菩薩摩訶薩は如來の前において、此普賢
廣大願王清淨偈を説き已る。善財童子は踊躍無量し、一切菩薩皆大歡喜す。如來讃して言く、善哉善哉。
爾時世尊、諸聖者・菩薩摩訶薩と、如是に不可思議解脱境界勝法門を演説する時、文殊師利菩薩は諸大菩薩及び所成熟六千比丘の上首となり、彌勒菩薩は賢劫一切諸大菩薩の上首となり、無垢普賢菩薩は一生補處住灌頂位諸大菩薩及び餘の十方種種世界普來集會の一切刹海極微塵數諸菩薩摩訶薩衆の上首となり、大智舍
利弗・摩訶目犍連等は諸大聲聞。并びに諸人天一切世主・天龍夜叉乾闥婆阿脩羅迦樓羅緊那羅摩睺羅伽人等一切大衆の上首となり、佛の所説を聞き皆な大歡喜し信受奉行せり。
大方廣佛華嚴經卷第四十