「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

ミイちゃんのプレゼント

2006年05月07日 20時01分55秒 | 心子、もろもろ
 
 心子は学生もしていました。

 大学ではミイちゃんという、アメリカ育ちの日本人の友達がいました。

 ミイちゃんは留学で来日したのですが、日本にまだ馴染めない彼女に、心子のほうから声をかけました。

「May I help you?」

 心子はオーストラリアでホームステイしていた経験があって、日常会話程度の英語はどうにかできます。

 そのときからミイちゃんとの親交が始まりました。

 島国根性の日本人の中で閉塞感を感じていた心子は、リベラルで自立的なミイちゃんと価値観が合い、一番親しくなりました。

 心子は日頃から、自分はアメリカのほうが合うと言って、渡米を望んだりしていました。

 ミイちゃんは心子よりずっと年下ですが、背も高くてリーダーシップがあり、子供っぽい心子のお姉さんのようにしていました。
 

 心子と僕が付き合いはじめて間もないころ、ミイちゃんが心子にプレゼントをくれたといいます。

 おしゃれなパックに入ったコンドームでした。

 そのとき心子と僕は、まだそういう縁がありませんでした。

 ミイちゃんは、奥手の心子と僕の背中を押そうとしていたのです。

「こんなの冗談だよ」

 心子はコンドームのパックをポイと放って笑いました。

 それからしばらく経ったクリスマスの日、僕の部屋で二人でイブを祝いました。

 夜になって、僕は思い切って言ったのです。

「ミイちゃんのプレゼント、使わせてもらおうか?」

 心子はびっくりした顔を見せてどぎまぎしていました。

 心子と抱き合い、そして、その日、僕たちは初めて結ばれました。

「……やっと、ここまで来られたね」

「ひとつになった……」

 そう言って心子は胸を一杯にさせたのでした。
 
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