心子は学生もしていました。
大学ではミイちゃんという、アメリカ育ちの日本人の友達がいました。
ミイちゃんは留学で来日したのですが、日本にまだ馴染めない彼女に、心子のほうから声をかけました。
「May I help you?」
心子はオーストラリアでホームステイしていた経験があって、日常会話程度の英語はどうにかできます。
そのときからミイちゃんとの親交が始まりました。
島国根性の日本人の中で閉塞感を感じていた心子は、リベラルで自立的なミイちゃんと価値観が合い、一番親しくなりました。
心子は日頃から、自分はアメリカのほうが合うと言って、渡米を望んだりしていました。
ミイちゃんは心子よりずっと年下ですが、背も高くてリーダーシップがあり、子供っぽい心子のお姉さんのようにしていました。
心子と僕が付き合いはじめて間もないころ、ミイちゃんが心子にプレゼントをくれたといいます。
おしゃれなパックに入ったコンドームでした。
そのとき心子と僕は、まだそういう縁がありませんでした。
ミイちゃんは、奥手の心子と僕の背中を押そうとしていたのです。
「こんなの冗談だよ」
心子はコンドームのパックをポイと放って笑いました。
それからしばらく経ったクリスマスの日、僕の部屋で二人でイブを祝いました。
夜になって、僕は思い切って言ったのです。
「ミイちゃんのプレゼント、使わせてもらおうか?」
心子はびっくりした顔を見せてどぎまぎしていました。
心子と抱き合い、そして、その日、僕たちは初めて結ばれました。
「……やっと、ここまで来られたね」
「ひとつになった……」
そう言って心子は胸を一杯にさせたのでした。