○ 被災から ちょうど四十九日の日に、 娘 (小学生) の遺体が 見つかりました。
顔はもう分かりませんが、 左足にミサンガをしていたのが 証になります。
遺体と対面した時、 両親の口から出てきた言葉は 「悲しい」 ではなく、
「よかった」 「嬉しい」 でした。
母親は涙を流しながらも、 娘が帰って来られて良かった という気持ちなのです。
父親には笑顔さえ見えました。
○ 洗いたてのセーターや肌着が、 春の光にたなびいています。
けれども、 持ち主が袖に腕を通すことは 二度とありません。
宮城県警が、 身元不明の遺体が 身に付けていた衣服を 洗濯し続けています。
名前や服の模様など、 手がかりを見つけるためです。
服の写真を公開し、 情報提供を呼びかけています。
○ 避難所で、 今まで聞かれなかった声が 出てきています。
「他の人が取った残り物しか、 物資が届かない」
「よその地区の人が 食べ物を取りに来るのは おかしい」
当初は出なかった不満が、 ささいなことをきっかけに 噴き出します。
お互いが助け合う 避難生活が長期化し、
気が張っている状態が 限界を超えるのです。
これから より心配なのは、
仮設に入る人と 避難所に残る人に 別れる時期だといいます。
高齢者の見守りや、 精神的なケアに 本腰を入れなければ、
被災者の心が ばらばらになってしまいます。
○ 南三陸町で、 高台に土地を持つ 住民から、
無償の土地提供の申し出が 相次いでいます。
高台の公有地が少なく、 仮設住宅の用地確保が 難航しているためです。
申し出は約30件。
支え合う気持ちが 住民を動かしているのです。
○ 避難所の高齢者に、 「生活不活発病 (廃用性症候群)」 が増えています。
体を動かさないために、 全身の機能が 低下する症状です。
自宅では 伝い歩きができた高齢者が、
避難所では家具や手すりがなく 歩かなくなります。
筋肉が弱るだけでなく、 心肺機能が衰え、 精神面でも うつ状態になったりします。
地震で何もかも失い、 家の片づけや 想い出の品を取りに行こうという 動機も、
持てないでいる人が多いといいます。
本人はもちろん 家族のためにも、 要介護にならないよう、
活動的にする工夫が必要です。
〔 朝日新聞, 日本テレビ 「ニュースZERO」 より 〕