大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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なんじゃもんじゃ物語206

2007-08-28 18:44:18 | _2-19 港への道
「 はいはい、分かりました。
 それは、私が御幼少の頃の話です。
 風邪をこじらせて、入院したことがあったんですよ。
  病室は子供の六人部屋で、扉から窓に向かって、左右に三つずつベッドが
 並んでいました。
 その部屋に入院している子供の病気の種類は色々で、私を含めて5人が入院し
 ていました。
 私のベッドは、廊下に一番近いところで反対側は空きベッドです。
  夜、寝ていると、通路の方からカラカラカラって音が聞こえて眼が開きました。
 夜中の二時ごろですよ。
 何かなァ~って、私、ベッドから降りて、病室の扉まで行きました。
 そして、扉をそ~っと少しだけ開いて通路を覗いたんです。
  通路は、消灯時間が過ぎていますから、非常灯が点いているだけで薄暗かった
 んです。
 私、少し開いたドアの隙間から、通路の向こうの方を覗き込みました。
 すると、医療器具を載せたワゴンを看護婦さんがゆっくり押して行く後ろ姿が見
 えたんですよ。
 なんだ、看護婦さんかと思って、扉を閉めようとしたんです。
 でも、その時、ワゴンを押した看護婦さんが急に立ち止まったんです。
 そして、首を回してゆっくり振り返り始めました。
  私、何だか急に怖くなって、顔を見ちゃダメだと思いました。
 それで、首を引っ込め、扉を急いで閉めて、大急ぎでベッドに戻り布団を被りま
 した。
 このままジッとしていれば、看護婦さんはワゴンを押して向こうに行ってしまう
 と思ったのです。
  私、耳を澄ましながら、音の行方を聞いていました。
 でも、カラカラカラって音は行ってしまうどころか、通路をゆっくり戻って来る
 のです。
 うわ~っ、これはマズイなァ~って思いました。
 この部屋を通り過ぎて欲しいなァ~って思いながら聞いていたんです。
 でも、ワゴンを押す音は、私の病室の前で止まってしまったんですよ。」



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