日々の恐怖 1月7日 音(1)
俺の隣の家には、奥さんに先立たれた一人暮らしの爺さんが住んでいる。
何時からなのかは忘れたが、毎晩10時を少し過ぎたくらいに、
” カチャッ!”
とその隣の家の玄関の鍵の開く音と、
” ガラガラガラガラ・・・。”
と扉を開く音が聞こえる。
隣の家は俺の家と同じタイプの扉だから、やたらと耳に入る。
それで、すぐには扉が閉まる音は聞こえずに、しばらく経ってから閉まる音が聞こえる。
普段は音が聞こえても、散歩に出かけてるのかなぐらいにしか思わなかったが、よく思い出してみると、扉の開く音と閉まる音が聞こえた後、歩く音が聞こえない。
俺の家は、少し離れた所から歩いてくる音が聞こえるくらい壁が薄いので、扉の音以外が聞こえてもおかしくない筈だ。
それで、少し興味を持った俺は10時少し前から、爺さんが何をしてるのか覗き見をしてみる事にした。
爺さんは、奥さんの遺した玄関前のガーデニングを大切にしていて、俺の家側に花棚がそこそこ高く積まれている。
そこなら暗いし角度的に玄関から見える事は無いだろうと思った俺は、その花棚の奥に隠れた。
” まあ、何も無いにしろ疑問が解決してスッキリ眠れるからいいか・・・。”
と、その時は考えていた。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ