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なんじゃもんじゃ物語 2-13 ヤマタイ国発電所 倉庫への道

2006-06-10 18:09:05 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語 2-13 ヤマタイ国発電所 倉庫への道



なんじゃもんじゃ物語143

 海賊たちは、原子力発電所の廊下を急いで歩いていました。
らめちゃんが、担架を担いでいる たまちゃんとチンギスチンに言いました。

「 こらっ!
 前が見えへんやないか。
 廊下の進行方向に向かって、40度の角度で進め!」
「 ?」
「 あのな、担架を担いでいる前の奴の体で、前が見えへんやろ。
 斜めや、斜め!」

担架は、斜めに進み始めました。
お頭ブラックが言いました。

「 おいおい、らめちゃん、名前で呼べよ。
 担架の前は、たまちゃん、後ろは、チンギスチンだよ。
 わしはブラック、わしの後ろは、小僧だ。」

なんじゃ殿様が、お頭ブラックに言いました。

「 僕だけ小僧じゃ、名前が無いよ。」
「 うるさい、一人前になったら、名前を呼んでやる。
 おい、らめちゃん、分かったか。」
「 ええと、芸者がブラック、空手家がたまちゃん、殿様が小僧だな。
 農民のエッチソンは分かっている。
 それじゃ、たまちゃん。
 次の突き当りを、左!」

海賊たちは、どんどん歩いていきました。






なんじゃもんじゃ物語144

なんじゃ殿様が、お頭ブラックの後ろから らめちゃんに聞きました。

「 まだぁ?」
「 まだやっ!
 おっ、たまちゃん、そこ、右、右。
 建物の端っこにあるから、分かりにくいんや。」

 通路を歩きながら、お頭ブラックは船に残したノゾーキに携帯連絡を入れました。
携帯は、電源が切られていて掛かりませんでした。
お頭ブラックが携帯を見ながら呟きました。

「 ノゾーキに連絡が取れれば、館内の様子が分かるのだが。
 時間もかなり経ったし、倒れている職員のことも気になってきた。
 携帯が掛からないが、ノゾーキはいったい何をしているんだろう?」

らめちゃんが、お頭ブラックの顔をじ~っと見ました。
 お頭ブラックが、らめちゃんに言いました。

「 お前、わしに惚れているな。」
「 何、アホなこと言うとんにゃ。
 ノゾーキは、カップラーメン食べながら、精霊悪霊の戦いを観戦中やで。」
「 そうか、先程、携帯を掛けた時に、呼び出しだけで電話口に出てこなかったの
 は、お湯を沸かしに行っていたんだな。
 お前、わしの顔を見て、それが見えたのか?」
「 ああ、でも、倉庫を出る頃には掛かってくるわ。」
「 そうか、ま、案内人は此処にいるからいいか。
 携帯の電源を切られているから、どうしようもない。
 精霊悪霊の戦いに参加しているベンケーは、どうなってる?」
「 逃走する時、合流するから気にしなくてええわ。」





なんじゃもんじゃ物語145

 担架を担いでいたエッチソンが、らめちゃんに言いました。

「 お前、便利なやっちゃなぁ~。」
「 そうやろ、便利やろ。
 ・・・・・・・・・。
 もう直ぐ、声がするで。」
「 ?」

その時、後ろで なんじゃ殿様の声がしました。

「 うわっ!
 いでででで・・・・・・。」

らめちゃんが言いました。

「 ほら、滑りよった。」

担架から流れ出たぬるぬる粘液が通路を濡らし、なんじゃ殿様が足を滑らしてひっくり返っていました。
 お頭ブラックが、なんじゃ殿様を見て らめちゃんに言いました。

「 滑りよったって、わしが今、見ているこれも、さっき頭に浮かんだのか?」
「 ま、そう言うこっちゃがな。」

なんじゃ殿様が、起き上がりながら らめちゃんに言いました。

「 いてぇ~なぁ。
 僕が滑るのが分かっていたのなら、滑る前に言ってくれよ。」
「 あほかいな。
 そんなん、言うてしもたら、おもろないがな。
 ははははは。」
「 ひどいなぁ。」

らめちゃんが、担架を持っている たまちゃんの横から身を乗り出して前方を見ました。

「 そろそろ、到着かな。」

真っ直ぐな通路の先に扉が見えます。

「 お、あれや。」

 海賊たちは、通路の突き当りを見ました。
通路の突き当りには、非常用の明かりに照らされた大きな両開きの頑丈そうな鉄の扉と倉庫の表示が見えます。
お頭ブラックが言いました。

「 ようやく、到着だ。
 ウランは、もう直ぐ手に入る。」





なんじゃもんじゃ物語146

 海賊たちは、急いで扉の前まで進みました。
両開きの扉を見ると、ハの字型の取っ手が付いています。
お頭ブラックが、先頭の たまちゃんに言いました。

「 鍵が掛かってるんじゃないか?
 ちょっと引っ張ってみろ。」
「 お頭、お頭、両手が担架でふさがってます。」
「 そりゃ、そうだ。
 おい、小僧、前にまわって扉を引っ張れ。」

最後尾にいた なんじゃ殿様は、担架の前にまわって扉の取っ手を引っ張りました。

「 あれっ、開かないなぁ~。」

なんじゃ殿様は、もう一度、力を込めて取っ手を引っ張りました。
しかし、扉はビクとも動きません。

「 どうしよう。
 開かないよ・・。」

なんじゃ殿様は困った顔をして、お頭ブラックの方を振り返りました。
お頭ブラックは言いました。

「 きっと、何か細工があるに違いない。
 おい、らめちゃん、何か知らないか?」
「 う~ん、おかしいなぁ。
 特に、何もないと思うんやけど・・。」
「 わしの顔を見たとき、分からんかったのか?」

らめちゃんは、天井を見ながら言いました。

「 う~ん、印象に残ったことは無かったと思うで・・。」

エッチソンが、らめちゃんに言いました。

「 お前、未来が見えるって言うたんとちゃうんかいな。」
「 さっきも言うたやろ。
 完全には見えへんにゃ。
 その日のワイの調子にもよるって、言うたやろがな。」
「 便利な奴は、取り止め!
 不便なやっちゃなぁ~。」

らめちゃんは、口を尖らせて不服そうに言いました。

「 そんなもん、全部、未来が見えたら、むちゃむちゃ凄いやんか。
 それでも、三分の二ぐらいは当たるんやでぇ。」
「 しゃ~ないなぁ~。」




なんじゃもんじゃ物語147

 エッチソンは、らめちゃんを諦めて、扉の横の壁を見ました。

「 おやっ・・?」

壁に縦横20センチぐらいの四角い箱が付いています。
エッチソンが、お頭ブラックに言いました。

「 お頭、お頭、右の壁に箱がありまっせ。」
「 ほんとだ、箱があるぞ。
 そうか、これだな。」
「 暗証番号とか、いるんとちゃいまっか?」
「 数字のボタンは無いぞ。
 でも、マイクみたいな物が箱の横に付いている。」
「 音声で反応するんとちゃいますやろか。」
「 なるほど、じゃ、喋ってみよう。」

お頭ブラックが、マイクを外して喋って見ました。

「 あ~、あ~、本日は晴天なり。
 本日は、晴天なり。
 あ~、あ~、聞こえますか。
 あ~、あ~、聞こえますか。
 ・・・・・・・・・・・・。
 反応しないぞ。」

なんじゃ殿様が、お頭ブラックに言いました。

「 ねえ、ねえ、違うこと言ってみてよ。」
「 そうだな・・・・・・。
 よし!
 それじゃ、わしの最も得意な分野で勝負するぞ。」

子分たちは、嫌な予感がしました。




なんじゃもんじゃ物語148

 お頭ブラックの顔の前には、非常灯に照らされたマイクが不気味に光っていました。
お頭ブラックは満面の笑みを浮かべて、マイクをしっかりと掴み直しました。

「 わん、つう、の~。
 ちゃんちゃか ちゃんちゃん、ちゃちゃんか ちゃんちゃん。」

子分たちは、お頭ブラックに聞こえないように、ささやき合いました。

「 うわっ、えらいこっちゃ。
 始まってしもたがな・・・。」
「 どうするあるか。」
「 小僧がいらんことを言うからだ。」
「 でも~、扉が開かなかったから・・。」
「 どうしよう・・。」

らめちゃんが、不思議そうな顔をして、エッチソンに聞きました。

「 どうしたんや。
 何が、始まるんや?」
「 また、ヤマタイ国の文化が始まりますがな・・・。」

お頭ブラックは、ニコニコしながら歌を歌い始めました。

「 せえのぉ~、うん。
 あかいひぃ~、あおいひぃ~、道頓堀のぉ~♪
 川面にあつまる恋の灯にぃ~♪」

お頭ブラックは、片手を広げ、体を揺すりながら軽いステップを踏んで絶好調です。
らめちゃんが、チンギスチンにいいました。

「 うわ~、これは効くなぁ~。
 お前ら、毎日、これ、聞かされてるんか?」
「 毎日では、ないあるよ。
 めでたい日だけあるよ。」
「 う~ん・・・。」

その時、突然、壁から声がしました。

「 オマエ、ウルサイ。」





なんじゃもんじゃ物語149

 お頭ブラックが歌うのを一旦ストップしました。

「 ん?」

そして、子分たちを見回して言いました。

「 チンギスチン、何か言ったか?」

子分たちは、それぞれに言いました。

「 何も言ってないあるよ。
 ねえ、たまちゃん。」
「 うん、チンギスチンの声じゃないよ。
 小僧が怪しいんじゃないか。」
「 違うよ、僕、何も言ってないよ。
 エッチソンでしょう?」
「 ワイとちゃいますがな。
 らめちゃん、あんたの声でっしゃろ。」
「 何言うてんねん。
 ワイやない。」

お頭ブラックは言いました。

「 おかしいいなぁ~。
 “おまえ、うまい”って聞こえたぞ。
 歌っていた声に被さって聞き取りにくかったが・・。
  まあ、いい。
 みんなの心の声が聞こえたのだ。
 今日は、わしの誕生日だ。
 特別に、もう一丁いくぞ。
 今まで隠していた、取って置きがあるのだ、むふふふふ!
 わん、つう、の~。
 ちゃんちゃららら、ちゃんちゃららら、ちゃんちゃららら、らん♪」

子分たちは、再び、ささやき合いました。

「 うわあ~、また始まった。」
「 まいったなあ~。」
「 ウルサイって聞こえたあるよ。」
「 ウマイとえらい違いでんがな。」
「 自分に都合のいいように、うまく聞こえる耳。」
「 ウルサイと言ったのは誰あるか?」
「 分かりまへんがな。」

お頭ブラックは、再び、体を揺すりながら軽いステップを踏んで歌いだしました。

「 はぁ~れた空ぁ~、 そ~よぐ風ぇ~♪
 みなとぉ~、出船のぉ~、 ドラの音、たのしぃ~♪」

子分たちは、ニコニコ歌っているお頭ブラックを見ながら言いました。

「 おっ、これは新しいレパートリーでんがな。」
「 そうあるね。」
「 ひそかに練習していたな。」
「 僕、初めて聞くよ。」

らめちゃんが、お頭ブラックを下から見上げて言いました。

「 何か、気持ち悪なって来たで・・・・。 
 お腹、ぴ~ぴ~になりそうや・・・・。
 そうか、分かった。
 この場面が頭に浮かばへんかったのは、あまりに強烈過ぎて、ワイの深層心理が
 拒否したからや。
 これは、体に悪いがな。
 お頭ブラック、恐ろしい奴ちゃなぁ~。」


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