俺は諦めて窓の正面を見る。
川の向こうの太い道には、多くの自動車が元気にせわしなく走っている。
“ あれと比べりゃ、駐車場の自動車は、しばしの休憩ってとこか・・・。
そうだよな、この敷地の外は普通の生活があるんだよな。
俺もどっちかと言うと休憩か・・・。
それに・・・、ずっと休憩ってイヤだな。
長いの困るよな。”
俺の頭の中の引出しから、狸小路やお揚げ婆や女の子や訳の分からん黒いヤツが顔を出す。
引出しがパタンパタンと開いたり閉まったりしながら、順にこいつ等の顔がヒョコヒョコ出たり入ったりするのだ。
“ ううう、気が滅入る。
取り敢えず、病室に戻ろう。”
俺は窓から部屋へと車椅子の向きを変えた。
のどかな風景と裏腹に、俺の心は重く沈んでいた。
俺は談話室から病室に戻った。
病室に一歩入って、俺は立ち止まった。
“ あれっ!?
面会者がいる・・・。”
驚いたことに、病室には山本爺の面会人が二人もいたのだ。
“ 誰かな?
山本爺の子供にしては若すぎるような・・・。”
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