大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 12月20日 新入り(2) 

2022-12-20 13:45:05 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 12月20日 新入り(2) 






 そんな新入りだったが、半年ほどで塾を去ることになった。
なんでも夫の転勤で引っ越すのだという。
おおっぴらには言わないが、友人を含めた全職員が、ほっと胸をなでおろした。

「 短い間でしたがお世話になりました。」

新入りはそう言って、職員一人ひとりに別れの品をくれた。
それは定番のハンカチだったが、包装紙の中には小さなメッセージカードも入っていた。
 仕事終わりに、同僚と二人で何気なくそのメッセージカードを開こうとした時だった。

「 ひっ!」

同僚が小さな悲鳴をあげ、メッセージカードを取り落とした。
友人は自分の足元に落ちたカードを拾おうとして、目を疑った。

『 彼とのデート、〇〇モールはやめたほうがいいですよ。
保護者もたくさん来てるんだから。』

そう、カードには書かれていた。
 ありがちな話だが、同僚は生徒の保護者と浮気をしていた。
友人はそのことを本人から相談されて知っていたが、他は誰も浮気のことは知らないはずだった。
秘密のデートを、新入りはこっそりどこかで見かけていたのだろうか。
 友人は恐る恐る、自分の分のメッセージカードを見た。
そして、先ほどの同僚と同じような悲鳴をあげたという。

「 カードには、職場ではもちろん、家族にも話したことのない秘密について、アドバイスめいたことが書いてあったの。
ゾッとしたわ。」

友人はその時のことを思い出し、恐怖と嫌悪感からか眉をひそめた。

「 なんでその新入りさんは、秘密を知ってたのかな?」
「 知らないわよ。
でも、他の職員のカードにも、同じようなことが書かれてたみたい。
そのあとは、もう大変。
みんな疑心暗鬼でギスギスして、結局、半年後には職員が総入れ替えになってたわ。」

それもそうだろう。
私は頷いた。

「 ところで、書かれてた秘密って?」
「 言うわけないでしょ。」

私の問いかけを一蹴した後、

「 でも・・・・。」

と友人は続けた。

「 あの時書かれてたアドバイス、あれだけは的確だったわ。
後になって、正直助かった。
仕事できなかったくせに、そういうところが余計気持ち悪いんだけどね。」

友人は身震いをしてそう言った。











童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------