リーダーシップは夫婦関係に学べ
高橋俊介さんに聞く、今後求められるリーダーの姿(前編)
「前編」に続いて「前編」となっているんですが(苦笑)。
人によって「ドライブ」やパーソナリティは異なるが、それを理解した上で互いに刷り合わせる努力をしなければいけない、と高橋さんは言う。「会社の上司や部下、同じチームの人に対して『なぜ私は、この人が嫌いなんだろう』と思うことがあるとします。その時、その人と自分の『ドライブ』やパーソナリティが違うからだ、と気づかないといけない」。自分の強い部分は、知って生かせばいい。相手の強い部分は尊重すればいい。相手が自分と同じように行動しなくても、「チームで一緒にやっていけばいいじゃないか」と思えるようになることが「人間力」の成熟につながり、それこそがリーダーに必要なものなのだ、と高橋さんは言う。
人はそれぞれ違うことを前提にチームをつくる、これ基本ですね。
「つまり夫婦の性格が同じでも違っても、どっちにしてもめる。ということは、お互いに同じ部分や違う部分を理解しあいながら、一歩引いてみたり協力したりして、付き合っていかないといけない。それが『人間力』なのです」と高橋さんは言う。他人同士が一緒に住み、互いを理解しあうこと、これがリーダーとしての「人間力」を育てる。「だから、(事実婚であっても)結婚は絶対した方がいいですよ」と高橋さんは強調する。「これからは、ワークとライフの両方がなければいけない」と高橋さんはいう。
まぁ結婚しなくても「人間力」を磨く方法はあるような気もしますけど(苦笑)。
社会に出て5~6年、20代のうちは試行錯誤しながら幅広く、社会人として基礎的な人間力をつける。30代は、これはと思う分野を徹底的に伸ばし、自分のキャリアを作る時代。40代は、過去に投資したものを目に見える成果に変えていく。50代はガツガツやらず一歩引いて、部下を育てるなど自分のためだけでなく長期的、社会的に働いていくといい、と高橋さんは言う。
「自分は何によって『ドライブ』されているかを、しっかり見つめ直すことです。ただ、何か大きいことをやりたいと思った時には、ある程度のリーダーとしてのポジションにいなくてはできない。出世するのが目的ではないにしても、誰かに影響を与えるような仕事をしたい時には、やはりリーダーとしての道を行かざるを得ないことを覚悟してほしいですね」
「出世するのが目的ではないにしても、誰かに影響を与えるような仕事をしたい時には、やはりリーダーとしての道を行かざるを得ない」……その通りだと思います。
自分自身、35歳でリーダーとしての経験もほとんどなしにマネジャーになった時は、いろいろな意味で未熟だったために、結果も出せず、ストレスばかりかかって潰れそうになりました。ただ、その時の経験が無駄になったかといえばそうではなく、マネジャーを外れて3年間は自分を振り返り、そして模範になるようなマネジャーを見て、自分なりに意識的に学んでいました。
再びマネジャーの地位がオファーされた時に、今の上司である人事部長は言いました。
「白牡丹(仮名)さん、ここは自分がやるしかないんじゃない?」
「う~ん、やっぱり、そうなりますかねぇ……」
「変なマネジャーが上に来たらやりにくくなるだけだしね」
「じゃ、まぁ、やってみます」
……という感じの、ちょっと気の抜けたような遣り取りで決まりました。
前にマネジャーとなった時は、経験のなさに対して気負いが高かった分だけ、あれもできない、これもできていないと自分を追い込んでいくところが多かったという反省に立って、自然体で仕事をするというモットーになっていましたので。
しかし、個々のプロジェクトの担当者というレベル以上のことをやりたいと思ったら、ラインのマネジャーになるしかなかったので、引き受けたのでした。30代後半の失敗や振り返りの経験があったからこそ、ラインマネジャーとして自分が何をして何を部下に任せるかという判断力もついてきていましたし、クライアント部門から話を聞き出してニーズにもとづいてサービスを提供するという仕事のスタイルもできるようになっていました。
リーダーシップというのは学んで身につけられるものだと思います。いくつかの性格的な資質は問われるものがあると思いますが(自己愛傾向が強すぎるとか、他人の気持ちや感情に興味がないとか、そういう資質が組み合わされるとやはり問題を起こしますね……)その資質も自分で気づいて直せるだけの「メタ認知」力があれば改善できる、すなわち学んで身につけることができます。高橋さんの言う「人間力」と同じようでいて少し違うことを言っていると思いますが……。